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2019.06.28

「働く環境づくり」で生産性を向上させ、付加価値を高めよう!」~第47回定時総会 第3分科会

報告者:㈱広島精機 代表取締役  柳原邦典 氏

■働き方改革と同友会活動

 最近トレンドの働き方改革ですが、同友会はすでに「人を生かす経営」を科学的に進めてきました。同友会活動と今の政府がやろうとしていることをどうリンクさせるか、自社の事例をお話しします。
 ㈱広島精機は廿日市にあり、戦後間もないころ祖父が金属加工業を始めたのが起源です。現在は社員49名、一般機械器具製造業を営んでいます。
 減速機など、歯車をベースにした機械の設計製造をしています。商品を作るための工作機械、旋盤など加工機を操作するエンジニアや、設計開発、営業や総務部などがあります。そういった人々の働く場所をどう作っていくかが経営課題です。

■経営者の責任

 広島県は働き方改革実現推進の一環として、働き方改革実践企業認定制度を作りました。自社では認定を受けるために、まず現状を把握して、それをいかに改善していくか確認しました。同友会の書籍「労使見解」の中で言われている「経営者の責任」を認定企業はチェックされるのです。また、就業規則にもワークライフバランス、多能工化など関連することを書きました。
 ただし、無理やり取り組んだら会社が大変なことになるので、毎週水曜をノー残業デーにする、有給取得を年に1日以上増やす、定時以降は取引先に電話をかけないなど、ゆっくりと前向きに頑張っています。  2017年には月49時間の残業をしている社員もいました。しかし、今年の法改正により、中小企業は2020年4月から残業時間を月45時間、年360時間以下にする、と縛られています。
 法律へ対応するために残業を抑制すると、社員からは「手取りが下がるからもっと働かせてくれ」と言われました。残業したいという会社の風潮を変えていくために給料を上げたため、今は少し落ち着いています。

■10年ビジョンで 方向性を示す 

 昭和の時代は男性の育休や完全週休2日制はあり得ませんでした。しかし今や社長が率先して休みを取らせなきゃいけない時代です。古い感性を修正して、利益を社員へ還元していきましょう。
 働き方改革の主導者は社長です。働く環境づくりのために会社のビジョンを改善し、社員に方向性を示さなければいけません。
 私は同友会に入って、2000年に10年ビジョンを作りました。時間と経験を積んでいく仕事だからこそ、終身雇用を目指すといった旨を書きました。また、社員に伝わりやすいように10年ビジョンを絵にもしました。
 目標を決めて、そこに到達するまでの道筋を現在まで決めるというバックキャスティングでものを考える。そこに社員を巻き込んでいくのです。社員の人生設計と仕事の設計をリンクさせ、方針管理では個人の目標管理もしています。
 社員の方針管理をしていく中で、自社は人事考課が弱いことに気付き、統一化に取り組んでいます。人間的な総合判断と専門的な技術の評価基準を定義しています。納得のいく人事考課も働く環境づくりの基本のキだと思います。

■高付加価値企業になる

 働き方改革のための労働環境改善というと、残業時間の管理や有休の取得ばかり取り上げられ、「うちの業界じゃ無理」という人もいますが、要は働く環境を整備するために、企業の付加価値を高める必要があるということです。
 付加価値を高めていくには、日々の積み上げが必要です。自社のブランディングや従来型ビジネスがあるうちに、売上の五%を先行投資に使っています。

■飽くなき改善活動

 私は経営理念に基づくビジョン達成のための飽くなき改善活動中です。今期の経営指針書ではSDGsやESG経営についても触れています。
 立石代表理事がよく言われる「故郷で錦を織り続ける」人を増やしていくためにも働く環境づくりに取り組んでいきましょう。
 働く環境づくりとは労使見解に基づく人を生かす経営の実践です。同友会の先見性に感謝しつつも、自社がこのような取り組みをしているのは同友会のせいだ、と思っています。