【12月号特集記事】「人材の採用と育成・社会的な困難を抱える若者~発達障害を疑う社員の生きづらさへの理解と対応~」広島エリア地域共生委員会例会
- 開催日時:
- 2024/11/12(火)
- 会場:
- ひと・まちプラザ
- 人数:
- 61名
- 報告者:
- 講師 福山市立大学 教育学部准教授 平野 晋吾 氏
- 文責者:
- 樋口メンテナンス 樋口 真弘
「発達障害のある方は今後も発達することはないと思いますか?…」
去る2024年11月12日に福山市立大学教育学部 平野晋吾先生をお迎えし広島市まちづくり市民交流プラザにてZoomを含め61名の参加の中、企業の早期離職に至る理由の中に発達障害、または関連する状態を抱えている若者が増加していることから、社員一人ひとりを企業の中で活かすためにできることを考える講演がありました。
平野先生は大学では心的活動を支える覚醒・睡眠に着目し,「人はなぜ眠るのか」あるいは「なぜ眠れなくなるのか」をテーマに生活リズムの乱れなどの現代社会的問題をテーマに研究されており例会の始まりに「眠たい方は遠慮なく寝てください。5分間でも睡眠をするとさっぱりしますよ」と緊張をほぐす言葉から始まりました。
(もちろん眠った会員の方はいらっしゃいませんでした)
講演では発達しない子供はいないが、知的な発達には全般的な遅れ以外にも偏りや歪みが現れることがあり、例えば仕事において1から10までの行動を順番に伝えたとします。
定型発達(一般的に健常者)の方は1~10を順番にこなし目標へと到達します。
これに対し遅れの方は1~10までの「プロセス、時間」がかかる傾向に。
偏りの方は1~10までの順番の中でどこかのプロセスでは能力を発揮、どこかのプロセスでは理解が遅くなる傾向に。
歪みの方は1~10の順番通りに理解できない、どこかのプロセスのみ逸材的な動きをみせる、どこかのプロセスはまったく理解できない傾向に。発達障害にも種類があるとアニメーションを用いた図解で説明していただきました。
定型発達の方は基本的に仕事・物事の進行をバランスよくと考えがちです。
すべて平均的に物事をこなしていくのが難しい方に対し、1、2ができないからそのあともできないという認識・思い込みを抱いてしまい、たとえば5,7が群を抜いて長けているのに3以降を教えてもらっていないので能力を発揮できず、会社から必要とされない、理解されない存在と思っていくようになり、結果、早期退職、生きづらい人生を送ることになっている。
発達障害を持っている方自身は、ある能力が長けていることは認識していることもあるが、その他の能力が低いことも認識しており、低い能力のほうを過去の記憶として強くもっており「自分なんて、どうせ自分は」が口癖になってしまい、能力が高いほうへ目が向いていない傾向もあるとのことでした。
子どもの成長においても低学年では足が速い子、運動神経が良い子が賢いと思われがちで、成長するにつれ高学年では知能が高い子の方が賢いと思われるようになってくる。会社でも話が旨い人・挨拶が元気な人は営業向きと考えられるなど、第三者から見て、印象でその人の性格などを思い込みで判断し、配属後の結果が出ない時には「なぜできない、そんなはずは無い、なぜ理解できない」と思いとのギャップをぶつけてしまうことが、それを受ける本人にとっては生きづらい人生となってしまっていることがあると教わりました。
発達障害を含め障害をもつ方に二次障害(暴力、うつ、自閉症など)に陥らせない注意が必要で5つの職能(「社会性・対人関係」、「知的機能・認識機能」、「運動機能、注意機能」・「プランニング機能」、「覚醒調節機能」)を周りが理解することでよりよい対人関係が構築でき、社会生活においてもそれぞれの能力をそれぞれが理解しあい行動、支援していくことで多様性の社会が実現するのではないかと思います。
現在企業でも障害者雇用や入社してきた方が数日、数カ月してから発達障害の疑いがある傾向が見えてきたという事例も聞きます。企業側(受け入れる側)も雇用に対し雇用社員数や雇用の継続、社員教育などによりストレスを抱えてしまう傾向もあり、どちらの社員に対してもフォローが必要ということを忘れてはいけません。健常者、障害者、ともにそれぞれ長所、短所は各々持っているものだと思います。それぞれの人格を尊重しあい、よい会社環境、地域社会を作り上げていきたいと思いました。
※この報告要旨は、同友ひろしま1月号でも掲載予定です。