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2023.09.26

「多様性の垣根を超えることが企業の要~女性社長の巻きコミュ力(りょく)~」福山支部8月例会

講師:エフピコダックス(株) 代表取締役  岩井 久美 氏

 エフピコダックス㈱は、(株)エフピコの特例子会社です。特例子会社とは、一定の要項を満たせば特例子会社の障がい者雇用数を親会社やグループ会社の雇用として合算してカウントされる制度の下で作れた会社のことです。(株)エフピコではグループ全体で、現在365名の障がいのある社員が正社員として働いています。

 私が社長就任の打診を受けたのは3年半前です。当時はまだ現場で、プレイヤーとして働いていました。それが突然200人の従業員を抱える会社の社長就任を打診されました。現場が好きだった私は社長になるより、もっと自分の強みを活かせる仕事をした方が会社に貢献できるのではと思いました。けれど3日間悩んだ結果、私は社長を受けることにしました。㈱エフピコのグループ会社の中で、初の女性社長でした。

 私の所には国内5工場の生産実績や稼働率、クレーム等の数字が毎日報告されてきます。その数字を深読みし現場と繋げていくことで、私は次第に経営の楽しみがわかるようになり、今まで以上に199人の従業員が可愛いと思うようになりました。賞与の時期になると一人ひとりの評価を掘り下げ過ぎて眠れないこともありますが、その評価の先にいる従業員の顔や生活の様子などを思い浮かべると、より愛しく思うのです。  

■多様性は当たり前の時代  

 国内で障がい者と言われる人(障害者手帳を持つ人)は964万人、人口の約10%です。障がい者だけではなく、シニアやシングルマザー、外国人、そこに障害者手帳がなくても生きづらさを感じている人達を加えれば、私たちの方が少数派かもしれません。それくらい多様性は当たり前の時代なのです。

 総務省はこれからの20年で労働人口は400万人以上減少すると発表しました。経営者は事業継続の点からも、今後の人口構造の変化や労働人口の減少を考えて経営する必要があります。障害や年齢、性別などの条件を出していては、必要な人数を採用できない時代が来ます。働ける人は誰でもが働く時代です。

 日本では人生に関する悩みで一番多いのが職場の人間関係だと言われています。みんないい職場や人間関係を築きたいと思っているはずなのに悩んでいるのです。私はそれぞれの従業員が能力を活かして、チーム力を高めて働いてくれればいいと考えるようになりました。すると社内の問題に、おおらかに対応できるようになり、従業員が辞めなくなりました。  

■経営者の覚悟が鍵!  

 これまでは家庭を顧みなくていい人が、長時間働いてきた時代だと思います。しかし子育てをしていると、どうしても仕事の第一線から離れなくてはならない時期があります。時間は決して平等ではありません。各々が決められた時間内でいかに効率よく仕事をするかに特化することが重要です。もし残業や休日出勤をせざるを得ない仕事量であれば、会社が力を入れて解決しないといけないのです。従業員の時間や労力をサービス残業として搾取してまで上げた数字は、会社の本当の数字なのでしょうか。

 私が週3回のノー残業デーを取り入れた時は一時的に生産性も利益も下がりました。そこで人を増やし、工夫をすると以前より数字が良くなりました。一人ひとりが持つ時間に応じて、その時間を濃いものにしていく事が鍵であり、経営者がどこまで覚悟を持って取り組むか大切なのです。

 私は障がいの有無に関わらず、人は人から必要とされ正当な評価と給料を得ることが大切だと思い従業員に接してきました。性別も同様で、男性だから女性だからではありません。これは、私自身が人として評価されてきた経験を基にした考えです。障がい者雇用の根本は人と人との問題です。障がい者が辞める会社は、おそらく健常者も辞めています。同様に女性活躍が進んでいない会社は男性も活躍していないはずです。

 多様性というキーワードに拘りすぎると分類ばかりが増えていく気がします。大切なのは一人ひとりに向き合い、どう仕事のパフォーマンスを上げるかです。

(記:事務局 本田)