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2023.06.23

『「人を生かす経営」の総合実践で企業と地域の未来を切り拓こう』第51回定時総会 基調講演

報告者:中山 英敬 氏(㈱ヒューマンライフ 代表取締役、中同協幹事長、福岡同友会相談役)

5月30日にリーガロイヤルホテル広島にて第51回定時総会&創立50周年決起大会を開催しました。当日は411名の参加があり、第37回定時総会以来の参加者数でした。基調講演では、中同協の中山幹事長に「企業づくり、地域づくり、同友会づくりの観点から、同友会運動の成果と課題」について講演いただきました。講演の様子をご紹介します。

■難局を乗り越える術

まず、企業づくりの運動の成果ですが、2008年のリーマンショックは未曾有の大不況と言われ、企業への影響はとても大きかったです。しかし、経営指針を見直し全社的に実践している会員企業の立ち直りが早かったという結果が明確に見えました。
また、2011年の東日本大震災は、未曾有の大震災と言われ、未だ被災中のところもあります。発生後の岩手同友会は事務局を中心に安否確認や、「一社もつぶさない」「雇用を守る」とメールや電話やファックスで伝えました。この宣言は、もう死ぬしかないと思っていた会員企業に、もう一度頑張る勇気を与えました。社員と共に経営指針を復興計画と位置づけ、経営指針の確認と見直しを全社的に実践した企業の営業の再開度合いや売り上げの回復度合いが早かったという結果が見えました。そして、大企業がシャッターを降ろしている中、地域の商店は地域の人が生きるために必要なものを並べ、営業を再開しました。ここから中小企業の地域における位置づけが明確に示されました。それに併せ、経営指針の実践運動に私たちは確信を持ちました。
このような難局においても社員と向き合い乗り越えてきた教訓が7つあります。それは①経営姿勢の確立②財務対策と資金手当て③経営指針の全社的実践④社員教育と全社一丸⑤新たな仕事づくり⑥情報共有と見える化⑦同友会活動への参加とネットワークづくりです。アフターコロナに向けて改めて確認してください。そのためのツールとして「経営指針の成文化と実践の手引き」「企業変革支援プログラム」「働く環境づくりの手引き」がありますので活用してください。

■企業における経営指針の実践とは

企業の課題は、果たして経営指針の成文化と実践は成果に繋がっているのかということです。実例はありますが、全体的に見て成果に繋がっているのか見えてこないと思います。中同協では「企業における経営指針の実践」を定義しています。実践とは「指針で掲げた企業像に近づくための成果の伴う具体的な行動」とあります。例会や企業変革プログラムなどを使い、会員企業の実践の進捗状況が確認できる仕組みがあるのか、理事を中心に検証していただきたいと思います。また、総合実践とは何か。10年ビジョンがあるか、経営指針に労働環境の整備や、採用や社員教育が位置づけされているか、確認していただきたいです。

■同友会運動が国や地域に与えた影響

地域づくりの観点から見た経営環境改善運動の成果に、金融アセスメント法制定運動があります。バブル崩壊後、金融不安に一気に陥りました。貸し渋りや貸し剥がしが横行し、被害を受けた会員企業も少なくありません。金融アセスメント法は地域の中小企業に必要な資金が円滑に供給されるように金融機関を評価する法律です。2000年に法制定運動を提起し、翌年には全国署名運動へと広がりました。わずか3年で100万筆を超える署名が集まりました。また、1000を超える自治体の意見書が寄せられました。結果、金融アセスメント法は制定されませんでしたが、国会の議論の土台になりました。そして、2003年には金融庁のリレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプランが発表されました。当時、中小企業はまだまだ金融機関と向き合って話しができませんでしたが、この後にアクションプランが発表されたことにより、向き合って話すことができる時代になりました。
この経験は、私たちの運動は正当な声を連帯してあげれば国に届くという確信を持つことができました。
私たちの経営における問題は金融政策の問題だけではありません。日本経済の原動力は中小企業の発展にあり、そのためには金融政策のみならず国の経済政策そのものが中小企業を軸に大転換する必要に迫られています。そこで、2003年に中小企業憲章制定運動を提起し、2010年に閣議決定されました。ここから金融行政は2011年に第三者保証を原則求めない監督指針、2013年に経営者保証に関するガイドライン、2022年に経営者保証改革プログラムを策定するなど、まさに夢のような時代となりました。
さらに、憲章の理念を各地域で実現するための中小企業振興基本条例の制定運動も並行して行われました。現在47都道府県669市区町村に制定され、全自治体の41%まで広がっています。
私たちの運動は継続しながら発展し国を動かし、国を変え、私たちの地域を元気にしている。という誇りを持って運動に参加・賛同していただきたいです。

■同友会の存在意義とは

コロナ禍に入り2020年は全国で1874名の会員が減少しました。しかし、2021年にはコロナ禍真っ只中にもかかわらず、590名純増でした。そして、2022年も986名純増でした。コロナ禍に入り減った1874という数も、もう少しで回復するところまできました。
他のほとんどの会が減少している中、なぜ同友会だけ元気が良いのでしょうか。それを3点に整理しました。1つ目は、コロナ禍において役に立つ情報が適宜送られてくる情報提供力です。特に施策状況や他県での参考になる情報などが随時発信されていました。2つ目は、相談したいときに相談ができる安心感です。近くには先輩会員がおり、事務局に言えばすぐに訪問してもらえる環境があります。3つ目は活動を止めなかったという事です。2ヵ月程度麻痺しましたが、情報機器を使用して各自新しい活動の在り方を模索していました。これまで参加していなかった人も、リモートならと参加が増え、退会率が記録を初めて以降、一番抑えられました。
難局に立って初めて本質が見え、人間尊重の経営の真の学びが今求められていると改めて感じました。

■これからの企業の在り方と広島同友会に期待する事

企業づくり・地域づくり・同友会づくりの3本の柱がありますが、今の時代は地域の課題を自社の課題に位置付けて取り組もうとしています。地域は社員の生活の場であり、中小企業が事業を営む場であります。地域の疲弊は私達中小企業の課題です。その地域の課題をしっかり整理して、その課題解決の方策に我が社の商品・サービスは通用しないか。あるいは、新規事業でこの課題に挑戦しようという企業を地域に増やすことで地域は元気になります。
広島同友会には是非3000名を達成してほしいと思います。今年は、大きな時代の変わり目で50年という節目でもあります。そんなときこそ原点回帰してください。同友会がどのような背景で生まれ、どのような苦しみの中で労使見解ができたのか、歴史と理念を学び直してください。そうしなければ、組織が大きくなっても弱まるばかりです。ぶれてはいけない軸はしっかりと根を張ってください。

(記:事務局 中野)

㈱ヒューマンライフ <会社概要>
【創業】 1998年1月 【資本金】 1000万円
【事業内容】 コールセンター業務の受託
【 年商 】4億1000万
【社員数】106名(うち、契約社員 25名/
  パート 45名)[2023年4月]