「景況は一進一退、仕入価格の高騰に価格転嫁できるか!?」アンケートに1104名が回答
コロナ禍で大きく落ち込んだ経済活動は一進一退を繰り返しています。今年1月にはオミクロン株が急拡大、広島県は1月9日から蔓延防止措置に入り、人の動きが制限されました。また、石油製品を始めとする原材料の高騰や半導体などの入手難は新たな経営問題となって、私たち中小企業に深刻な影響を及ぼしています。
県政策委員会(委員長 宮﨑基氏)は、1月11日~31日にかけてアンケート調査を実施しました。過去最高の1104名の会員の皆さんから回答がありました。その概要を紹介します。
(※DI=傾向をみる数値。DIが100に近づくほど良い(上昇)、△100に近づくほど悪い(下落)ことを意味する)
■業況は再び落ち込む
経営状況のDIは△14を示し、1年前の△20よりは改善してはいるものの、半年前の△9から再び落ち込んでいます。建設業界(+8)は水面上にあるものの、他の業界は水面下にあり、特に製造業は△32を示しています。(表①)
現在の経常利益状況のDIは+14で4年前の+41と比べれば大きく下がっています。やや黒字の企業が多いですが、役員報酬や賃金などをおさえて黒字にしている企業もあるようです。
■「仕入先からの値上げ要請」が急浮上
経営上の問題点(表②)のトップは「従業員の不足」(33%)となりました。「民間需要の停滞」(24%)をおさえて2年ぶりの第一位です。「研修生が入国できず、仕事がまわらない」、「人材不足で新しい分野への参画が進まない」、「現場管理者がおらず新しい仕事を断った」など、人の問題で苦悩する声が多数寄せられました。
また、「仕入先からの値上げ要請」(27%)が問題点の第2位に入りました。2年前は9%でしたから、3倍に急浮上しています。「イクラ、ウニ、カニが高騰、品薄状態にもなっている」、「急に仕入れ先の担当者が東京から来社、30%の値上説明があった(建築関連業)」、などの声も寄せられています。製品や部品の入手が難しくなっている分野もあり、「納期遅れで売上がたたず、資金不足になっている」、「新工場の着工のめどが立たない」など、悩みはつきません。
■価格転嫁が難しい
仕入価格がどの程度上がっているかというと、5%までの上昇は2割強でしたが、それ以上上昇したのは半数近くになりました。ロシアのウクライナ侵攻による影響で、原材料はさらに上げると見込まれます。
「価格転嫁した」(23%)のは1/4足らずで、「価格転嫁は難しい」(26%)と答えた方が1/4強おられます(表③)。「顧客に値上げをどう理解してもらうか」、「新しい商品は理解が得られやすいが、リピート品への転嫁が難しい」など、価格改定(値上げ)が大きな経営課題となっています。
■来年10月に迫るインボイスへの対応
インボイス制度の「内容を知らない」と答えた企業が3割あり、「どちらとも言えない」を加えれば半数近くが良く分かっていないことが分かりました(表④)。また、インボイス制度の実施について自社にとって「問題がある」(12%)、「分からない」(41%)と答えており、説明会など、知らせるための活動が必要です。
声として「特に問題はないがシステム改修費用の負担が発生」、「多数の農業生産者が納税しているか不明」、「膨大な得意先をどう管理するか」、「高齢の業者の理解が得られるか?」など、制度の問題や混乱の可能性などの指摘がありました。
■コロナ禍を受けての新分野、新事業展開
「取り組んでいる」(32%)、「現在検討中」(25%)と2/3の会員が新分野や新事業への展開を進めていると答えています(表⑤)。多くはデジタル化で、「IOTで見える化」、「クラウドの活用で社内プラットフォームの導入」、「社員全員にIパッドを持たせ、在宅勤務を可能にした」、「生産管理システムをリモート化」といったコメントがあり、IT活用補助金や事業再構築補助金の活用の事例も多数寄せられました。
製造業では「フードロスゼロの6次産業化に挑戦」とか「モノづくりにコトづくり思考を加える」、建設業関連ではドローンの活用事例が多数寄せられました。また、「女性の活用で事業計画をつくる」、「パートさんを活用するために短時間正社員制度をつくった」など、働く環境整備もあげられました。
■政策に寄せられた声
広島県や市町などへたくさんの要望が寄せられました。「中小・零細企業に寄り添ってほしい。一緒に考えてほしい」、「中小企業は地域を支える欠くことのできない存在という認識にたってほしい」など行政姿勢に対する要望や、地域づくり、働く環境づくり、税制や金融支援などです。
最後に、こんな施策が地方都市で試みられたらいいなという声を紹介します。
・市内企業の悉皆調査を行い、データベースをつくり政策に反映させる ・子供たちに、地元の企業・商店を知ってもらう。小学高学年・中学生に、年五社以上職場体験の実施。積極的な大学生のインターシップの推進。
・市民の理解 特にお母さんに、地元の企業・商店・一次産業の現場を見て頂きたい。
・エネルギーシフト 資源の地域循環と地産地消 自然資源・地域資源で再生エネルギーを生み出すことで、自給率を高め新しい雇用をつくる。
・生活基盤・環境保全・防災重視の「地域密着型公共事業」を推進して、地元企業の仕事をつくる。
・地元企業イコール 地域のインフラと捉え、BCP作成の推進と助成で、市全体で防災を考えていく。
・市民の皆さんが、「10年後の・・市を考える」学習会の開催 啓蒙活動の推進。