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2021.08.24

福山支部7月支部例会 「わが街を活性化するには、どうすればいいの?」 講師 愛媛大学法文学部 教授  和田寿博 氏 (松山市中小企業振興円卓会議座長)

■条例は自治体の理念  

 松山市では平成二六年四月一日に松山市中小企業振興基本条例が施行され、円卓会議と専門部会での議論が始まりました。条例文には、他の経済団体と並んで中小企業家同友会の名前があります。条例制定に関わった一人として喜んでいたら、愛媛同友会の故・鎌田専務理事が、「条例に同友会の名前が出ることは責任を持つということ。逃げることができなくなった。私たちが頑張らないと、このまちは良くならない」と言われました。条例の意義の一つは、中小企業の経営者が地域振興に責任を持ち、一人ひとりが主人公になる自覚を強めてもらうことなのです。
 皆さんは経営理念や経営指針を作っておられますが、条例は理念や指針をまち全体で共有することです。自治体が中小企業を応援するだけでなく、中小企業に関わるパートがひと・まち・しごとを考えていこうというのが条例です。いわば自治体の理念です。これを推進するのは経営者の皆さんです。しかし、経営者だけで進めていくわけでも、同友会だけで進めていくわけでもありません。条例は地域の「産官学金民」が一緒になって取り組んでいくものです。
 中小企業振興に関する条例は、基本条例型と助成条例型に分類されます。基本条例とは中小企業振興の基本方針や施策の基本方向などを規定し、助成条例とは助成金や融資などが規定されたものです。一九七三年に福山市で制定された条例は、助成条例です。中同協によると助成条例が制定されている自治体でも、基本条例型の制定に向けた動きが進んでいます。  

■みんなを巻き込む!  

 条例を実践し、知恵を出し合うのが円卓会議です。松山市の円卓会議は、同友会や商工会議所などの経済団体、大学、金融機関や社団法人、NPO法人などで構成され、多様な視点で議論しています。同友会の会員も委員になっています。
 円卓会議は年三回で短時間ですが、情報交換や問題発見、まちづくりと中小企業支援を考えるように変わりました。委員が自主的に主催する専門部会では詳しい人、関心がある人たちが問題意識の共有や先進事例の学習、調査活動など行い提案をしています。
 円卓会議の活動の成果の一つが働き方改革です。円卓会議の議論をふまえ、松山市では働き方改革推進会議を呼びかけ、クラウドの活用や「やりがいブラック」からの転換などが進みました。働き方改革は同友会運動でも取り組まれていますが、、残念ながら地域の中小企業すべてが会員ではありません。地域に広めていくには、同友会会員の先進事例を条例実践、円卓会議で行政に提案し、産官学金民が参加し、考え、取り組むことが必要なのです。  

■生きた条例にするために  

 慶応義塾大学の植田浩史教授は、条例制定後が重要であると指摘し、毎年の方針と総括、地域の独自性、地域独自の課題追求などを条例制定の前提条件としています。生きた条例にするためには、①条例が出来て新しいことは起きたか、②振興会議や円卓会議の議論の内容・新しい結びつき、③まちの変化、④持続的な取り組みか、⑤中小企業振興を意識的に取り組む人の増加、⑥成果(数値)は出ているか、を条例制定後にも調査確認していくことが大切なのです。
 いわゆる条例には取り締まりのような内容のために距離を感じることがありますが、私たちは私たちの理想の姿に向けて歩んでいくための条例をめざしています。条例があれば首長や担当職員が交代しても、市民の意思として施策や方針は変わりません。条例は単に中小企業のためにあるのではなく、まち全体のために必要なのです。
 松山市では条例制定までの議論やパートの関係づくりを大切にし、そのことは後に生かされています。福山市で条例制定をめざすにあたり、焦らずに情報交換をたくさんして頂きたいと思います。