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2023.08.03

「夢と誇りのある地域づくりのために、中小企業ができること」備北支部設立総会 記念講演

報告者:宮﨑 由至 氏((株)宮﨑本店 会長 中小企業家同友会全国協議会 顧問/三重同友会)

広島同友会50周年事業の第一弾、備北支部設立総会・記念講演・祝賀会を6月30日に三次グランドホテルにて開催しました。警報が出るほどの悪天候でしたが、来賓27名、報告者の宮﨑さんご夫妻、広島同友会の9つの支部から47名、備北とオブザーバー34名の合計110名が参加。会場内では、経営や地域のことを話し合う輪が広がり、大いに盛り上がりました。特に興味深い報告をいただいた宮﨑さんの記念講演要旨を以下ご紹介します。

■同友会で何をどう学ぶか

今日は設立総会ということで、同友会で何をどう学ぶのかといった話をしたいと思います。

「同友会は弱みを見せた者が勝つ」という会です。私は他の経済団体でも役をしていますが、会議の時は鎧と兜を着ていかなければいけません。弱みを見せる事は出来ないので、仕事の話はできません。

ただ、同友会は鎧・兜を着ていると学びはありません。鎧・兜を着た人はすぐに見抜かれてしまいます。自分は今どんなことに困っているのかを発信する人は、講演やグループ討論で得るものが非常に多いです。

そして何を学ぶかは、聞いている人の受信能力が問われるという事です。自分は何を学びたいのか。その学び方を同友会で勉強するのが大切だと思います。

■大企業と中小企業の経営者の違いとは

大企業の経営者と中小企業の経営者では決定的に違う所があります。大企業の経営者には任期が決まっています。この社長が任期中最も大事にし、気にする指標はどんなものだと思いますか?

それは間違いなく「株価」です。自分の在任中に会社の株価が史上最高の高値を付ける。それが経営者の勲章となります。そのため、任期中に利益を出すために設備投資をせず、人件費を上げずにリストラをします。経費を下げる事で期間利益は上がります。そうなると次の経営者は災難です。設備の陳腐化・会社分断・組合との関係悪化。これが大手の失敗の典型です。

反対に中小企業の経営者には任期がありません。株価にもあまり頓着がありません。そのため後継者に、今自分が我慢して行った設備投資がどう生きるか考えるのが中小企業の経営者です。ですから、期間利益より未来への投資を考えられるかが求められます。株価よりも社員です。そういった意味では、中小企業の経営者は社会にとって、絶対に欠くべからざる存在ではないかと思います。

今厳しい状況だが先を見て設備投資をし、社員の給料を上げる。これができないと中小企業の会社は持ちません。このことから、中小企業の経営者が社会に貢献することの大切さが身をもってわかると思います。

■理念は顧客と共有できていますか?

皆さんの中にはこれから経営理念・経営指針を作っていく方がおられると思います。その中で企業変革支援プログラムというものを活用されると思います。このモチーフとなったのが日本経営品質賞です。

私も、この日本経営品質賞にチャレンジしたことがあります。審査員が会社に来て質問を社長以下に浴びせてきます。

まず質問されたのが経営理念についてです。この時私は、経営理念を作っておいてよかったと思いました。

しかし、予想だにしていなかったのはこの後でした。「では、その素晴らしい経営理念をどうやってお客様にお届けしていますか?」と聞かれました。

経営理念は社員と共有するものだと思い、今までそんなこと考えたこともありませんでした。

■経営者の決意

そして当時、すぐにミーティングを行いました。我が社の経営理念は「酒類・食品の製造販売を通じて社会貢献できる企業を目指す」です。この経営理念をお客様にお届けする方法を考えました。その時、1人の社員が、お金がかからず、大勢の人に届く方法を提案してくれました。それは、商品のラベルに経営理念を印刷する事でした。

社員達は拍手喝采でしたが、一部笑顔の無い人もいました。なぜなら、目指している会社になっていなかったからです。それを分かっていたのです。ですが、ラベルを発注しないと欠品になる為、経営理念をラベルに入れるのか、今選択してほしいと言われました。

そして、ラベルに経営理念を入れる事を決めた瞬間に、社会貢献できる企業を目指し始めました。それまでは、町内の清掃に参加したがる人はいませんでしたが、ラベルに印刷すると宣言した後の清掃には40人以上が参加しました。この時、日本経営品質賞の審査員がどうして顧客に浸透させないといけないと言っていたのか分かりました。

それは「決意」です。腹を括って、すると決める経営者の決意が顧客に伝わらないと、会社は変わらないこと見抜かれていたのです。

これは、同友会の経営指針づくりにも同じことが言えます。経営指針を作ることが目的化しています。できた瞬間に終わっています。実際は、出来てからが始まりです。そして、経営者が腹を括らないと経営指針は社員にも浸透しません。

■社員満足=顧客満足=社会的責任

経営指針づくり、日本経営品質賞を通して気付いたことがあります。社員満足と顧客満足と社会的責任はイコールになるということです。顧客が満足していることが社員の満足になるという状態が最高であり、そこまで目指す必要があります。お金や休みが社員にとって一番の満足になると思われるかもしれませんが、これには際限がありません。

我が社でも、会社に入って一番幸せを感じたことは何か、社員に調査しました。勿論、給料や休みの面もありました。しかし、お客様が自社の商品を最高と言って下さったのが一番幸せだという社員がいました。これが顧客満足=社員満足になります。

そして、このような社員が増える会社は絶対に成長します。会社が成長すると雇用が生まれます。これが社会的責任です。ですから、すべてがイコールになるのです。

■素晴らしき経営者であるために

先程にも、大企業の経営者と中小企業の経営者の違いを明確に示しました。私自身、大企業の経営者が羨ましいと思ったことが何度もあります。ですが、それは若いうちだけです。大企業の経営者は、会社を辞めると病気と手術の話しかしないのです。果たしてこれが本当の幸せなのでしょうか。

私は今、細々ながら会社を経営して、社会との関わりを未だに持っています。これは人生にとって最高の幸せだと思います。

ですから、会社をリタイアしても絶対に蛇口をしめてはいけません。社会との接点の蛇口を閉めると人生は終わってしまします。

同友会は異業種の集まりで、仕事の話ができる会は他にありません。仕事の話がいつでもできる環境があるのはとてもありがたい会だと思います。

最後に、企業を維持・発展させてきたものだけが許された最後の喜びを味わっていただけることを祈念して終わりたいと思います。

(記:事務局 中野)

㈱宮﨑本店 〈会社概要〉
【創業】1846年 【資本金】6750万円
【売上高】61.5億円(令和3年9月期)
【事業内容】酒類の製造 【社員数】74名