「厳しさに挑戦~価格転嫁が大きなカギ」アンケートに1287名が回答
世界を襲った新型コロナ感染症(コロナ禍)は2年半たってもまだ収束せず、米中貿易摩擦や消費税増税問題、円安、原材料の高騰や入手難、そしてロシアによるウクライナ侵攻問題など、新たな問題が次々に浮上、私たち中小企業経営に深刻な影響を及ぼしています。
また、Iotをはじめデジタル化への対応、SDGsやBCPなど、新しい課題にも取り組んでいかなくてはなりません。
政策委員会(宮﨑基委員長)は7月1日~20日にかけてアンケート調査を実施し、会員の経営状況をお聞かせいただきました。過去最高の1287名の会員の皆さんから回答がありました。その概要を紹介します。
■経営状況は水面下が続く
経営状況DIは△8で、いぜん水面下を続けており、三年前から29ポイント下がっています。ただし、前回(半年前)と比べては6ポイント改善しました。
業種別にみる(表①)と、製造業のDIは△19を示し、特に輸送機器(△45)、印刷(△40)、食品(△38)、機械器具(△22)の業況が下がっています。 建設業のDIが最も良い数値(+7)を示しました。総合工事業(+16)が良く、職別工事(△1)、設備工事(△14)となっています。 卸・小売業が最も低い数値(△25)を示しました。特に繊維(△43)、自動車(△31)、建築材料(△24)が悪くなっています。
サービス業のDIは△5で、士業など専門業が+27と最もよく、逆に自動車整備(△44)、飲食(△37)、運輸(△36)、リネン・理美容(△28)となっています。
一年後の経営状況は、情勢が色々変化しておりなかなか見通せませんが、DI値は+20を示しています。「経営を良くしていく」という決意の表れともとれ、同友会の会員の傾向を示しているとの指摘もあります。
■一番の問題点は仕入先からの値上要請
経営上の問題点(表②)のトップは「仕入先からの値上要請」(35%)で、急浮上しています。半年前と比べどのくらい上がっているのかを聞いたところ、「5%までの上昇」は15%(前回21%)だったものの、「6%~20%の上昇」が46%(前回39%)、「21%以上の上昇」は11%(前回7%)でした。 経営上の問題点の2位は「従業員の不足」(32%)、3位は「民間需要の停滞」(24%)が続きました。原油価格の高騰に関連し「エネルギー費の増大」は14%を示し、一年前(2%)の7倍になりました。
■調達難や価格高騰への対処はどうするか
原材料の調達難や価格高騰が「経営に深刻または大きな影響がある」と答えたのは38%でした。どうやって対処するのかを聞いたところ、過半数が「販売価格を上げ価格転嫁をはかる」(49%)と答えました。「調達コスト以外のコストを下げる」(18%)、「調達品を変える」(13%)と続きましたが、「対応できることはない」(12%)との答えもあり、気になるところです。 調達が難しくなっている原材料や部品は、木材、化学薬品、半導体(モーターや電子部品など)、設備、鋼材、機器、ステンレス、照明器具、給湯器、小麦など、輸入関連全般にわたってあげられました。
特に「半導体と部品とコネクタ部品の調達に対し、完全に海外に負けている」とし、「国策として対処していかないと設備製造にかかわる業界は壊滅する恐れがある」との指摘や「建築資材がほぼ毎月値上げの話が来て、見積もりが困難。中長期の工事予定が立たない」などの声が寄せられました。
■経営課題のトップは「人材の確保・育成・定着」
様々な問題がある中で、今後取り上げるべき経営課題のトップは「人材の確保・育成・定着」(61%)でした。長引くコロナ禍の中で、「事業規模の維持・拡大」(46%)、「新規事業の展開」(40%)を多くが回答しました。割合は低いのですが「広告宣伝の強化」(16%)が一年前と5ポイント高く、営業の姿勢が強くなっています。また、コロナ禍やウクライナ危機から「地域への貢献・つながり」を強化(14%)しようとしています。 人材を課題のトップにあげながら、「働き方改革の推進」(13%)は前回から2ポイント上がったものの、二年半前(21%)に比べれば大きく下がっているのが気になります。
■経営指針の策定状況
経営指針の成文化について聞いたところ、経営理念は40%、経営方針は24%、経営計画は30%、10年ビジョンは14%でした。いずれも前回より成文化率が下がっています。回答者の会員歴と成文化状況を比べたところ、経営理念は入会1.5年未満では21%の成文化率でしたが、20.5年以上では66%でした。経営計画については、1.5年未満は18%の成文化率で、20.5年以上は51%でした。比較的新しい入会の方の回答が成文化率を下げており、成文化には入会後時間がかかることをおさえておきましょう。
■資金繰りの状況
資金繰りは44%の方が「緩やか」と答え、23%が「厳しい」と答えています。
コロナ融資は、56%が受けています。その使い道は、「人件費」(23%)がトップで「原材料・商品仕入れ」(22%)が続き、「設備の修繕・更新」(9%)、「家賃・地代」(8%)など、多くは当面の運転資金に使われていますが、一部「設備投資・事業の拡張」(11%)、「販促費や広告費」(7%)など、前向きな資金に使われています。 コロナ融資の返済(表④)は、半数近い47%が「すでに始まっている」と答えています。返済や見通しに「予定通り問題がない」としたのは66%、「厳しい、リスケや借換えを検討している」は24%あり、政策的な支援の検討が必要となっています。 なお、今年9月まで延長されている雇用調整助成金の特例措置の今後の活用について、「活用する必要はない」(52%)が過半数を超えたものの、「活用したい」(20%)との声もありました。
■インボイス制度の対応など
来年10月に実施予定の消費税インボイス制度について、「分からない」(22%)が半年前と比べ19ポイント減り、逆に、自社に「問題がある」(22%)は10ポイント増え、「特に問題はない」(56%)は9ポイント増えました。
BCP(事業継続計画)を策定したのは8%で、「策定中・予定している」のは30%でした。SDGsについて、「知っており経営指針に入れている」のは16%となり、三年前の3%から大幅に増えました。
政策要望には273名からコメントがありました。「公共事業は地産地消を考えてもらいたい」、「消費税の減税・廃止を望む」、「地域の魅力を発信し、地域で働く若者が増えるような政策を」、「県の中小企業振興条例の意義を県民に広げてほしい」など、多数の声が寄せられました。
以上、問題山積の中小企業経営ですが、同友会の先達は「激動を良き共に」と呼びかけました。先手で経営課題に取り組み、全社一丸の経営を実践して、ピンチをチャンスに変えていきましょう。