活動レポート
  • ホーム
  • >活動
  • >「俺んとこ来ないか? ~崖っぷちから人間尊重経営に気づかせてくれた同友会活動~」福山支部9月支部例会
2021.10.30

「俺んとこ来ないか? ~崖っぷちから人間尊重経営に気づかせてくれた同友会活動~」福山支部9月支部例会

報告者/㈱Saaave 代表取締役会長  星山 忠俊 氏 (埼玉同友会青年部長)

 当社は埼玉県所沢市で足場の架設やリフォーム事業等を行っています。私は結婚を機に27歳で足場の仕事に就きました。その後、平成20年に星山商店を創業。次第に人が増え、組織化をしようと㈱星山商店を設立しました。
 平成27年には神奈川から埼玉に拠点を移すと同時に社名も変更、採用に力を入れていきました。応募してきた人たちは、高い技術力のPRとともに高い日給を望みました。私は埼玉で働く社員が増えれば、神奈川から一緒に来てくれた社員がいずれ地元に帰れると思って採用を続けました。しかし既存の社員と現地採用した社員とで給料が逆転してしまい、社内がギクシャクするようになりました。  

■初めて経営の勉強をして

 「人は採用できても会社がよくならない」。私はここで初めて経営の勉強をしてこなかったことに気づきます。そこで、「社長 勉強 埼玉」で検索し、埼玉中小企業家同友会に出会いました。
 平成29年に入会すると、経営指針づくりセミナーに参加しました。すると今まで過去の数字ばかりを気にして、未来の数字を考えていないことに気づきます。自社の10年後を想定すると、売れば売るほど苦しい仕組みになっていることがわかりました。このままでは良くないと思った私は、全国の同友会の学びの場に参加しました。
 その後、利益計画や自社に合った就業規則を作成し、それまで手付かずだった労働環境の整備を始めました。かつての私は、就業規則とは会社が訴えられないためにあるもので、利益に直結しない労働環境の整備に会社のお金は使わないと考えていました。
 しかし、同友会では就業規則は社員が働きやすくするためにあり、労働環境を整えることで利益が生まれるのだと学びました。また当時の社内は建築資材も乱雑に置かれた状態でした。私が新しく入った職人さんに片づけないことを指摘すると、片づけ方がわからないと言うのです。そもそも初めからそういう状態だったので無理もありません。  そこで整理整頓に取り組むと、資材を片づける時間も短縮し、社員も早く帰れるようになりました。これまでの会社を見直し、同友会の学びを実践していくことで、入会から三年で過去最高の経常利益を出すことが出来ました。

■再チャレンジ雇用に挑戦

 コロナウイルス以前、関東の建設業界はオリンピック特需のため深刻な人材不足に悩まされていました。
 そんなある日、知人の経営者が刑務所や少年院の出所者雇用をしていると聞きました。早速、雇用にあたって必要な登録や情報収集を行い、一人の少年を迎え入れました。ところが彼は1カ月で退社してしまいます。話を聞くと少年院にいた頃は何でもできると思っていたが、建設現場の仕事は予想以上に大変だったと言うのです。
 私は経営指針書を作るときに、社会からはみ出てしまった人たちが活躍できる会社にしたいと書きました。どんな過去や経験を持つ人でも、やり直したい、人の役に立ちたいと思っている人が再挑戦できる、そんな夢のある会社にしたいと思ったからです。このため、自社では出所者雇用ではなく、再チャレンジ雇用と言っています。
 再チャレンジ雇用はこの2年間で15名採用し、現在3名の社員が働いています。中には初日や翌日にいなくなった社員もいます。その理由を考えるうちに、住む場所を与え、当面のお金を貸すなど環境を整えるだけではだめだとわかりました。
 加害者だった彼らですが、犯罪に手を染めてしまう前は被害者だったケースを多く見てきました。中にはいじめや育児放棄を受けた人もいます。彼らは人の愛情を求めていて、昼間に相談できる相手や一緒に食事をして笑い合える場所が必要です。私はそんな場所を提供することで、再犯する必要のない世界を築いていきたいと思うのです。
 しかし私一人の思いで出来るわけではありません。一緒に働く社員の理解や協力が不可欠です。社員によっては一緒に働くことに抵抗を示したり、受入れの体制が不十分だと指摘されたりもしました。私は彼らが自社に関わることで人生の良いきっかけになれればと思い、チャレンジ雇用を続けています。
 自社の企業使命は「世の中の働く意欲がある人の為に愛と夢と浪漫をもって、仕事と雇用を創出します」です。よく夢物語だと言われますが、私は足場の仕事がやりたい人だけを採用するのではなく、足場の仕事を通じて自分のやりたいことが実現できるような、会社と働く人の夢が重なる会社をめざしていきたいと考えています。  

■同友会で学び続けたい

 同友会で学んだことを活かし、経営も順調だと思った矢先、コロナの影響で建設業界の動きが止まりました。まず経営指針の見直しを行い、私が自由に動けるようにと、幹部社員を取締役社長にしました。そして足場中心だった事業を拡げていこうと、元請工事の許可を取りました。また全国の同業社や同友会の仲間と一般社団法人全国足場会を立ち上げました。
 現在の自社は、よい会社には到底及ばないかもしれません。それでも仲間と一緒に頑張りたいと思えるようになったのは同友会の学びと仲間がいたからです。同友会の「よい会社・よい経営者・よい経営環境」はこの先もめざし続けていくことです。この先、どんなにいい売上や利益を出しても、ずっと同友会で学び続けたいと思います。