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2017.07.08

県総会第1分科会 「人づくり 人を生かす経営の実践」

 当社は福山市で金属製品の製造をしています。社員数35名の内、4名の障害者(肢体不自由・聴覚障害・広汎性発達障害2名)を雇用しています。
 障害は主に、知的障害・身体障害・精神障害・発達障害の4つに分けられます。発達障害は、知的な遅れを伴わない場合もあること、コミュニケーションの障害、社会性の欠如などの特徴があります。注意欠陥多動性障害は、不注意、多動・多弁、衝動的行動の特徴が、広汎性発達障害(自閉症・アスペルガー症候群)は社会性やコミュニケーション、想像力の欠如などの特徴があります。
 発達障害でない場合も、ほとんどの人がいずれかのタイプに偏っていると言えます。それぞれの特性を理解し、社員がどのタイプに当てはまるのか理解すると、個人に適した接し方や適性に応じた社内配置ができます。例えば、注意欠陥多動性障害の社員は、その行動力を活かし営業に、コツコツと自分の好きなことを積み上げる自閉症タイプの社員は職人や経理に、などです。
 
●障害者雇用のきっかけ

 数年前、とても忙しく、社員も遅くまで残業する日々が続きました。ある日、設計をしていた社員が倒れ、休養することになりました。その社員はしばらくして復帰できましたが、このままではいけないと気付きました。そこで県障害者職業センターに、3DCADができる人はいないか問い合せると、吉備高原リハビリテーションセンター(吉備リハ)に通う肢体不自由の訓練生を紹介されました。彼の採用後、自社の仕事は耳が不自由でも出来るのではないかと思い、同センターで聴覚障害の男性と面談しました。
 彼の採用を社内で相談すると、大反対でした。「物が落ちてきた時に危険だ」「指示ができない」と言うのです。私は「いま、みんな耳が聞こえているが、社内で全部指示が通っているのか!」「そんなに危ない社内なら、すぐに改善しないといけないんじゃないか」と、半ば強引に彼の採用を決めました。彼は物覚えもよく、筆談で十分にコミュニケーションが取れています。確かに言葉の指示はあればいいかもしれませんが、言葉がそれほど大切ではないと思っています。

●潜在能力を伸ばす

 特別支援学校を卒業したN君は2015年に新卒で入社しました。パソコンもブラインドタッチができ、一見してどこに障害があるのかわかりませんでした。彼の採用を幹部社員に相談すると、「また始まった…」という顔をされました。ところが実際に入社すると、彼は会社を変えるほど積極的に仕事をしました。在学中に独学で設計の勉強をしていて、図面もすぐに読むことができたのです。通常、入社して1年経ってからではないと機械を触らせないのですが、彼の場合は早々に機械の操作を任せました。
 私は障害者問題を通じ、労働能力と障害は別だと学びました。支援学校の生徒の中には、優秀で能力の高い子がたくさんいます。学校と企業のマッチングが出来れば、子どもたちの能力を活かせることができます。
 
●知ることから始める
 経営者の仕事は経営戦略と人材育成だと言われますが、私はそれ以上に重要なのは覚悟だと思っています。社員を幸せにし、絶対に1人前にする覚悟がなければ、障害者手帳を持っている社員を育てることはできません。
 これからの中小企業は採用難が続くことが予想されています。多様な人材を活用できる企業こそが、今後生き残っていけるのだと思います。
 今年10月には福山市で障害者問題全国交流会が開催されます。経営者は社員を守るために、いろんな引き出しを持っておくことが必要です。ぜひ知ることから始め、一緒によい会社をめざしましょう。