経営フォーラム2024 第5分科会 事業承継「温故知新!バトンを受け継ぎ、夢をカタチに~同友会活動を通じた自己変革~」
- 開催日時:
- 2024/10/11(金)
- 会場:
- リーガロイヤルホテル広島
- 人数:
- 35名
- 報告者:
- 平和建設(株) 代表取締役 岡田 一真 氏(福山支部)
- 文責者:
- 事務局 長谷部
■経営理念
お客様、福祉化社会に貢献する
社員、家族の幸福を実現する
■インテグリティ(誠実性)のある会社に
平和建設の前身である岡田組は、1882年に福山で創業しました。当時は農業土木を生業にしていたそうです。第2次世界大戦があり、福山は8割が焼け野原に。復興には土木建築技術が求められました。そんな時に土木の岡田組と建築の粟村組が合併し、平和建設を設立しました。社名にはみんなが平和になれる街をつくるという思いが込められています。
創業から142年が経ち、今では民間・公共さまざまな仕事をしています。自社の強みは、土木・建築をはじめ5つの柱となる事業でお客様のさまざまな要望にワンストップで対応できること。そして地域密着によるフットワークの軽さです。
また、平和建設はインテグリティ(誠実性)を大切にしています。関わる人たちに深く信頼される会社になりたいという想いから社内でインテグリティ基準を設けています。
■「このままじゃ会社を潰すぞ」
前職である製鉄所で勤めて4年経ったある日、先代である父から会社へ呼ばれました。その時初めて、父の口から平和建設の歴史、思い描くビジョンを聞きました。私は「200年をめざせ」と使命を託されたと感じました。父から必要とされた喜びと使命感で2015年に平和建設へ入社します。
最初は会社全体のことが学べるからと経理部配属になりました。社員と良い関係を築けるか不安で自分から行動してみましたが、どうも空回る。そのうち心が折れてしまい、言われたことを淡々とこなすようになりました。1年後には取締役になりましたが、肩書と実態とのギャップに悩まされました。
そんなときに父から同友会へ誘われました。そこで待ち受けていたのは強烈な先輩会員との出会いです。「カズは典型的なボンボンじゃ。このままじゃ会社を潰すぞ」と言われ、後継者など同じ立場の人が多い青年部へ入会することになりました。そしてまたも心が折れました。グループ討論で、会社のこと、自分のことがまったく答えられなかったのです。このままじゃダメだと思いながらも、会社からも同友会からも逃げてばかりで、自分からは何もしませんでした。
■自分に軸をもつ
そんな私が変わろうと思ったきっかけが例会報告です。これはまたとないチャンスだと思い立候補しました。例会づくりの中で「啐啄同時」という言葉を教わりました。殻を破りたい私をみんなで助けるよと伝えてくれたのだと思います。
報告をするために、社長や社員の思いを知ることにしました。アンケートを実施してみると、私への期待の声などもあり、これまで自分のことしか考えていなかった私を反省しました。
「本音で話せる人間関係を作ってほしい」という声があり、誠実な人なら本音で話せる、信頼されるだろうと考えました。まさにインテグリティです。定義から突き詰めて、会社の基準としました。私自身もインテグリティが軸になりました。
それからは自ら行動するようになりました。しかしここでも空回ってしまいます。同友会で班長をすることになり、変わってほしいと思う会員に例会報告を勧めるも、退会をしてしまう。会社のとある事業所で、残業が多い社員に残業をやめるよう言っても「できるわけないだろう!」と一蹴されてしまう。どうして分かってくれないのだろうと頭を悩ませました。
ふと会社のインテグリティ基準の「従業員満足の向上」という項目を読んでいるときに、自分には相手に寄り添う姿勢がなかったと気づきました。例会報告をする、残業をなくすという目的ばかりに目が行き、相手のことを知ろうとしなかったのです。まず残業の多い社員の話を聞くことにしました。すると、少しずつ自分のことを話してくれました。「妻と旅行に行きたいんだ」と。そしてその社員を気にかけている周囲のことも知りました。事業所全体で話し合いながら、残業を減らそうと取り組みました。ある日、私のもとにその社員から家族旅行の写真が送られてきました。インテグリティの大切さを実感した出来事です。
■実践と会社の変化
社長から働き方改革のプロジェクトリーダーを任されたときのことです。最初は言いっぱなしで何もできませんでした。このままでは社員にも信用されないと思い、インテグリティに立ち返り、始めたのがアンケート第2弾です。厳しい意見をもらいました。それでも先の残業を減らせた実例をもとに、社員を巻き込みながら全社的に実践しました。肯定的な社員ばかりではありませんでしたが、それでも諦めずに想いを伝え続けていたら、少しずつ協力を得られるようになりました。みんなで課題を出し合い、その解決策を議論を重ねて見つけていきました。
大学からの相談で、発達障害のあるMくんを雇用することになったときのことです。入社当初は「誰が面倒を見るんだ」とネガティブな反応。「社員、家族の幸福を実現する」という理念とは程遠い現状に、絶対に彼が活躍できる場をつくると決心しました。まず私自身が障害のことを知り、どんどん発信していきました。すると、Mくん自身の誠実さもあり、だんだんとみんなが手助けしてくれるようになりました。見守ってくれる雰囲気ができました。Mくんに居場所ができたことが我がことのように嬉しかったです。
■事業承継は温故知新
「経営は経験工学。とにかく経験・苦労をしなさい」「社長はマドラー。抵抗されても会社をかきまぜろ」先代から言われた言葉です。同友会入会や会社で任された役割を通して人と関わっていく中で、先代には色々な経験をさせてもらいました。経験を通してマドラーの意味を知り、平和建設への想いも生まれました。
今年の8月28日、社長になって初めて経営方針発表をしました。指針書は幹部のみんなと一緒にまとめたものです。私が入社した当初は経営指針に否定的だった社員も、今では必要だと考えを改めてくれました。
私にとっての事業承継は温故知新です。これまでの会社・先代・社員の想いを知ったその先に、私の想いが生まれました。そしてこれからの平和建設を作っていくために、啐啄同時に周囲から教わったことを、インテグリティをもって実践することで、自身も会社も変わっていきました
■創業200年をめざす
理念を伝え続けてくれ、私を信じ任せて、いろいろな経験をさせてくれた父には感謝しかありません。父から託された「200年をめざす」使命のために何をすればいいのか、いまだ模索中です。変えてはならない理念・インテグリティを大切にして、組織や自分自身を変えていかなければいけません。今は、会社のビジョンを社員と一緒に考えています。ビジョンの先にある理念の実現をめざしていきます。
皆さんは、自分の想いや周囲の想いを知って、実践していますか?信じ任せていますか?啐啄同時に殻を叩いてみてください。
■会社概要
設立 1949年6月28日
資本金 3,000万円
年商 16億5,200万円
社員数 46名
事業内容 総合建設業(土木・建設工事の企画、設計、施工)宅地建物取引業