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2023.08.29

23年度第1回アンケートに1,425名が回答 「業況感はややプラスに、価格転嫁(値上げ)が課題」

県政策委員会(宮﨑基委員長)は、7月1日~20日、会員企業の経営課題と政策要望のアンケート調査を行いました。組織をあげて取り組んだ支部もあり、目標の1,200名を大きく上回る1,425名の皆さんから回答が寄せられました。以下は、その概要です。
※DI=傾向を見る数値。DIが100に近いほど良い(上昇)、△100に近いほど悪い(下落)ことを意味する。

(1)業況は水面上に顔を出す

経営状況を示す業況判断DIは3で、半年前の-5、一年前の-8から改善し、三年ぶりにプラスとなりました。しかし、回復の力は強くありません。業種でみると、建設が14、サービス9、その他6が水面上にあり、製造は-10、卸・小売が-12で水面下です。少しずつ改善してきた利益の状況ですが、今回のDIは17を示し、半年前よりも1ポイント下がりました。業況の改善が利益につながりにくいことを示していると思われます。
5月、新型コロナが5類への指定変更で活動の制約は少なくなり、経営状況の大きな好転が期待されましたが、そうはなっていません。なぜなのでしょうか。

(2)経営問題のトップは、従業員の不足

「従業員の不足」を回答者の35%があげ、一年ぶりに再び経営問題のトップになりました。二番手は、「仕入先からの値上要請」(28%)が続き、トップを交代しました。3位には「人件費の増大」(28%)が続き、仕入れの高騰や賃金のアップが経営上の大きな問題となっています。(表①)
では、「仕入れ価格」はどのくらい上がっているのでしょうか。22年1月と比べて、「1%~5%程度上昇」が5ポイント下がり、「6%以上上昇」が14ポイント上がっており、上げ幅が大きくなっていることが分かります。ただし半年前と比較するとほぼ変わらず(-1)、上げ幅は高止まりしていることがうかがえます。
問題点の4番目に入った「エネルギー費の増大」(20%)は、2年前と比べて9倍を示しました。エネルギー費高騰に伴い、政府は昨年4月から、元売りに燃料補助金を支給していますが、徐々に減額され、9月には終了する見込みです。物流業界では、いわゆる「2024年問題」とからめて、難しい課題が突き付けられています。
経営課題では、「人材の確保・育成・定着」(62%)がトップでした。長い間、この傾向は変わっていませんが、気になる点は、働きやすい環境づくりが喫緊の課題とも言える中で、「働き方改革の推進」(10%)が経営課題としては低い水準にあることです。20年1月(21%)と比べても半分となっています。

(3)6割がほとんど価格転嫁できない

では、仕入価格や水光熱費の上昇に対しどのくらい価格転嫁が出来ているのかを聞くと、「まったく転嫁できていない」(29%)、「1~2割程度」(33%)で、回答者の多くが価格転嫁の難しさを答えています。(表②)
価格転嫁の難しさに、どうやって対応(吸収)しているか聞いたところ、「人件費以外の販売管理費を下げる」(25%)、「調達品の利用を節約する」(24%)、「調達コスト(仕入れ)を下げる」(24%)と続きました。「役員報酬を下げる」と答えたのは15%ありました。もっとも多かったのは「その他」(27%)でしたが、「利益を減らす」というコメントが最も多く、「仕事自体を断る」、「利益の確保できる商品を売っていく」、「顧客を増やし売り上げをあげる」というコメントが寄せられました。

(4)経営指針の策定状況

経営指針の成文化について聞いたところ、経営理念は35%、経営方針は23%、経営計画は31%、10年ビジョンは15%でした。いずれも前回より成文化率がやや下がっています。回答者の会員歴と成文化状況を比べたところ、経営理念は入会1.5年未満では16%の成文化率でしたが、20.5年以上では59%でした。(表③)
経営計画については、1.5年未満は18%の成文化率で、20.5年以上は46%でした。比較的新しい入会の方の回答が成文化率を下げており、成文化には入会後時間がかかることをおさえておきましょう。

(5)賃上げ

賃上げ圧力が強まる中、「賃上げした」(52%)と答えた人は半数にのぼり、半年前(46%)と比べても6ポイント増えています。賃上げした方にアップ率を聞いたところ、「3~5%」(49%)、「1~2%」(33%)で80%を超える方が5%以内のアップ率でした。
今後、賃金を引き上げる余地はあるかを聞いたところ、「余地があり引き上げる」(11%)、「余地を作って引き上げる」(43%)、「余地はないが引き上げざるを得ない」(23%)と答えた一方、「余地はなく引き上げられない」(14%)との厳しい回答がありました。
最低賃金は1千円/h以上が取りざたされていますが、企業として必要と考えられる国の支援策(表④)は、「社会保険料負担の軽減」(63%)が断然トップで、「設備投資への支援」(27%)、「人材育成、教育への支援」(27%)と続きました。
賃金アップが国策ならば、黒字企業だけでなく収支が厳しい企業も活用できる政策が望まれます。「消費税の廃止」、「法人税の引き下げ」というコメントも多く寄せられました。

(6)金融機関への対応

資金繰りの状況DIは17を示しました。半年前より1ポイント下がり、3年半前と比べ17ポイント悪化しています。
新型コロナの実質無利子・無担保の融資の返済状況を聞いたところ、ほぼ問題がないと答えたのは54%で1年前より12ポイント下がり、問題があると答えたのは30%で6ポイント上昇しました。
国は、新型コロナ融資の返済が本格するのを受けて、信用保証協会によるコロナ借換保証制度をつくりました。これを「知っており活用したい」と答えたのは14%、「知らないが活用したい」と答えたのは22%ありました。
今回、金融機関の伴走型支援について、金融機関にどんな相談がしたいのかを聞きました。「企業マッチング」(27%)、「取引先の拡大」(25%)、「財務内容の改善」(23%)、「人材確保・育成」(20%)などが主なものでした。「特に相談したいことがない」(18%)もありました。(表⑤)
コメントでは、「融資だけでなく会社の状況を積極的に知って、有効な知恵を貸してほしい」、「企業同士の紹介や新規ビジネスのキッカケをつくってほしい」、「事業性評価の能力を高めてほしい」などの声が寄せられました。
金融問題については、金融機関の伴走型支援や経営者保証の説明の義務化など、環境が整備されつつあります。担当者に積極的に相談し、活用していきましょう。

世界各国はコロナ禍からの経済の回復をめざし、積極的に財政出動を行ってきましたが、物価上昇を抑えるため米国などでは、1年半前から金融引き締めに転じています。日本も金融引き締めの圧力が強まっており、金利上昇が気になるところです。
「限りない拡大成長」と「持続可能性」という二つの方向性がせめぎあう中で、世界経済の見通しは不透明で予測がつきにくくなっていますが、変化が進行中なのは間違いありません。その変化は、SDGsやGXへの要請など、いっそう社会的価値に重きをおいたものが含まれ、そこには中小企業の果たす役割が大きいとの指摘もあります。当面は価格転嫁(値上げ)を念頭に置きつつ、変化をチャンスととらえて挑んでいきたいものです。

(記:国広)