経営フォーラム2021 第1分科会「ヤミ金一億からのベストセラー ~人生逃げなきゃ何とかなる~」
報告者:㈱タイ・アンド・ギー 代表取締役 板坂裕治郎 氏 (広島東支部)
■自己紹介
1990年3月4日に一般人が絶対に着ない服だけを扱う洋服屋『タイ・アンド・ギー(広島弁で「かったるい」の意)』を広島市東区牛田本町にて創業しました。今年で31年目の会社です。繁華街から離れたところで営業していましたが、噂になり大繁盛。
事業を拡大し、飲食店(フレンチレストラン、ラーメン屋、バー、キャバクラ)の経営も手掛け、有名芸能人も来店し、飛ぶ鳥を落とす勢いでした。社員・アルバイトも合わせ70名ぐらいの規模になりました。洋服屋は、1995年には坪単価売上で全国八位に選ばれる程でした。
しかし、バブル崩壊で売上が下がり、最終的にはヤミ金にも手を付けるまでになりました。
■ヤミ金に手を付けるまで
地方のバブル崩壊は少し遅れて来ました。売上が下がり社員の給料が払えなくなって来ました。店舗で様々なクレジットカード会社と契約し、自分自身もカードを作っていた事もあり、そのキャッシング枠でお金を借り、支払いに回すようになりました。最終的には様々な消費者金融で借りては返すようになりました。
また、銀行借入もあり、借入枠の半分を返していたので、追加融資もお願いしましたが、繊維業界は先行きが不安な事で断られました。そこで、銀行返済を止める事にしました。2ヶ月も返済しないと支店長が飛んで来ました。代位弁済で保証協会への返済に変更し、もう銀行から2度とお金が借りられないまでになりました。
そんな時、ヤミ金から融資のファックスが来ます。「ブラックのあなたに」って。名前と住所を書けば百万円。「一回やってみるかなぁ」と送ると、送信と同時に電話がかかって来て「オッケーです」と利息先取りで借りました。金利1か月38パーセントでした。
■人生最後を覚悟
消費者金融の利息も増えましたが、利息制限法で片付けました。弁護士には依頼せず、全部、自分でやりました。訴訟を起こすために内容証明なども、見よう見まねで書いて送り、裁判所にも入り浸っていました。
その頃、保証人を友達に頼んでいたので、彼らに迷惑かけられないと思い、破産や倒産ができませんでした。
こんな感じで、そろそろ終わりが近づいたなって思った時に女神が現れました。地元にある飲み屋さんのママです。「あんた、なんか大変な事になってるらしいね、2,000万貸してあげるけぇ、全部払ってきんさい」と。滞納していたところに電話して来月頭には全部返せると返答しました。しかし、間際になって、ママから「貸せなくなった」と。
世の中が白黒になった日でした。人生の最期を覚悟しました。自殺を考えるんです。自殺する勇気があれば、頑張れるとか。そんな冷静な事考えられません。
気づくと、鈴が峰公園の夜景が見える場所にいました。「マジで終わった」。家族の事を考えて、同級生の保険屋に電話しました。「自殺しても保険って出るんか」、「保険は出る」と。死んでも家族にはお金は出る事が分かり、走馬灯のように思い出が巡ります。涙も止まりません。
同級生が何かを察知したんです。「何かあったんか、お前、まさか死のうと思ってないか」、「死ぬなよ。保険料滞納で死んでも一円も出ん」と宣告されたんです。これを聞いて、涙は一瞬で消えました。
■知り合いの自殺で自分のミッションが見えた
2002年、僕の周りで7名の自殺者が出ました。うち、6名が経営者。彼らの自殺理由は全て金。金額は1,000万円未満。葬儀の参列者が10名ぐらい。少ない理由は、自殺だから声をかけられてないのです。
そこで、自分のミッションに出会います。1億近い借金で、まだ自分は生きてるので、本気で「金で自殺する経営者を撲滅する」事にしました。
2008年4月20日に毎日更新のブログがスタート。
繁華街でも有名だった。そんな僕が店も閉めてヤミ金に行って、「内臓とか売っとるんじゃ」という噂をいっぱい聞く。いろんなやつが面白おかしく言う。本当の話をブログに書いて、世の中の人に発信した。借金整理の仕方。「自分でやったらできますよ」って。すると同友会のメンバーがいっぱい相談に来るようなった。
同友会のメンバーってみんなちゃんと稼いでちゃんとしとると思っとるでしょ。意外にみんなキャッシングの雨嵐。皆さん、自分がボロボロになった時にすごく儲かってるピカピカの社長には相談できんのです。人間は自分がこけた時には、自分よりも下にしか相談できんわけです。僕がブログに全部書いたから相談できると思ったんでしょうね。いろんな同友会のメンバーから「実は…」を何回聞いたか。みんな結構な借金だった。崖っぷち経営者を本気で救わないといけんっていう気持ちが更に湧いてきました。
崖っぷちから落ちるんじゃないんかみたいな経営者と一緒に内容証明を書いたり、裁判所に行ったり、レクチャーして、ボランティアで行って、アドバイスをしました。
ある時、言われました。「もう楽にさせて下さいよ、破産倒産させて下さい」って。破産倒産はいつでもできるから弁護士に頼んでも、同じ過ちを繰り返すから、ここでちょっと痛みを覚えていう意味で裁判所に行ったりしたのに全部意味がなかったっていう事で愕然としました。
崖っぷちの人を救ってもそういう風に思われるんだったら、もうちょっと前で、まだ余力のある経営者を救おうと決めました。
また、いろんな相談者がうちの事務所に来て話をするんですけど、スタッフから言われたんです。「社長、いつも最後、同じ事を言ってます」と。
最後は「人生一回しかないんだから、それぐらいの金で死んじゃいけんだろ」って。同じ事を毎回言っているなら、セミナーにしようと2008年6月、ここからセミナー活動を始めました。第1回目は「銀行と決別する」でした。 2021年8月時点で3054名の塾生が勉強しています。なぜ儲からないのかっていう理由がはっきりと分かりました。
現在は、地方の「中小零細弱小企業家の社長の再生」をメインの仕事としています。
■経営理念の大切さ
スタートからゴールまでの長い道のりがビジネスです。
スタートに使命(ミッション)があります。この仕事を、命をかけてでもやりたい理由です。ゴールがビジョン(目的地)です。スタートからゴールまで目指すが、途中、目的を見失う事があります。目的を忘れない乗物(パッション)が経営理念だと思って下さい。経営理念を見て、「そうだった、これをやるんだった」とゴールに向かって駆け上がっていく事です。
経営は「経済と想い」の両輪で動いています。社長自身に「経済」というお金を儲けるタイヤと何で今のビジネスをするかという「使命(ミッション)」の両輪が理想です。
しかし、中小零細弱小家業にビジネス基礎体力がない。4大疾病「怠慢、放漫、自堕落、無知」になり、ポンコツです。毎月支払いに追われ、月末には「金金金」。なぜビジネスを始めたかの想いが無くなっています。「経済」の片輪だけになった車は、同じ場所で回転し、スタートに戻ります。儲からない会社です。
小さくても良いので、「なぜビジネスをしてるか」という「使命」を思い出しましょう。それが経営理念(道徳)です。両輪が付くと経営は前に進みます。
二宮金次郎の言葉を引用します。「道徳なき経済は犯罪である、経済なき道徳は寝言である」。意味は、「道徳なきお金儲けは犯罪になりますよ、思いがなく金儲けに走ると犯罪になる」という意味です。「経済なき道徳は寝言である」とは「金も持ってないのに想いばかり語るな」という意味です。
■自分の過去を浄化すれば最強の武器になる
過去の失敗は、普通はマイナスですが、例えば、ヤミ金に手をつけ、借金をしたアホ社長の気持ちがわかる、どん底を経験した「アホ社長再生プロモーター」ですって言えばマイナスは圧倒的な強みに変わります。
自分の過去を浄化すれば最強の武器になります。人生、成功だけじゃなく、失敗する事もいっぱいあります。自分の失敗した過去を封印し蓋をすると重い十字架を背負って生きていくようになります。
だから自分の過去はさらけ出し、浄化し、最強の武器にして頂きたいと思います。
【会社概要】
社員数:5名
事業内容:中小零細弱小家業専門の経営コンサルタント
https://tai-gee.com/
【経営理念】関わるすべての人の人生が変わる そのきっかけを与え続ける