「安佐北区大林の間伐材再生から考えるSDGs」安佐北・安佐南地区会合同11月例会講演要旨
講師 大林間伐材再生研究会 事務局長 秦野英子 氏
■間伐材が命を脅かす?
平成26年8月豪雨による広島市の土砂災害。縁あって関わりの増えた大林地区の皆さんの救護に駆けつけた時、私は衝撃を受けました。知り合いの被災した住宅の2階に、丸太が三本突き刺さっていたからです。実はこの丸太、大林地区の山の中に転がっている間伐材。間伐材が雨で川に流れ込み、川が詰まってしまう。溢れたら土砂と一緒に流れ出る。それが住宅や畑などに被害を与えたのです。
そもそも間伐材とは、森林の成長過程で密集化する立木を間引く間伐の過程で発生する木材のことです。持ち出して置いておくだけでは人件費にもならず、ごみとして処分するにも費用がかかり、放置しておくしかありません。背景には、輸入木材が増えたことによる国内木材の需要の減少です。さらに、職員の高齢化によって山の手入れが行き届かず、六年経った今でも問題は解決されないままなのです。
もともと、私自身は環境カウンセラーとして、地球温暖化防止やに二酸化炭素の削減などの啓発や脱温暖化センターひろしまの手伝いをしていました。しかし、大林の間伐材問題に直面した時、これは地球温暖化防止以前の問題であり、まず人命にかかわることだと気づいたのです。
■困りごとを語り合う
それを何とかしようと立ち上げたのが、私が事務局長を務めている「大林間伐材再生研究会」です。目的は、大林産の間伐材を資源として活かし、大林地区の再興に寄与すること。主な活動内容としては、➀間伐材の活用法の研究、➁間伐材商品の企画開発、➂里山保全活動、➃地域活性化及び健康づくりに資する行事の企画運営です。昨年10月、間伐材を使って、脳活パズル「香具楽(かぐら)」を企画・開発しました。里山保全への関心を持ってもらうために製作したのです。
私たちの会の取り組みが、現在のように展開できたのは、地域の中で困りごとを語り合うことができたからです。その中で、この大林に、間伐材という資源を使いたい財団があり、製造する場所があり、加工技術を持った会社があり、繋いでみたらおもしろいのではないか、ということで始まりました。
■SDGsとの関連を発信
本格的な活動を開始しようとした今年、今回のコロナ禍で、ワークショップもイベントもできない状況となりました。そんな中でも「SDGs」に取り組んでいるということで、マスコミに取り上げて頂けるようになりました。これは追い風だと思っています。
持続可能な開発目標(SDGs)とは、2015年9月の国連サミットで採択された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・一六九のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っています。
例えば、私たちの間伐材から「香具楽」を作る取り組みは、「15.陸の豊かさも守ろう」に該当し、山と繋がっている海は、山が豊かになれば一緒に豊かになる。「14.海の豊かさを守ろう」にも該当します。もっと言えば、間伐材は使わなければゴミになってしまいます。資源を無駄にしない活動なので「12.つくる責任、つかう責任」も該当します。
■廃棄物も資源の可能性が
企業活動の中で、この間伐材のような廃棄せざるを得ないものが出てくるのではないでしょうか。廃棄するにもコストがかかる。そういうものを各社で持ち寄って情報交換してみてはいかがでしょうか。案外、他社から見れば資源になるものがあるかもしれません。もっと言えば、「これに困ってる」とか「この技術何かに生かせないか」など、共有すれば何か生まれるかもしれないのではないでしょうか。
また、今回のコロナ禍だからこそ、新しいことに挑戦するような明るい希望、きっかけを発信できるのも、地域の中小企業だと私は思っています。これからも、この大林のプロジェクトが、企業と市民と行政が連携して、地域課題の解決に取り組むきっかけなれるよう続けていきます。