第1分科会 「シン・時代型企業づくりの第一歩はこれだっ!!!」
報告者:ホクエイ設備工業(株) 取締役総務経理部部長 安國 誠治 氏(広島北支部 経営労働委員会 副委員長)
ホクエイ設備工業(株)は、給排水衛生・空気調和など設備工事の設計施工を行う建築設備会社です。建物の機能性や快適性を保つための工事を安全かつ丁寧に施工しています。「選ばれる会社」を目指して、あらゆる建物の設備を支えています。
■同友会に入ったきっかけ
私は元々、税理士事務所に勤め、その後不動産会社に転職。財務・経理部部長を歴任した後、現在のホクエイ設備工業㈱に総務経理部部長として入社しました。しばらく経ち取締役に就任後、自社の社員さんや決まった相手との取引だけでは視野が狭くなり、適切な判断や回答が出来なくなると危惧するようになりました。そんな時に同友会の事を紹介して頂き、同友会ではいろいろな業種の経営者との考え方や意見、気づきがある学びの場であると感じ入会しました。
■私の原体験
企業変革支援プログラムの話をする前に、私がなぜ、経営には組織的で系統的な計画の実践が必要であると考えるに至った原体験をお話しします。
私は昔、両親が経営していた飲食店で学生バイトとして店のお手伝いをしていました。もちろん当時の私は同友会の存在も知らず、お店の経営理念はありませんでした。ある時、親から近隣の店の調査をしてきてほしいと頼まれました。今振り返ると本当に恥ずかしいのですが、私が行った調査で判明したのは、「他店の方が当店より繁盛している」という事だけでした。なぜ他店は繁盛しているのか?戦略は?ニーズは?強みは?私は何も考えず調査に赴き、何の収穫もなく帰りました。
お店の経営は場当たり的なもので、計画も理念もなく今後どうしていくかの戦略などはありませんでした。後に残念ながら両親が経営していた3店舗の飲食店は廃業してしまいましたが、この時の経験から多くの気づきを得ることができました。
その時、私はやるべき3つの事が出来ていなかったと思います。
一つ目は組織的、系統的、計画的に動けていなかったこと。
二つ目は自社分析ができていなかったこと。
三つ目は、一つ目二つ目が出来ていないために打開策を見いだせず、じり貧であったことです。
経験から得た気づきを活かして、その後税理士事務所や不動産会社で勤務するようになった時は、なるべく現場に赴き、まず自社を知ることを重視するよう心掛け、常に営業会議には参加し、なぜこの商品が売れているのか、今後どのような動きをしていくのか、などの自社分析を行うことを意識するようにしていました。
■まずは自社を知ること
同友会に入会後、企業変革支援プログラムに出会い、その有効性と必要性を感じて早速取り組むことにしました。企業変革支援プログラムのSTEP1では市場・顧客、課題への取り組み、労働環境、等々の自社分析をする中で、自社の強いところ弱いところ、在るもの足りないものが見えてくるようになりました。自社評価は健康診断であり体力測定でもあります。今まで健康だと思っていたところが実は脆弱だったり、駆け上がっているつもりでも実は下降を辿っていたり、企業変革支援プログラムでは自社の様々な課題に気づくことが出来ました。
自社分析はコンサルタントのような専門家じゃないと無理なのでは、という声を聞くことがありますが、むしろ自社分析は自分達でしかできません。自社の事を一番よく知っているのは自分と社員さんだからです。コンサルタントはいきなり企業の方針や、強み・弱みを把握することはできないのです。
私は企業変革支援プログラムSTEP1の自社評価を行い、自社の何が悪くて何が良いのかが一目瞭然となりました。少なくとも何をしていけば良いのか、道が見えて来るようになりました。
■経営指針は必要か
企業変革支援プログラムのSTEP2、経営理念の成文化について。そもそも経営指針は本当に必要なのかという事についてお話をしたいと思います。はじめに、経営指針がなかった場合はどのような事が会社で起きるでしょうか。実際に私が経験したのは、社員さんが経営者の考えとは異なる方向に進んでいる、社員さんに「夢や目標を持て!」と言うがそもそも経営者の夢や目標がわからないので説得力がない、金融機関に将来のビジョンを聞かれた時に上手く答えられない、などいずれも会社にとって深刻な問題となるものばかりでした。これらの問題は経営者がビジョンや方針を明確にしていないことで、経営者と社員さんの間で認識のズレが生じることが原因でした。
経営指針を作成する目的は、経営者の思いや考えが社員さんに正確に伝達し、記憶に残り、理解されやすくするためです。さらには、自分自身が自社を分析し未来のビジョンを描く手助けにもなります。なにより、夢や目標がない経営者に誰が賛同してくれるでしょうか。
10人いれば10通り、それぞれどんな夢や目標でも良いと思います。夢や目標、目指すもの、価値観等々、どんな会社にしたいのか、これらを整理したものが「経営理念」です。これら経営方針と経営理念を明確にして、社員さんに道筋を示すことで全社一丸となって皆が同じ方向を向いて進めるようになると思います。
■実践は一筋縄ではいかない
企業変革支援プログラムにて自社分析、課題の抽出を行い、経営理念を成文化。そして社員さんの声を経営に反映する仕組みづくりや、自社変革を計画的・系統的に取り組む等、全体的に検討し前に進む形が出来たことで、自社診断評価は一度大きく上昇しました。しかし、その後もう一度行った自社診断の評価では、以前の評価より大きく下がります。
経営理念やそれを運用するチームを立ち上げたまでは良かったのですが、道半ばで後回しの状態になり、実際には運用されていない形だけのものになっていました。こうなった原因は企業変革支援プログラムに取り組む意図についての話し合いを社員さんとしっかり話し合いが出来ていなかったためでした。
反省を活かして以降は、まず取り組みの意図を社員さんに賛同してもらい、あくまで社員さん主導の協議を進めてもらうようにしました。まだまだ完全な運用と定着には至っていませんが、毎月進捗状況を確認しながら行うことで、一進一退、確実に前に進んでいる実感があります。
■最後に
企業変革支援プログラムでは繰り返し計画、実践、検証、改善をおこなうことで、自社への理解が深まり、目線が変わり、ヒントが見つかります。計画したものが、たとえ上手くいかなかったとしても、それはプロセスであり成功への道の第一歩です。
また、経営指針については時代や情勢が変化すれば、経営指針も変化させる必要があります。どうすればよいか分からず悩んだ時は、同友会の仲間に相談する、成功の真似をしたうえで自社アレンジをする、1人で考えずに社員さん全員で相談しながら経営指針を創る、などあの手この手を実践していくことが大切です。こうした毎年の試行錯誤により、きっと自社の未来が見えるようになると私は信じています。
【会社概要】
創業:1975年
社員数:48名
事業内容:給排水衛生設備工事・空気調和設備工事他
URL:https://www.hokueisetsubi.jp
【経営理念】
1.優れた技術を安定的に提供し、水と空気に関わるライフラインを担い続ける。
2.協調性を大切にし、付加価値の創造を安定的に生み出す。
3.社員と共に、安定した生活基盤と夢を実現し続ける企業になる。
4.「ものづくり」を通して、地域社会の生活が安定したものになるよう、貢献し続ける。
(文責 事務局 澤井)