経営フォーラム2020特集号
1年前から会場を予約して企画準備を進めているところに、新型コロナで集合開催が難しくなった今年の経営フォーラム。実行委員会で出した結論は、初めてのZoom開催。分科会は支部で担当し、サテライト会場から配信することに。「いま同友会だからできること」をメインテーマに参加者518名ではじめてづくしのフォーラムが無事終了しました。今月はその特集号です。
基調講演 同友会理念と実践で、未曽有の経営危機を乗り越えよう
瀬島)最初に、コロナについて危機感を持った頃のお話しをお聞かせください。
■危機感を持ったのは
立石)年明け早々のニュースで危機感を持ちました。これは大変なことになるのではないかと懸念しました。特に東京オリンピック関連の仕事を受けておりましたので、3月に延期が正式に決まり、関連の仕事が全てストップしました。懸念は現実のものになりました。
神原)危機感を持ったのは2月17日の県理事会です。その10日後には安倍首相が全国一斉休校を宣言。危機感を持ちました。
粟屋)私も2月の県理事会の時です。みなさんが驚かれるほど、これから大変なことになると申し上げました。水際で感染をくいとめなければ大変なことになると考えていましたが、残念ながら水際で止めることはできませんでした。
■コロナに対する対応について
瀬島)コロナに対する具体的な対応をお聞かせください。
神原)3月下旬には政策金融公庫に相談し融資を受けました。4月に入り取引3行と話をし、3ヶ月分の売上を上回る資金の確保ができました。経営側は資金が尽きると判断し、すぐに手当をしました。
3月は、百貨店内の店舗は、百貨店の営業時間短縮、土日休業の動きに振り回されました。4月に入り緊急事態宣言が全国に出されました。お店から感染者を出さない、感染者にならないと言って営業を継続しましたが、4月中旬に全店休業を決断しました。4月20日から5月10日まで、長い店は5月末まで休業しました。当然、売上はありません。
人については雇用調整助成金を使って対応、社員には予定通り給料を支給しました。
そのような中で、予定通り9月に社長交代をしました。これまでは、私と会社を立ち上げた中本という男が9年間2代目社長を務めてくれました。9月からは私の長男が3代目の社長となりました。それに応じて、7月から社内塾や研修などいろいろな集まりを設け、ベクトルを揃えることに注力してきました。これからはそういった人たちに託していきたいと思っています。未だ社内から感染者が出ていないこと、社員にはきちんと給料が届いたということで、振り返って悔やむことはありません。
粟屋)私どもは、仕事をいただいて、半年、1年かけて施工し、完成したら売上になるという商売です。2月の時点で5月までの仕事はありましたが、それ以降は、キャンセルや無期延期になりました。そこで、3月以降の受注が7割になったらどうなるのか、五割ならどうかというP/Lの試算を行いました。銀行にもお願いし、月商の3倍の資金を確保しました。
具体的には4月7日に東京で緊急事態宣言が出されたことを受け、社内通達第1報を出しました。第2報は4月16日の全国の緊急事態宣言を受けて出しました。もしも、社員が感染した場合の通達を遵守して最大限感染予防に努めましょうと、社内で意思統一を図りました。
ちょうど参加していたBCP作成セミナーで、場当たり的な対応はよくないと学んでいましたので、感染症のことも含めて事業継続計画をつくり、いざという時には、活かせるようにしなければならないと痛感しました。
立石)オリンピックの延期がだんだん色濃くなり、雇用調整助成金を活用して、正社員の雇用を守ることを考えました。しかし、こういう時だからこそプラスを見つけようと、社長が先頭に立って、社員と一緒に会議を開きました。コロナで一番困っている人に我が社のノウハウで何か提供できるものはないか検討しました。社員とともにアイデアを出し合いアクリル板を加工して飛沫感染防止ツールを作ろうということになりました。3月の初めに試作を始めました。次に、これをどう世の中に伝えていくかを考えました。
府中市の商工会議所にプレス発表できる仕組みがあり、すぐにカタログをすぐ作り、プレス発表とSNSを活用しました。すると、想像以上の反響があり、連日ものすごい電話とメールが入ってきました。多い日で1日千台、少ない日でも500台の注文が入りました。製造現場は夜勤をしてこなしていく状況になりました。こんなことになるとは夢にもなるとは思っていませんでした。社長と社員が協力した結果、今期、6月決算では、良い成績を残すことができました。
■何を大切に経営するか?
瀬島)私は、乾電池のようにマイナスの裏側には必ずプラスがあると信じています。そのプラスをいかに見つけるかが大切だと思っています。
また、これからは地方の時代になると思います。災害に加えコロナになって、東京一極集中、大都市集中の危うさが問われて来ています。デジタル化AI、IoTの進展、さらに5Gによる通信の高速化が進めば、リスクの高い都市で仕事、事業をする意味がなくなっていきます。地方に人が帰ってくる、都市から人が移住してくる時代が、間違いなくやってきます。だからこそ、若い人、都市から移住してくる人が活躍できる場を私たち中小企業がつくっていくことが大切だと思っています。
神原)デジタル化が欠かせないと思います。今回、コロナに対する助成金はすべてインターネットによるオンライン申請でした。GOTOキャンペーンの地域共通クーポンは紙もありますが、電子クーポンが主体です。この電子クーポンが使えるお店が尾道市内では10店舗しかありません。現状ではその受け皿が尾道にはないのです。
都会からの観光客はチケットレス、スマフォひとつでやってきます。デジタル化はすごいスピードで押し寄せています。すぐに取り組むべき課題だと思います。
粟屋)空調は、これまでの快適空間の創造に加え、これからは安心・安全が加わります。滅菌や陰圧などの提案営業能力が必要になるでしょう。そのためには、技術や最先端の知識を身に付けていく必要があります。
デジタル化に向けて、社内の体制を整えるために、本社内をOAフロアに大改造します。社内決済、勤怠管理、社内通達は全社員にスマフォを持たせてオンライン化デジタル化を進めます。
■経営を維持発展させるために
瀬島)このコロナ禍の中でなんとか生き残り、経営を維持発展させるために何が一番大切でしょうか。
粟屋)こういう状況の中で会社を維持発展させるには、社員との信頼関係、そして人間尊重の経営が一番大事だと思います。
立石)単なる時間短縮の働き方改革ではなく、家で両親や子どもの面倒をみながら立派に働くことができるような、デジタルを活かして多様な働き方ができることが必要だと思います。
神原)浪漫珈琲が大切にしていることは「人を大切にする」ということです。私どもの商売はリアルなのです。目の前に人、人と人との関わり合いが一番大切で、これがなければ意味がないのです。リアルにきちんと向き合える日が必ず来ます。そう意味では人を大切にして、物事を考え生活することがとても大事だと思っています。まさに「Human First」です。
瀬島)日々、過ごしていくことが大変な方、半年後、1年後を考えることができないという方、答えがでず悶々とした日々を過ごされている方が少なからずいらっしゃることを私たちは認識しています。
会員のみなさん、決して一人では悩まないでください。会員同士で声をかけ合い、2600社の英知を結集してこの困難な時代を乗りきっていきましょう。