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2022.12.21

基調講演 「新時代に立ち向かう企業づくり ~人を生かす経営の実践~」

報告者:(株)Honki 代表取締役 石川 朋之 氏(滋賀同友会副代表理事 大津支部長)

■同友会と私

 私が同友会に入会したのは2012年でした。しかし創業して2期目ということもあり、全く活動に参加していませんでした。ところが転機が訪れ、青年部から「地域を元気にしてほしい」と言われ、青年部幹事長を引き受けました。
 当時青年部には、45名在籍していました。しかし例会によく出席しているのは、15名程でした。幹事長に立候補する人もおらず勢いはありませんでした。そこで私は、幹事長として、①青年部会員100名を達成、②魅力ある例会づくり、③幹事長になりたい人を増やす、の3つの目標を掲げました。これら3つの目標達成のために何をしたらいいか考えた結果、琵琶湖100キロウォークをすることにしました。
参加したメンバー7名で、ゴールを目指しました。朝9時から歩き始め31時間かかりゴールすることができました。これまで共通の目的を持ったことがありませんでしたが、疑似体験を通して、青年部は初めて一つになることができました。滋賀同友会青年部が活性化するきっかけになりました。
 幹事長を2年務めた成果は5つあります。①100名会員の達成、②100名例会の達成、③組織の自立と自律。幹事の新メンバーが活躍しました。④自社の売上が2年連続で30%UP、⑤幹事長になりたいメンバーの増加です。幹事長を務めて、同友会運動を会社に活かし、会社で学んだことを同友会で活かすという、不離一体が大事であると感じました。下記の通り幹事長就任後、会社の業績が伸びていることが分かります。

■強い組織を作る

 同友会での一番の学びは「組織運営」です。それまでは、社内において各自好きなように行動したらいいのではと感じていました。当時滋賀青年部にも、組織の仕組みがなかったため、兵庫青年部に聞きにいきました。同友会ならではの、階層や恩送りの仕組みはとても素晴らしいと感じています。
 組織運営において一番大切なことは、組織の階層を守ることです。階層を守らないと支持・命令がうまくいかず、人が育ちません。全体を見渡せる部門から横ぐしで他の事業部の代表につなげ、部下に下りていく仕組みが必要です。
 我が社に筆頭となる人材である幹部の吉田が合流しました。彼は気にせず私に意見を述べるタイプでした。私は売上10億を目指していたため、役員会で売上が一〇億いく方法を話し合いました。その時彼から「社長がボトルネック(組織の成長阻害要因)だから厳しい」と意見が出ました。
 社員に「会社の課題」を書き出してもらい、因果関係をつないだ結果、社長が本来作るべきであった「仕組みが無い」「ルールがない」ことが挙げられました。この頃から「私がボトルネックなのかも」と考えるようになりました。組織の成長阻害要因を突き詰め改善したことで、会社は少しずつ良くなりました。

■コロナ禍の変化

 2020年1月下旬にドバイへ行きました。コロナ直前の時期で、不況の前兆を感じていました。マスク姿の中国人がおり、UAEで初めての感染者が出ました。
 会社の成長率を大事にされている(株)クニヨシの早間さん(広島同友会)や吉田との会話がきっかけで、自社は不況に弱いことに気が付きました。
 帰国してすぐに取り組んだことがあります。
①経営指針の再構築。景気が悪い時の経営指針書は作成していませんでした。売り上げが減少しても利益を出す体質は大切だと感じました。
②役員陣に危機感の共有。
③資金調達。万が一に備え、3000万円を確保しました。
④情報収集。各業界の情報を収集しました。
⑤安全の確保。社員の安全を守るためアルコール消毒液などを確保しました。
 4月中旬に緊急事態宣言が発令され、売上が80%減少しました。研修や採用がメイン事業だったため、大きな影響がありました。
 コロナ禍を乗り切るために3つのことを始めました。
 一つ目は、社員教育です。幹部社員に経営戦略やビジネスモデルの教育、一般社員にエクセルやパワーポイントの勉強をしてもらいました。
 二つ目にブランド力を高めました。ロゴや社章、パンフレットを新しくしたり無料の研修を開いたりするなどしました。仕事が少ない中、会社内で力を蓄えることに注力しました。
 三つ目は環境の変化に対応することを意識しました。オフィスの改装をしてオンライン室を作りました。オンライン研修事例を、新聞に取り上げていただいたことで、行政からお声がかかりました。この時期から仕事の依頼が増えてきました。

■コロナ禍の変革と挑戦

 社員全員で日々ビジネスモデルを模索した結果、コロナ禍で2つ新規事業を立ち上げることができました。
 一つ目が、65歳以上の高齢者向けのスマホ講習会です。日本の3000万人が六五歳以上でマーケットが広いことから需要がある事業です。
 二つ目が人材マッチング事業です。500円で希望の人材とマッチングするtorieという事業を開発しています。こちらは事業再構築補助金が通りました。
 コロナ禍でも前進し続け社内で力を蓄えた結果、10期4月に売上が80%減少しましたが、11期には回復しました。現在は国内でも海外事業でも業績が伸びており、12期には新規事業と海外事業が売上の半分以上を占める目算です。あらゆる手段を使い会社が大きく成長しました。

■自分の器と向き合う

 コロナ禍で会社が強くなった理由は3つあります。
 一つ目は、役員との信頼関係が強くなったことです。役員としっかり向き合いました。私の背中を守ってくれる社員がいて安心しています。現在では「会社にいなくていい」と役員から言われるほどです。
 二つ目は階層を守ることです。理由は上司の指示を聞かなくなるためです。私は社長の役割に徹することで、組織力が強まりました。
 三つ目は、自分自身(器)と向き合いました。部下に言われたことに腹が立ったり、喧嘩したりすることに「自分の器はなんて小さいのか」と悩んでいました。経営者の先輩に悩みを相談したところ「そう思う事が、今まさに自身の器を広げている瞬間だから心配ない」と言われ、社員に任せるようになりました。現在二名の役員と四名の若手幹部を中心に会社を動かしています。

■同友会を使い倒せ

 私は同友会を使い倒しています。元々幽霊会員でしたが青年部幹事長になり、組織運営や同友会活動と企業経営の不離一体を学びました。また、同友会を通して新聞記者など様々な方とつながりができました。
私は何のために同友会に所属しているかというと、自分の成長と会社の成長のためです。滋賀青年部や近畿圏の方々との関わりで今があります。
 同友会運動と企業経営は不離一体です。どんな状況でも歩みを止めないことが大切です。皆さんも是非同友会を使い倒してみてください。

【会社概要】
創業:2010年12月
年商:国内2億1500万円、海外5500万円
事業内容:国内~採用・研修・経営コンサル・デジタル活用支援、海外~飲食、輸出、オフショア開発
従業員数:50名
URL:https://honki.co.jp/

【経営理念】
~想いをカタチに~
私たちは事業を通じて、関わる全ての人々の「想いをカタチに」、豊かな社会づくりに貢献します。

(文責 事務局 大塚)