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2019.07.22

中小企業の災害リスクマネジメント ~シンプルBCPのすすめ~

講師:福山平成大学 准教授  堀越 昌和 氏
福山支部P地区会5月例会講演要旨

■リスクマネジメントとは

 企業の利益やキャッシュフローに悪影響をもたらすものをリスクと呼び、それを最小限にとどめる取り組みをリスクマネジメントといいます。
 企業経営におけるリスクは、戦略リスク、オペレーショナルリスク、財務リスク、ハザードリスクの四つに大別できます。自然災害というとハザードリスクと捉えがちですが、災害による経済損失や二重ローン(財務リスク)、被災や復旧活動による経営者の健康悪化や過労死などは、戦略リスクやオペレーショナルリスクに該当します。このように、一度大きな災害に合うと、企業経営全般に悪影響を及ぼす可能性があることを念頭に入れなければなりません。

■BCPとは

 BCP(事業継続計画)とは、企業が様々なリスクに見舞われた際、事業資産の損害を最小限にとどめつつ中核となる事業の継続や早期復旧を可能にするために、日常的に行うべき活動やリスクが顕在化した際の対処の方法や手段等を取り決めておく計画と行動、をいいます。中小企業では特に、経営者のリーダーシップが重要といわれます。

■地域の被災と中小企業経営

 私や別の研究者がこれまでに行ってきた調査研究では、中小企業は自らが被災しても被災地域に貢献していくことが求められています。その理由は、中小企業の経営資源は多くの場合地域内に集中すること、そのため地域に事業存続の基盤を置いていること、などがあげられます。
 しかし、こうした地域密着性は、一時的に復旧需要で潤うことはあっても、長期的に見れば二重債務問題や廃業問題へとつながっていくことが懸念されています。「復興は長期戦」です。
 実は、地域の被災の影響が大きい中小企業ほど災害リスクマネジメントに取り組む必要があり、その一つの方法がBCPです。

■中小企業とBCP

 残念ながら過去の様々な調査研究の結果から、中小企業ほどBCPへの取り組みは低調であることが判かっています。BCPに取り組まない方の大半が、知識・情報不足、取り組み時間・人員の不足、経営者の認識不足を理由にあげています。経営者の認識不足はともかく、知識や時間の不足とは、いったいなぜなのでしょうか。このことについて、私は、二つの大きな理由があると考えています。
 一つは、実際に遭遇していない災害を想定してBCPなどを計画するのは難しいこと。例えば、水害と地震では、どのように行動したらよいか判断が付きにくい事。
 もう一つは、中小企業庁などがBCP作成マニュアルなどを公開しています。非常に丁寧ですが、分量が多く、独力で取り組むには非常に労力が必要な事です。

■BCPはヒヤリハットで

 いきなりBCPに取り組むのは難しいかも知れませんが、そのための準備をしておくことも大切な企業防災への一歩です。他地域の災害など、リスクとも認識されない経験から学び、大災害には至らない軽微なリスクを糧にして、「想定外」をなるべく作らないことが大切です。

■シンプルBCPのすすめ

 シンプルBCPは、中小企業の方でも、経営指針書と連動できる簡易版のBCPのことです。中小企業の方でも、独力で取り組み、日々の経営に災害リスクマネジメントを取り入れていただきたい、との思いで、私が参加した研究チームが作成しました。全部で二〇ページ以内の本当にシンプルなものです。事務局にフォーマットを預けていますので、ぜひ、ご参考にしていただきたいと思います。

■最初に取り組んでいただきたいこと

 最初に取り組んでいただきたいことは、皆さまの安否確認のためのルール作りです。北海道の地震では情報難民という言葉が聞かれましたが、複数の連絡手段を確保すること、その上で出社不能社員のバックアップ体制などを織り込んだ、指揮命令系統図を作成していただければと思います。