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2022.12.21

第4分科会 「未来と向き合わない会社に明日はなし! ~外部要因から逃げていませんか?~」

報告者:㈱ナカオカ 取締役  中岡 英也 氏(広島中支部)

■経営指針との出会い

 わが社は祖父が創業し、現在の社長は父です。社員数は14名になります。
 私は2013年に帰省しました。それまではIT関係を仕事にするサラリーマンでした。煌びやかな宝石の世界。将来は社長のポジションが約束され、社員に命令すれば給料がもらえると思い入社しました。
しかし、社内には時間外のコミュニケーションは無く、社員全員がアナログなのに社内研修もありませんでした。数字も芳しくありません。前職との違いに違和感があったものの、私にできたことは社内のデジタル化だけでした。
 入社して半年。経営指針に出会いました。父から「私の代わりに経営指針成文化セミナーに参加してくれないか」と頼まれました。当時は、社是と経営理念しかありませんでした。経営の勉強もしたかったし、父からの初めての頼まれごとでした。何より、祖父の会社を残したくて参加を引き受けました。

■世界が広がる

 経営指針成文化セミナーで最初に習った事はSWOT分析でした。そして初めて形にした経営指針は、みんなが褒めてくれました。しかし、会社は良くなりませんでした。
 2015年当時、同友会では中支部青年部会の幹事長をしていました。このとき初めて経営体験報告の機会をいただきました。自社では取締役に就任したばかりでした。抱えていた葛藤を報告すると「経営者ぶるのはまだ早い。もう少し丁稚として現場を見るべき」と叱咤いただきました。一方で「長男だから承継する気持ちを持って堂々と経営すればいい」という激励もいただきました。それだけではなく、高知県で魚屋さんを経営されている私と似た境遇の経営者を紹介くださった方がいました。
 これが大きな刺激となりました。広島に戻り、高知で得たヒントから自社製品としてカープアイテムを作ったり、ブランディング目的で金(ゴールド)に関するブログを始めました。
 しかし、数字は上向きません。つくった経営指針は放置し、惰性で同友会に参加するだけで、実践していなかったからです。わが社は、祖父の資産があったから金融機関が融資してくれる状態でした。会社は潰したくないし、土地を売ってでも社員を守りたいと思っていました。

■経営指針の大型見直し

 自分に強制力をかけてでも会社を良くしたくて、中支部の青年部会長に立候補しました。
 9支部の部会長が集まる機会があり、決算書や経営指針を見せ合いました。懇親会で「今の会社の強みが無くなったらどうするのか?」と問われました。経営指針を放置していることを見透かされてしまいました。
 2019年当時のわが社の強みは、立地・老舗・大手特約店でした。これではいけないと思い、初めて外部要因に目を向けました。5年前に始めたブログにヒントがたくさん見つかりました。
 私のブログは金に関する情報を掲載しています。私はブログを書くために、金の動きを通して、世界や業界の動向に注目できるようになっていました。外部要因のリスクとして、新型コロナ感染症の情報はすぐに取り入れました。また、アナログ業務の衰退と、米中貿易摩擦に目を向け情報を集めました。
 この3つを踏まえて、経営指針を見直しました。当時考えた取り組みは、ネット集客の強化、オンラインでも通用する販売力、粗利益の高い商品販売でした。スピード感を持って、営業分野のオンライン対応を強化していきました。

■アフターコロナによって

 経営指針を見直したことで、2019年と2020年は、粗利率が向上し、赤字から脱出できました。SWOT分析もできたし、取り組んだ事業も成功したと安心していました。
 そこにアフターコロナが近寄ってきていました。私のSWOT分析は2021年からの緊急事態宣言や蔓延防止の長期化といった、脅威が起きた後のことは見据えていませんでした。売上が下がり、黒字は長続きしませんでした。
 赤字転落の原因は、真似されやすい事業であったこと。そして、ライバルのIT化が進む中、ITに対応できる人材がほぼ私一人という、社内のマニュアルや技術面の準備不足が原因でした。2年前最先端だった事業は、油断した結果、誰でもできる事業になっていました。
 自信を挫かれ、へこんでいるとき、仲のいい先輩から決算書と経営指針を見せろと言われました。すると「これじゃあ赤字でも仕方ない。経営指針を運用しても数字が良くならないのは毎年見直していない証拠だ。見通しが甘い。もっと先を俯瞰して見ろ」とボコボコにされました。浮かれていた自分に気がつき、すごく悔しかったです。

■3つの視点と未来に向けた取り組み

 脅威の先の情勢を見据えるために経営指針の見直しを始めました。私の経営指針は、投資における考え方を取り入れています。それは、虫、魚、鳥の三つの視点です。虫の視点は現場目線。魚の目は管理職目線。鳥の目は経営者目線です。業界や世界の動きを三つの視点で俯瞰して、起きた後まで想定することが重要でした。私には鳥の目が足りていませんでした。新しい経営指針は、脅威に関しては起きたことを想定して、3年先まで見据えました。
 私の想定はインフレと円安のスパイラルをはじめ、明るいものではありません。その反面、インバウンドや海外事業の機会は増えると見込んでいます。
 最近参加したジュエリーの展示会で衝撃を受けました。ライブ販売専門エリアが登場していたのです。卸がオンラインを使い、海外のお客様に売りつけをしていたのです。業界の変化と技術革新を実体験したことで、時代の変化を捉えることにさらに敏感になりました。
 わが社のこれからの取り組みは、普遍価値商品の強化。海外のルート販売。中間コストを減らすための海外での仕入れ強化。金取引の事業拡大。富裕層向けのコミュニティサービスの開始が加わりました。
 情勢が変化した後のことも踏まえた経営指針ができたことで、経営は黒字で進んでいます。計画が順調に進めば、2年後の売上は2億5000万円を見込んでいます。

■切磋琢磨

 私は経営指針をつくったことがきっかけで、外部環境と向き合うことができました。そして、経営指針はブラッシュアップし続けないと、いつまで経っても飯が食える道具にならないことが分かりました。
 当たり前が無くなる時代がやってくると思っています。こんな時代に生きる経営者として、毎年、経営指針を見直すことは必須ではないでしょうか。私は、経営指針のブラッシュアップを通して、世界の情報にアンテナを立て続けていくつもりです。
 私の座右の銘は「継続は力なり」です。学生時代の経験から毎日コツコツと同じことを続けることが染みついているからです。それでも、経営が上手くいっているときほど、油断が生まれました。そういうときに真実の鏡となるのが、経営指針だと思っています。
 時代の変化は早く、経営指針の見直しは半年に一回は必要です。そして、仲間と切磋琢磨するなかで経営者として成長することの大事さを痛感しています。
 入会当初、人間関係を構築することが苦手でした。自己開示できずにいました。けど、自ら飛び込むと、指摘してくれる仲間ができました。経営の話ができる仲間に負けないように自らを磨き、未来と向き合っていくつもりです。

【会社概要】
創業:1946年3月
資本金:1,000万円
年商:1億5,000万円
事業内容:宝飾品・時計・眼鏡の販売/修理、資産用金地金売買、貴金属買取
https://nakaoka-inc.com/  
【経営理念】  
私達はお客様を生涯輝かせることで、豊かな人生づくりに貢献します  
私達は常に笑顔で時代に必要とされるサービスを提供し、元気と喜びを届けます  
私達は日々自己研鑽・自己成長に努め、地域社会に愛される存在になります  

(文責 事務局 井谷)