「時代の流れを考えて経営していますか」福山支部A地区会例会報告要旨
報告者:(有)アサヒフィルタサービス 代表取締役 宮﨑 基 氏
わが社はフィルタの加工販売を行っています。ビルや店舗、病院などの空調関係で使われています。この商品は、その先に大事なもの、例えばお客様や患者さん、貴重な美術品などを抱えています。私は、この商品を母親のような暖かいものだと思っています。
私の経営上のシンギュラポイントは、高校の卒業式の日です。父親が事業に失敗し、家産は全て差し押さえられました。その時に思ったのは、自分は事業を行って、冷たくした金融機関を見返したいということ。何があっても会社をつぶしてはいけないということ(広範囲に迷惑をかける)、でした。
38歳で独立し、お客様の勧めですぐに同友会に入会しました。最初は幽霊会員でしたが、たまたま誘われた飲み会で悩みを語ると、丁寧にアドバイスをもらえ、それがきっかけで例会に参加するようになりました。
■我社がめざす経営①ゴキブリに学べ
ゴキブリの駆除を仕事にしていたことがあります。薬剤の散布でいったんは駆除できるのですが、やがて増えてきます。耐性のあるものや、薬剤を避けるものがあらわれたりするのです。これは、ゴキブリの、小さな体、そしてボスがいない(巣をつくらない、集団行動をしない)、という特性が生んだものだと思っています。小さいと体質をすぐに変えることができます。つまり変化に強い、対応力が高い、ということなのです。
■我社がめざす経営②年輪を重ねるように
福山支部の活動で、伊那食品工業を見学に行き、塚越会長にお話を伺いました。その時に、企業が永続すること、木が年輪を重ねるように確実に成長していくことをめざす「年輪経営」を学びました。私もそのように、少しずつ会社を大きくし続けたいと、取り組みを進めてきました。富士山のてっぺんに、私の代では到達できないかもしれませんが、次世代、次々世代が達成できるように、しっかりしたものを残すことが、責務だと考えています。
■取り組んだのは社員が幸福を感じる会社づくり
それまでの自分の体験から、人を大事にする経営を指向して「働きやすい職場づくり」をすすめてきました。働き方改革実践企業認定を受け、障害者雇用、定年制廃止、「ノー残業」による副業の許可、BCP(事業継続力強化計画)の認定を受けました。こうしたことは、みな、同友会がきっかけでした。今、盛んに言われているSDGsの取り組みは、同友会の「人間尊重の経営」の実践にほかなりません。
コロナ禍に突入した2020年、まずは新商品・新市場の開拓に取り組みました。この間、DX化やホームページのリニューアル、社内体制の見直しにも取り組みました。人への投資も欠かせないと思い、リスキリング認定制度も導入しました。後継者問題には、別会社を立ち上げ任せ、経営者としてのトレーニングをしてもらっています。
今、会社にとって最も重要な課題は、社員全員を昇給し可処分所得を増やすことだと思います。
■2030年に向けて
1月の同友会のアンケートの結果でも、今年は厳しい年になりそうだと見て取れます。皆さんから寄せられた声は、何に取り組まなければならないかを明確に示してくれています。
大事なことは、「生きている会社」か「死んでいる会社」かという事です。わかりやすく言うと、社員の平均年齢がどうなっているか。老化が進んでいれば、いずれ死ぬ会社になってしまいます。すぐに手を打つ必要があります。
取り組みには原理原則を大切にし、はやりに流されない事。私は、本当に自分のしている事が社員のためになることなのか、チェックをしながら経営を進めていきたいと考えています。
(記:事務局 橋本)