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2021.09.27

「環境変化に応じて変化していくのが経営者の仕事 ~コロナ禍を言い訳にせず前を向こう!~」呉支部例会報告要旨

報告者 ㈱芝岡産業 代表取締役  田中 宗弘 氏(呉支部)

 私どもの会社は、1968年に創業した鉄工所です。私は創業者の次女と結婚し、1992年2月に入社しました。社員数は69名、製造品目ごとに特化した3つの工場を有しています。高品質で低価格を実現すべく、中国にも工場があります。以前は合弁会社でしたが、数年前に合弁は解消し、現在はパートナーとして緊密に連携して仕事をしています。
 事業の大きな柱は、外航商船のデッキ上に搭載される幅広い種類の金属製品を製造しており、製品の約9割が造船関係です。船は運ぶ荷物に応じて特化した形をしています。例えば、自動車専用運搬船、ばら積み船、タンカー等、あらゆる種類の船舶向けに製造しています。お客様は全国の大手・中手造船所で、ほぼ全国をカバーしています。ISO9001を取得していますが、これに基づく厳しい品質管理により、日本の高い品質要求を満足させる製品を提供しています。  

■変化の波が大きい業界

  近年の売上高の推移ですが、ジェットコースターのように上がったり下がったりでした。最も高かったのは2008年、リーマンショックのあった年です。それまでは中国で船の需要が大きく、大量に建造され、最も多い時は国内で480隻を生産していました。以降はガタガタと落ちていきましたが、陸上物を手がけるようにもなったおかげで、再び伸びてきていました。しかし今回のコロナ禍で、昨年は大きく売上が下がりました。ちょうど船のリプレイス(新しく交換する)時期だったのですが、それまでの建造商談はほとんどが凍結されました。
 造船業界は、ほぼ10年単位で好不況の波が押し寄せてくる、極めて価格の変動率が高い業界です。特にリーマンショック以降は、国内の造船所と中国・韓国との厳しい競争環境が続いています。さらに、この影響で大手造船所では競合に敗れて市場からどんどん撤退し、吸収合併や譲渡も進んでいます。  

■業界の変化に対応する

 ところが、今年に入って風向きが大きく変わってきました。凍結していた建造商談が動き始めています。リーマンショック前の大量建造時の船舶のリプレイス時期が到来したこと。大幅なコンテナ市況好転による大型コンテナ船の発注拡大。環境規制への対応。世界的な脱炭素に向けた動きで、LNG船(液化天然ガスを輸送する船)の製造に向けた技術的な挑戦も盛んになっています。
 それについての我が社の対応です。まず船舶の大型化への対応に向け、10トンクレーンを2基増設しました。今後増えていくLNG船のタンクはステンレス製です。ステンレス用の溶接機を増設し、社員に技術研修を行っているところです。また、造船部門だけでなく陸上部門にも本格的に挑戦しようとプラズマ溶断機の設置、塗装ブースの増設という設備投資を行います。これは事業再構築補助金に採択されました。最後は中国リスクへの対応です。新型コロナウイルスの影響で、一時期入荷が滞りました。そうならないよう、日本での供給体制を再構築しているところです。  

■もう一つの事業の柱を

 これまで、弊社では造船不況になるたびに、造るものがないということで陸上部門のいろんな製品を造りました。ところが造船が忙しくなるとそちらに注力してしまう傾向が強かったのです。これを改めようと、創業50周年(2018年)を機に、本社工場の隣に、新工場を建設しました。陸上部門に対応していくためです。現在力を入れているのが「発酵槽」というステンレス製の機械です。農業用の肥料を造るもので、少しずつ引き合いが増えており、主力商品に育てたいと考えています。さらには、ある機械を造っていた会社がなくなり、なんとかうちで造ってもらえないかという要望があり、その機械を見ながら図面を起こして製造したものもあります。試作品として問題がなかったので、年末までに10台造る予定です。
 陸上部門製品も今後の柱に育とうしており、だいぶ明るい出口が見えてきたところです。時代の変化を見据え、それに対応して生き残っていく。それが経営者の仕事だと思っています。