役員研修大学第2講「同友会の歴史~何を学び、継承・発展させるか~」報告要旨
報告者:国吉 昌晴 氏(中同協 顧問)
■中同協前史~設立まで
第2次世界大戦を敗戦で迎えた日本では様々な運動が起こります。その中の一つに中小企業家同友会の前身である全日本中小工業協議会(全中協)がありました。全中協は「中小企業こそ日本経済の主人公との自覚と使命感を持つ。中小企業は平和のなかでのみ繁栄できる。従業員の生活を守り、協力して企業を発展させる。」と自主的な中小企業運動を提起しましました。全中協の結成は47年ですが、この時代に従業員の生活を守るといった方針を掲げた中小企業団体は全中協だけでした。この精神が後の労使見解に繋がっていきました。
その後、自主的な運動を続けるべく全中協の一部の方々により、57年に日本中小企業家同友会(現東京同友会)が結成されました。設立総会では、自主的・民主的に中小企業運動を進めようと宣言されました。
69年には全国組織を作ろうという動きがあり、中小企業家同友会全国協議会(中同協)が5同友会640名の会員で設立されました。
■同友会運動の確立
73年、広島同友会が創立された年の定時総会では「同友会3つの目的」が成文化されました。オイルショックのさなかだった第4回中小企業問題全国研究集会では、「国民や地域と共に歩む中小企業」という同友会理念の原点となった、「決して悪徳商人にはならない」という宣言がされました。75年には、当時中小企業を苦しめる労使問題に対し、10数年にわたる議論の末、「中小企業における労使関係の見解」(労使見解)が発表されました。このように、70年代は同友会運動の基本方向が確立される重要な時代となりました。
経済の安定成長が続き、会員数の飛躍的増加、各専門委員会の確立など大躍進が続いた1980年代を経て時代は、1990年代へと入っていきます。
90年の定時総会では「同友会理念」が採択され、改めて理念の確認がされました。93年の定時総会では「21世紀型中小企業づくり」が宣言されました。これは、①地域から必要とされる会社になっているのか。②社員からこの会社で働けて良かったと思われる会社になっているか。が問いかけられました。
バブル崩壊後の90年代は、同友会理念を再確認し、活動の原点への立ち返りを行ないました。
■地域と共に歩む中小企業
21世紀に入ると、雇用と地域経済を守る中小企業の役割は更に増大し、新しい時代への挑戦が続きます。
貸し渋り・貸しはがしが横行していた90年代、貸し手も借り手も対等だという考えのもと、00年に金融アセスメント法制度の制定を提唱し、翌年には全国署名運動を提起しました。この運動は経営指針づくりを軸とし、人を生かす経営に基づいた企業づくりの実践あってこその提起だと実感しています。そして結果として、全国で101万筆を集める大きな運動となり、総括において「我々の運動は国政を変えることができる」との確信を得ました。
この一連の運動が、中小企業憲章制定の動きへと繋がり、10年には中小企業憲章が閣議決定されます。憲章の前文には、「中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である」と明記されました。
11年に発生した東日本大震災では、全国の同友会が被災地支援活動に取り組み、「連帯」の精神を発揮しました。社員とその家族を守り、地域の再生をいち早く宣言し、リードする中小企業の事例・教訓を数多く残し、地域経済を牽引しました。
■今後の課題と展望
1つ目に、何よりもまず、時代変化に負けない強い企業となるために企業変革支援プログラムver.2の活用をしていただきたいと思います。
2つ目に、常に会勢の増加をめざすこと。
3つ目に、同友会理念を語り、実践することが私たち自身の「生きざま」となります。3つの目的の総合実践をめざし、自主・民主・連帯の精神を自社経営に取り入れていきましょう。そして、国民や地域と共に歩む中小企業をめざすということを日常的に追及していただきたいと思います。これが結果として地域・業界に無くてはならない企業、経営者としての信頼・期待が増し、同友会運動への厚い信頼に繋がります。広島同友会がその先頭に立っていただきたいと思います。
(記:事務局 中野)