「全社一丸の会社をつくろう~労使見解に学び、人を生かす経営をめざそう~」役員オリエンテーション 第4講
報告者:(株)オーザック 取締役副社長 岡崎 瑞穂 氏(副代表理事、福山支部)
(株)オーザックは、会長(夫)の父が1945年に岡崎製作所として創業、会長は大学卒業後、入社。私は結婚しても入社するつもりは無かったのですが、結婚後まもなく、「少し手伝ってくれる?」と言われ会社に出るようになりましたが、それ以来、ずっと働いています。同友会へは会長が90年に入会、私も同じ目線でいられるように女性部から本会へ入会し、いっしょに参加した例会では、どうオーザックで実践するか、食卓で遅くまでグループ討論の続きを行っていました。
■バブル崩壊と経営危機
岡崎製作所の時代は、3Kそのものの鉄工所で、社員の平均年齢が55歳を超え、若い社員の入社はありません。そこで一念発起、バブル景気に後押しされ、年商を超える投資で、新社屋、冷暖房完備の工場を建て、社名もオーザックに変更しました。しかし、程なくしてバブルが崩壊。売上が急激に下がり、1日に金利が9万円の借入金返済に追われ、経営危機を迎えます。当時、会長は福山支部長を務めていましたが、同友会の会合に参加した後に会社に戻り、見積もりの作成や事務処理など毎日午前2時くらいまで続ける日が続きました。
同友会で経営指針が必須と学び、呉支部の会員の指針書を丸写し、最初の指針書をつくりました。全社員に配付しましたが、1年後、回収した指針書は1度も開かなかったまっさらな指針書でした。それでも毎年、会社の教科書として経営指針は継続しました。
■ターニングポイント その1:中期経営計画
ある時、ある社員が上司に「この会社の将来が見えない」というっていることを会長が知り、中期経営計画の作成を進めます。10年後のオーザックの姿を具体的な数値を含め、示すものです。それに基づいて、各部署では単年度計画を立て、それをまとめたものが経営指針(単年度の方針・計画)となりました。また、この頃、業界のあたりまえに捕らわれず「製造業もサービス業」のスローガンのもと、顧客サービス向上に取り組みました。すると社員が主体的に改善活動を進めるなど社風が変わってきました。
■ターニングポイント その2:社員は家族
問題のある社員に対して上司が十分に指導できない状況がありました。会長がその上司に「なぜ、指導しないのか」と尋ねると「人間関係が壊れそうで言えない」といったそうです。「それなら、家族が同じことをしたらどうするか」と尋ねたら「家族なら叱ります」といったそうです。そこで、「社員は家族」だという方針を持ち、家族のように喜びは分かち合い、必要な厳しいことは言い合う、そんな社風をつくってきました。
■ターニングポイント その3:週休2日制
働きやすい職場づくりの一環で、週休2日制に取り組むことになりました。休日が増えることから約8%効率化が社員との約束でした。そのための計画を社員が作成しましたが、会長自身はこれでは上手くいかないと思ったそうです。案の定、1年後には5%程度しか効率化が進みませんでした。社員に対して、約束通り、次年度は週休2日をやめ、以前に戻すと伝えました。すると、社員は新たな計画を作成し、これで新年度も週休2日を継続して欲しいと言ってきました。会長はこの計画書を見て「これならできる」と思ったそうです。結果、12%効率化(付加価値の向上)ができました。
頭ごなしに社員を指導するのではなく、失敗が糧になるような信じて任せる経営者の覚悟が、社員を大きく成長させると思います。
■まとめ
社員は観客(顧客)の前で踊る役者、観客を感動させるのもさせないのも社員自身だ、と社員には話しています。社員満足なしには顧客満足は実現できないからです。そして経営者の役割は、社員が自分の持てる才能を精一杯発揮できる舞台の環境を整えることです。まずは公私混同をせず、社員と強い信頼関係を築き、会社の将来を共に描きながら、社員もお客様も地域もそして経営者も幸せになる企業づくりを進めていきたいと思います。
記:事務局 源田敏彦