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2018.01.26

役員研修大学 第6講 よい経営環境をつくろう ~金融アセス運動の成果と中小企業憲章・条例の運動~

 ■金融アセス運動とは
 1986年から始まったバブル景気は、国の不動産取引規制と金融の引き締めにより1991年に崩壊します。金融機関は多額の不良債権を抱えることとなり、その処理のために金融検査マニュアルによる中小企業への貸し渋り、貸しはがしが横行しました。
 この事態に危機感を抱いた立教大学の山口教授は、金融アセスメント法案を作ります。その骨子は①地域で集めた金を地域に還元融資しているか、②物的担保や連帯保証による融資のみをしていないか、③金融機関の経営は健全かの3点です。要するに私たちが銀行を評価し、国民に情報公表しようという内容でした。制定運動では101万の署名を集め、1009地方議会から制定意見書が提出されました。残念ながら法律はできませんでしたが、第3者の連帯保証原則禁止や経営者保証に関するガイドラインができました。
 
 ■金融アセス運動の成果
 2015年には金融庁が新しい金融方針を発表しました。その内容は、企業を事業性で評価すること。そしてリレバンの強化です。金融機関の取り組みを自己評価し、それを通じて取引先企業の成長や地域経済の活性化につなげていくことを目的にした「金融仲介機能のベンチマーク」が公表されました。さらに、自己評価の結果を自主的に開示することを促し、企業が金融機関を主体的に選択するための情報として活用することも想定しています。
 これは同友会が取り組んできた金融アセスメント法制定運動で提言してきた内容と重なる点も多く、長年の運動の成果と言えます。このような「事業性評価」を重視する流れに対して、中小企業経営者は、自分の言葉で自分の会社の財務諸表などの経営の結果を金融機関に説明する力をつけなければいけません。
 
 ■中小企業憲章のこれから
 金融アセスメント法制定運動の経験から国を動かせると確信した私たちは、中小企業憲章制定運動を起こそうと動き出しました。きっかけは第35回定時総会の分科会、横浜国立大学の三井教授による「欧州小企業憲章」の報告です。憲章には「小企業はヨーロッパ経済の背骨である。中小企業は雇用の主要な源泉であり、ビジネスアイデアを生み育てる大地である」とありました。
 日本にも中小企業憲章を作ろうと各地で学習運動が繰り広げられます。そして2010年6月には中小企業憲章が閣議決定されました。その前文には「中小企業は経済を牽引する力であり、社会の主役である」と記されています。しかし、あくまで閣議決定です。今後も①国会での決議、②中小企業担当大臣を置く、③中小企業支援会議の設置という3つを目指して運動を継続していきます。
 
 ■同友会の力で地域活性化を
 少子高齢化・人口減少が問題視されています。2050年には2010年の総人口の三割が減少。就労人口も4割減少すると試算されています。消滅可能性都市は全国に896自治体。広島の11の市町も含まれます。この先起こる問題として、地方からの人の流出、耕作放棄地や空き家の増加、地銀の統合、中小企業の減少などが挙げられます。
 これらの問題を解決するため中小企業振興基本条例制定運動を起こしています。この条例は産官学金の連携を強化して経済を活性化させる地域づくりを目指すための活動の基礎となる条例なのです。
 弊社のある福岡県直方市は2012年に中小企業振興条例ができました。翌年には産官学金が集う審議会を開き、直方市をどんな地域にしたいかが話し合われ、直方市産業振興アクションプランを策定しました。「のおがた“働く”ウィーク」と題して夏休みに小中学生を貸し切りバスに乗せ、直方の製造業を回るツアーを開催しています。その他様々な活動を通して地域づくりを進めています。
 このような地域づくりは同友会の力がなければ実現しないでしょう。ぜひとも広島の皆さんのご活躍を期待しています。