「中小企業振興基本条例って何?」 広島エリア政策委員会勉強会
報告者:広島県中小企業家同友会 国広 昌伸 氏
日時:10月28日(金)
会場:ひと・まちプラザ
参加者数:8名
広島エリア政策委員会の目標の重要項目の一つが「中小企業振興基本条例」の制定運動。「中小企業憲章」の地域版であり、今後の政策に関する勉強の軸になるものです。ところがあまりご存知の方はおいでにならないようです。そこで、まずは政策委員会の皆さんで、認識を一致させようと、勉強会を行いました。
講師役には、同友会事務局で永く政策委員会を担当してきた国広氏に依頼しました。以下、氏の報告ポイントです。
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もともと同友会全国協議会(中同協)は、中小企業が地域経済の担い手であるとの自覚をもって経営にのぞみ、経営発展を阻害し、自助努力が報われるような環境をつくるために、政策要望を行ってきた。
その活動が本格的になったのは、1997年の金融危機から。BIS規制適用強化により、貸し渋り、貸しはがし問題 担保・保証人問題(特に第三者保証)等が都銀を中心に起こる。同友会では、金融に関する勉強会行い、2000年からは、地域で集めたお金を地域(中小企業など)に貸し出しをしている金融機関を公表し、支店開設などを優遇する「金融アセスメント法」制定運動を展開し、全国100万署名(広島は62,777署名)を達成。また全国1000以上の地方議会で制定の意見書が採択された。国会でも大きく取り上げられ、鋤柄幹事長はNHKの日曜討論にも登場。結果として法はできなかったが、①リレーションシップバンキングの考え方に整理され(2003年)、②金融円滑化法が制定され(2009年)、③金融仲介機能のベンチマークができ(2016年)、④現在の金融機関の伴走型支援につながった。この動きをきっかけに、自分たちの要求を正しく行政等に伝える活動が本格化した。
2000年6月、EUで「ヨーロッパ小企業憲章」が採択されるなど、中小企業施策が世界的に広がった。そこで2004年の全国総会で、中小企業の存在意義をしっかりうたい、その持てる力が発揮できる環境をつくることを国に挙げての課題とする「中小企業憲章」制定運動が始まった。2010年6月、閣議決定された(https://www.chusho.meti.go.jp/hourei/download/kensho.pdf)。
「中小企業・小規模事業者振興基本条例」などの条例は憲章の地方版。現在、すべての都道府県(47)と632の市町村で制定されている。広島県は中小企業・小規模企業振興条例(2017年10月、全国45番目に制定)。市町では、廿日市市・東広島市・呉市・府中市・庄原市・世羅町・神石高原町・北広島町で条例が制定されている。広島同友会が関わって制定された条例として、廿日市産業振興基本条例(2016年4月)、呉市中小企業・小規模企業振興条例(2019年7月)、府中市中小企業・小規模企業振興基本条例(2022年3月)がある。制定がすすんだ背景には、1999年に改正された中小企業基本法と2015 年に制定された小規模企業基本法で、地方自治体独自の中小企業政策が求められるようになったことにある。条例の内容として、「条例の制定(特に前文)」、「円卓会議(産業振興会議)」、「調査」、の3点セットが特に重要だ。
どう活用するか、だが、まずは産業振興会議に中小企業の代表(同友会など)が入ること。中小企業の意見を出す場(出せる力が必要)があることだ。中小企業の発展を妨げるものは何か、どんな政策が中小企業の力を引き出すのかを明らかにする必要がある。
その上で、施策を立案し、実行させる(施策の実行を担う)こと。例えば、地産地消の実行やインターンシップの受入れ実行などが考えられる。
事例としては、製造業の悉皆調査を市の職員(700 人)が行い、データを血肉に(特に廃業調査)した東京都墨田区、官公需の中小企業発注の目標と状況を公開している横浜市、年1回の任意の懇談会が会議と位置付けられ、政策要望を出し、政策立案では意見を求められる広島県、コロナ政策で細やかな政策を展開 ヒアリングやアンケートで中小企業の声を聞く呉市などの事例がある。府中市では第1回の産業振興会議で外国人留学生の居住問題で、本来府中市に住民票がないと申請ができないが、配慮しようということになった。
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この後、永本・県政策委員会副委員長が、廿日市市の条例ができて、同社や地域の企業がどのように変化したのかの紹介がありました。
参加者からは「地域の事を考えることが、自社の発展につながることに気づかされた。自社の理念にも触れているのに実践していなかった」「経営者保証について交渉ができることを知り、有意義だった」「条例はあった方がよいのだろう。できるまで時間がかかるので、自分の後の世代に残すつもりで考えたい」「条例制定を成し遂げるには、仲間をたくさん作ることが必要だ」「中小企業の発展が地域の発展、という自覚を持つことが大切だ」「自分とどう関係が持てるのか、実感できるようにしなければ」「政策委員会は大変な仕事を担う委員会だと実感した」「行政にも地域の経済循環をきちんととらえている人がいるのを知った」「条例が、中小企業が地域で活躍していくためのものだとわかった」「どうせなら、地域の企業からモノを買うのが第一歩」「企業が困っていることから切り込んでいくのがよいと思う」「同友会が粘り強い活動を続けてきたからこそ今があると実感した」「今日をきっかけにして、やるべきことが見えた。仲間を増やしていこう」などの声が寄せられました。
文責:事務局 橋本