活動レポート
  • ホーム
  • >活動
  • >自主・民主の精神でECOな まちづくりに挑むニセコ町を視察 ~県環境経営委員会~
2022.07.22

自主・民主の精神でECOな まちづくりに挑むニセコ町を視察 ~県環境経営委員会~

 6月23日~24日、県環境経営委員会は北海道のニセコ町を視察し、同町のまちづくりに深く関わっている、環境ジャーナリストの村上敦氏に詳しくお話を伺いました。  

■SDGs未来都市

 この視察を企画したのは、同町がSDGs未来都市、中でも先導的な10事業がえらばれる「自治体SDGsモデル事業」に指定されている事と、村上氏が深く関わっている事。村上氏は、中同協の欧州視察にも参画したほか、岩手同友会の取り組みにも助言者的な関与をされています。
 梅雨なのに晴天の広島を出発すると、梅雨のないはずの北海道は雨。ニセコ町のシンボルともいうべき羊蹄山の姿が2日間とも見えないのは残念でしたが、充実した視察になりました。  

■まちづくりの背景

 ニセコ町は高品質な雪(パウダースノー)に注目が集まり、特に海外の方に高い支持を得ています。そのため、山側で外資による大規模な開発が行われ、土地価格が高騰。ニセコ町で働く町民がニセコ町に住めないという問題に直面しています。
 そこで、町は住宅難民となっている町民のために、新しい街区の計画を始めました。当初厳しいと想像されていた町民の反応ですが、雪かきの不要な集合住宅のある新しい街区に興味を持っているとのことです。  

■断熱性の高い新庁舎

 まず、昨年完成した新庁舎を見学しました。この建物には、点在していた役場や公共施設が集約されています。そのため面積が増えましたが、高い断熱性能を有するため、エネルギー消費量は押さえられています。
 庁舎内を見学して驚いたのは、どの部屋もガラス張りである事。どんな会議も市民が予約なしで見学が可能です。議会の委員会室も、市民が会合等に使うことが可能になっています。  

■有島武郎の遺産

 ニセコ町では、決定事項の共有とあわせて、プロセスの共有が大事にされています。こうした風土は大正時代に活躍した文学者・有島武郎の遺産ともいわれています。
 有島武郎は富裕な両親の遺産(ニセコ町の有島農場)を引き継ぎますが、小作人に農地を開放。さらに、相互扶助を掲げた地域運営を試みます。こうした取り組みが、地域風土として残っています。
 そのため市や村上氏が取締役を務める㈱ニセコまちなどが行う住民説明会では、構想段階からの情報公開が強く求められるのです。  

■ワークショップで

 さて、㈱ニセコまちは、役場と民間が出資した、新しい額をつくるための会社です。関係者は全員取締役で、社員はいません。様々な方がボランティアとして関わっています。
 同社の事務所は運動公園管理等の二階。当初は夏暑く冬寒いものだったそうですが、徹底した断熱改修を行っています。この工事は、実はワークショップとボランティアによるもの。多くの市民がワークショップに参加することで、どういう改修を行えば断熱ができるか、理解を広げる場になっているとのこと。説明の画像には、小さなお子さんの楽しそうな姿もあり、印象的でした。  

■説明と合意で自治を

 その他にもユニークな取り組みを伺いました。
 例えば、社員寮としてつかう集合住宅づくり。空調機を廊下に置き、そこから各室の空調を行います。建物全体のエネルギー管理を行うHEMS(House Energy Mana-gement System)の考え方による実験です。新しい街区の住民には、詳しい説明と合意を作っていくということです。日本で最初に「住民自治基本条例」ができた町・ニセコから、多くの学びを得た視察となりました。