5.「あたりまえのことをあたりまえに~現場と人を大切にする経営者の姿勢~」 ~福山3月支部例会 報告者‥㈲浪漫珈琲 代表取締役会長 神原 栄 氏 (尾道支部)
- 開催日時:
- 2016/03/09(水)
- 会場:
- ローズコム
- 人数:
- 74名
- 報告者:
- (有)浪漫珈琲 代表取締役会長 神原 栄 氏 (尾道支部)
- 文責者:
- 事務局 橋本
■始まりはモーニングから
我社は尾道に4店舗、広島に3店舗、喫茶店を展開しています。年商は約4億8千万円です。すべてのスタッフを合わせると、約150名になります。
39才の時に大手のコーヒー会社を退職し、担当していた店舗を譲り受けて独立しました。しかし売上が思うように伸びません。従業員を集めて我社の方向性を語り、「当たり前の事を当たり前に」「大きな声でいらっしゃいませ」を行動指針に置きました。
その上で力を入れたのがモーニングセットです。熱くて大きくて中を割ると真っ黄色のゆで卵。こんがりきつね色に焼いたバターたっぷりのトースト。冷たくてしゃきしゃきのレタスのサラダ。これを徹底追求したのです。おかげでお客様のリピートが増え、店は順調に売上が伸びるようになりました。これが「当たり前の追求」の原点だと言えます。
■社員の心をつかむ「浪漫塾」
社員教育はOJTが中心ですが、大事にしているのが「浪漫塾」です。私は出店する際には必ず初代店長になって運営を確立してきましたが、広島に出店した時にそれができませんでした。そこで、当時の社員・パート・アルバイトを4班に分けて、一日使って研修を行うことにしたのです。
「塾」では、まず私自身の人生を語ります。ずいぶんいろんなことをしてきましたから、面白がって聞いてくれます。その後、KJ法を使って「美味しいもの」「良い接客」「良いお店」とは何か、考えます。夕方からは懇親会を行って、店舗間の人的交流を進めます。
私と言う人間を知ってもらい信頼してもらう、基本になるものを自ら考え出してつかんでもらう、そして職場を楽しいものにする、大事な場になっています。
OFFJTでは、コーヒーに関する資格の取得や、ハワイの農園でのコーヒーに関する一式の体験などにも力を入れています。
■社員に浸透させる「運営指針」
同友会に入って、経営指針づくりに触れ、さっそく成文化を行いました。同時にパート・アルバイトの方にも浸透させるようと、「運営指針」をつくりました。これは店舗ごとに、どのように仕事を進めるのか、なぜそうするのかが具体的に書き込まれています。単純なものの方が理解しやすいと考えたからです。これらは幹部を集めて作ります。
大事なのは本当に求められているのは何なのか、理解することです。これが「当たり前の追求」の礎になっています。
■売上を減らさない方法を考える
我社の方向性は「地域に根ざした老舗型専門店」です。派手な看板は出しません。広告もほとんどしません。たまたま立ち寄ったお客様にリピーターになっていただく。それが戦略の柱です。
ですから幹部会議で行う討議内容は、売上を上げる方法ではなく、売上を減らさない方法だと言えます。美味しいものとは何か、良い接客・良いお店とはどういうものか、深め、常に新しくしていく事が大事だと考えています。
値上げは、お客様の数が店舗の飽和状態になった頃を見計らって行います。常に商品の品格、食器などを含めた店格、関わる従業員の人格、そして価格が調和しているのか、めざすものになっているかをチェックするようにしています。
■大事なのは根を育てること
大手企業は、すぐに成果を出すことを現場に求めます。しかし、私たちは違います。まず根をしっかりしたものにする。幹を太く丈夫にする。そうすれば、果実はなり続けてくれるはずです。
そうなるには、経営者と社員の信頼関係が大事です。まずすべての情報を開示する事、そのためにも公私混同を行わない事は、前提だと思います。
すき焼きを考えると、私はこれまで肉ばかりを育ててきたと思います。実際にはネギもこんにゃくも豆腐も必要です。今後はこうした多様な人が育つ会社にしたいと、今、取り組んでいる最中です。