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2022.08.23

「自社の未来は地域と共に ~地域の課題を解決する企業へ~」7月福山支部例会

報告者:㈱さくらトータルライフ 
代表取締役 堀 弘道 氏
(福岡同友会副代表理事)

■条例で町が変わる!?

福岡県田川市はかつて炭鉱の町として栄えました。しかし閉山後に人口が半減し、2015年の田川市の労働生産人口は約2万6千人、2045年には約1万7千人にまで減る見込みです。多くの都市でも高齢者が増え、労働生産人口が減少する傾向は同じです。大都市だからと言って決して安泰とは言えないのです。
この課題の解決には、若者が将来安心して働ける元気な企業づくりと生活者が安心して暮らせる元気な町づくりが必要です。その旗印になるのが、中小企業振興基本条例(以下、条例)なのです。
しかし条例が出来てもすぐに町は変わりません。田川市は2015年に条例を制定しました。そこから条例を基に何をやっていくのかを考える産業振興会議を設置しました。構成は産官学民金と多様なメンバーです。さらに、田川市では産業振興会議の中に実務者会議を設置し、田川市内の事業所全2104社にアンケートを行いました。
その結果の中で最も印象的だったのが事業継承です。田川市内の企業の内、実に72.3%が後継者未定か廃業予定と答えたのです。この調査結果をもとに、田川市の「中小企業振興ビジョン」の内容が決まりました。その方針は、①経営者の学ぶ場づくり、②ソーシャルビジネス(地域の課題整理や解決方針の推進等)、③プラットホーム(地域の御用聞き)、④キャリア教育の四つです。

■本当のキャリア教育とは

持続可能な地域には元気な中小企業が必要であり、企業が維持発展するためには元気な若者が必要です。元気な企業・若者を育てるキャリア教育が持続可能な地域を作ると気づき、学校にお願いをして、キャリア教育させてもらうことになりました。
私たちは子どもたちのために、経営理念や企業の存在意義を伝えようとしましたが、先生は自社の求人が目的になってしまっていることを見透かしていました。私たちはキャリア教育とは本当に子どもたちの将来を思ってするべきで、自社のために行うものでないと気づかされました。
そこで私たちは経営指針書の作り方なら教えられると、市内の3つの高校で生徒に架空の会社の経営指針書を作ってもらうことにしました。経営指針発表までの期間は2カ月。まずは田川市の課題を教えることからスタートしました。
当初、生徒の反応は芳しくありませんでした。ところが途中で他校の発表を聞くと、お互いが刺激を受け、やる気が芽生えました。2カ月後、彼らは経営者が驚くほど立派な経営指針書を発表しました。伝える側がきちんと内容を伝えると、高校生は主体的になって指針書を完成させる力を持っていたのです。
主体性の重要性は条例も一緒です。「条例が出来たら田川市は何をしてくれるのか?」。そんな質問が第1回目の会議で出ました。条例が出来たら誰かが何かをしてくれるのではなく、私たちが主体性を持って、どう町を維持発展していくのか考えることが大切なのです。

■地域の課題を解決する企業

地域の人に「あそこの会社から買いたい」「あの中小企業はなくしてはいけない」と思ってもらうためには、地域の課題を自社の課題ととらえることです。それを経営指針書に盛り込み、地域の課題を解決する企業になるのです。
地域に一生懸命になっている企業は地域が応援してくれます。地域の困りごとを解決する企業が地域にあることで、生活者の暮らしは便利になり、災害時やコロナ禍でも持続可能な町になります。
条例と聞くと堅苦しく思うかもしれませんが、条例とは地域を牽引する企業づくりであり、持続可能な町づくりであり、同友会づくりなのです。