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2023.08.30

会員紹介 (株)hitolight 代表取締役 浦中彩子 氏(中③④地区会)

広島市西区小河内町に、ドローンの女神が降臨した。会社の設立は今年1月。同友会入会は半年後の7月。事業は走り始めたばかりで、まだ最初の決算も迎えていない。事業内容はドローンのスクール実施、及び測量やプロモーション撮影など空撮業務、企業のドローン運用コンサルを請け負う。起業の背景には、安全・安心を追求する激しいまでの熱意があった。

こども写真館にカメラマンとして勤務したことで、写真が好きになった。塾講師の仕事を通して、教えることの楽しさを学んだ。そして前職の建設コンサルタントの会社で、ドローンと、現在共に会社を運営する藤原恒氏と出会った。

前職における浦中氏の仕事は広報。西日本豪雨におけるドローンの有用性を記事にしようと、同僚の藤原氏を取材したことが、彼らの出会いとなった。藤原氏は国土交通省の依頼を受けて、呉の天応などにおける災害対応を一手に引き受けたドローンパイロット。緊急時に国がどんなデータを必要とし、何を求めているのか、身をもって経験。ドローンの有用性を実感し、実績を築いた。

その後、浦中氏は藤原氏の部下となる。社内でのドローン操縦者の育成や、活用方法を検討する立場となった。

自身が操縦者となるため参加した社外講習において、彼女は衝撃を受ける。ドローンを飛行させるため操縦技術を修めることはもちろん大切である。しかし安全な飛行を実現させるためには、高度な安全への意識作り・環境整備が、より重要であることに気づかされたのだ。

例えば「操縦者は、飛行全般の責任者である」という項目がある。現場では、操縦している部下に向かって、上司が「もっと遠くまで飛ばせ」等々飛行について命じることがよくある。しかし操縦者が安全を確保できないと感じる場合には、上司の指示であっても「出来ない」と断る権利があり、その場合、役職などの立場を問わず操縦者の判断が優先されなければならない。しかし、組織で運用する場合、日々の力関係がどうしても飛行に影響してしまう。そこから、「操縦者の権利を守るルール」が必要だと気づいた。

「これまでの自分は、ドローンを飛ばすことしか見えてなかった」「飛行中、なぜプロペラの音が怖かったのか、早く着陸させたかったのか、その理由が分かった」「自分の中に安全だという自信がなかったからだ」

「リスクを0にすることはできない。ただ、操縦者は、最大限の安全を確保することで、初めて安心して操縦が出来る」。こう確信した浦中氏は、2年に渡り、藤原氏と共に、社内で安全にドローンを運用する環境作り・意識改革・ルール作りに取り組んだ。残念ながら容易には理解を得られず、心無い言葉や妨害に涙する日もあったとか。

しかし彼らの努力は実を結ぶ。5年ものあいだ操縦者になる希望がほぼ皆無だったにも関わらず、彼らが入念に準備したルールを社内で発表したところ、約600名中100名を超える従業員が説明会に参加。100名以上がドローン操縦者となることを希望。その後1年間で中国5県において約100名の操縦者育成を達成する快挙を成し遂げた。

名乗りを上げた100名が「これならドローンを飛ばしたい」と言ってくれた。それは大きな自信となり、浦中氏と、藤原氏を、次の歩みへと押し出した。2人は去年12月、前職を退職。前述の通り、今年1月に(株)hitolightを設立する。

大きな実績を持つものの、企業としては走り始めたばかり。まだ顧客も確保できているとは言えない状況。しかし浦中氏は明るい未来を語ってくれた。心にあるのは「安心安全な社会を作りたい」ということ。飛行するドローンを見た時「怖い」と言う子どもがいるそうだ。飛行機を見た子どもが無条件にワクワクするように、ドローンを見た時も同じようにワクワクしてもらいたい。徹底して安全にドローンが運用される社会を形成したい、と熱っぽく語ってくれた。

ドローンの可能性はのどかな空撮だけでない。建設・測量・災害時の状況確認・不動産物件の管理点検・観光地や企業などのプロモーション撮影・農業利用などなど、多岐に渡る。また彼らは撮影した映像を3D化する技術も持っており、撮影された被写体の大きさや距離をセンチやメートルで割り出すことも可能である。ひょっとして御社の悩みも①スクーリング②撮影③ドローン運用コンサルを行う、(株)hitolightに相談すると、解決の糸口が見えて来るかも?!

大きな可能性を秘めた事業を展開してるが、なにぶん2人しかいない会社である。時には意見が対立し、険悪になることもあるそうだ。そんな時は「外へ出る」。事務所内で顔を突き合わせていがみ合うと収拾がつかないので「喧嘩をする時は、事務所ではなく屋外で」と定めているとのこと。「大田川の河川敷の芝生に並んで座って喧嘩するんです」と浦中氏。なんとも微笑ましい話である。

是非一度、彼女にドローンについて質問してみて下さい。思わぬ答えが返ってくるかもしれません。

記:ひとつ麦 吉原 幸子