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2023.03.30

厳しさの中にも薄明りの兆し~変化に挑む アンケートに1227名が回答

私たち中小企業経営者は、人材の採用難という構造的な問題を抱えながらも経営を維持・発展させるために真摯な努力を重ねていますが、3年前には米中の貿易摩擦問題や消費税増税問題にコロナ禍が加わり、1年前からはロシアのウクライナ侵攻、原材料の高騰と入手難など、中小企業にとって厳しい情勢が続いています。
 一方でこうした情勢変化はDXやIot、SDGsへの対応を急がせ、価格転嫁など付加価値の高い経営への変化を求めています。
その変化に会員企業はどう対応しようとしているのか、何が経営発展の阻害をしているのか、そんな問題意識を持ちながら、政策委員会(宮﨑基委員長)は今年度第2回のアンケート調査を行い、1227名の会員から回答がありました。その概要を紹介します。

■業況は、やや改善も未だ水面下

経営状況を示す業況判断DIは-5で、半年前の-8、1年前の-14から少しずつ改善していますが、まだ水面下に沈んでいます。業種でみると(表)、卸・小売が-22で沈みが大きく、製造では-14、サービスが0、建設関連が11となっています。利益状況のDIも18で、少しずつ改善していますが、コロナ禍前の水準(39)からはかけ離れています。
今後、新型コロナが5類へ指定変更なり、経済活動の制約は少なくなり、会員企業の経営状況も改善の方向に向かうことが期待されます。

経営上の問題点(表②)のトップは、「仕入先からの値上げ要請」を回答者の32%があげました。半年前から2回連続です。どのくらい上がっているのか、1年前と比べ6%~20%上昇した割合が11ポイント増えており、上げ幅が大きくなっています。
2番目の問題は、「従業員の不足」(31.5%)です。人材不足の問題は景況の良し悪しに関わらず、いつも最上位に入る構造的な問題になっています。続いて、「人件費の増大」(25.1%)が3番目に入りました。
6番目に入った「エネルギー費の増大」(19%)は3年前に比べ6倍を示し、急上昇しています。

■6割がほとんど価格転嫁できない

では、仕入価格や水光熱費の上昇に対しどのくらい価格転嫁が出来ているのか(表)を聞くと、「まったく転嫁できていない」(33%)、「1~2割程度」(27%)で、回答者の多くが価格転嫁の難しさを答えています。コメントには、「値上げはできても受注量は大幅に減少」(卸・小売)、「何度も仕入れ価格の値上があるも転嫁がなかなかおいつかない」(製造)など、悩みの声が寄せられています。

価格転嫁の難しさに、どうやって対応(吸収)しているか聞いたところ、「人件費以外の販売管理費を下げる」(30%)、「調達品の利用を節約する」(24%)、「調達コスト(仕入れ)を下げる」(20%)と続きました。「役員報酬を下げる」と答えたのは16%で、「対応できることがなく、赤字を続ける」しかないと答えたのが10%ありました。

■人材の確保・定着と賃上げ

現在必要な人材が確保できているかという問いに、「不足気味」(51%)と答えたのは約半数でした。それに対し、人材の採用と定着のために取り組んでいることは、「有給取得推進や休暇制度などの働く環境の改善」(42%)、「賃金アップ」(40%)があげられました。

では、賃金は昨年に比べて上げたかどうか聞いたところ、「上げた」(43%)、「これから上げる」(14%)、合わせて6割近い方が「上げる」と答えています。
アップ率は、「3~5%」(44%)、「1~2%」(41%)で、5%までがほとんどです。

今後、賃金を引き上げる余地はあるか(表④)を聞いたところ、「余地があり引き上げる」(12%)、「余地を作って引き上げる」(39%)、「余地はないが引き上げざるを得ない」(21%)と答えた一方、「余地はなく引き上げられない」(14%)との厳しい回答がありました。
コメントには、「給与のベースアップをしたいが社保や福利厚生、人件費だけでなく間接的な経費の負担が増えるいっぽうで、社員の手取り額を考えると少々では効果がなく、経営上とても負担が増える。その分価格転嫁できればいいのだが、一気には増やせない」(建設関連)、「女性活躍を推進したいのに、給料を上げると仕事時間を減らさないといけないので130万の壁を撤廃してほしい」(サービス)、「働き方改革には問題が多い。多種多様な業態に一律に制限をかけるのは国力を弱くすると思う。もっと自由な働き方が認められるべき」(製造業)など、国の政策への声も数多く寄せられました。
最低賃金のさらなる引上げも検討されていますが、必要と考えられる国の支援策(表⑤)は、「社会保険料負担の軽減」(60%)が断然トップで、「設備投資への支援」(30%)、「人材育成、教育への支援」(29%)と続きました。賃金アップが国策ならば、黒字企業だけでなく収支が厳しい企業も活用できる政策が望まれます。

■迫るコロナ返済への対応

資金繰りの状況DIは17を示しました。前回よりも3ポイント悪化、3年前からは12ポイント下がっています。新型コロナの実質無利子・無担保の融資の返済状況を聞いたところ、ほぼ問題がないと答えたのは57%で半年前より9ポイント下がり、問題があると答えたのは30%で6ポイント上昇しました。
国は、新型コロナ融資の返済が本格するのを受けて、信用保証協会によるコロナ借換保証制度をつくりました。これを「知っており活用したい」と答えたのは13%、「知らないが活用したい」と答えたのは27%ありました。
金融問題については、金融機関の伴走型支援や経営者保証の説明の義務化など、環境が整備されつつあります。活用していきましょう。

■BCPやSDGsは少しずつ広がる

BCP(事業継続計画)の策定状況は、少しずつ広がっています。「策定済み」「策定中」としたのは16%、3年半前の8%から倍増しています。まだ「知らない」と答えたのも24%あります。
SDGsについて、「知っており経営指針に入れている」としたのは20%あり、3年半前(3%)より大幅に増えています。逆に「知らない」(13%)は、3年半前(62%)より大幅に減りました。

世界的に経済の見通しは不透明で予測がつきにくくなっていますが、変化が進行中なのは間違いありません。その変化は、SDGsやGXへの要請など、いっそう社会的価値に重きをおいたものが含まれ、そこには中小企業の果たす役割が大きいとの指摘もあります。当面は付加価値の向上(価格転嫁)に力点を置きつつ、変化をチャンスととらえて挑んでいきたいものです。

記:国広