「共に生きる地域づくりフォーラム2022 ~特別支援学校卒業生、頑張っています」県障害者問題委員会
■映クラ㈱ 代表取締役 山西健三氏
障害者雇用は全体で11名、特別支援学校からは3名採用しています。
中古車販売の店舗で働くO君は2015年に入社しました、現在は洗車や車内の清掃、在庫車の管理等をしています。勤務している店舗は業務の性質上、売上の結果が営業成績として判断されるのですが、彼の仕事は売上に直結しません。店舗の社員と面談すると、「O君のおかげで自分たちは販売が出来ている。もっとO君を評価してほしい」と言われました。そこから数字として見えない評価がその店舗に生まれました。現在O君は自動車の運転免許も取り、さらに活躍してくれています。
ベーカリーに勤める入社2年目のK君は、些細なことでイライラしていました。実は入社当初は店舗側の受入体制が万全ではなく、K君も周りの社員も我慢がたまっていました。そこでパンの製造の他に掃除や製造の環境整備など、すぐに結果が見える仕事を任せるようにしました。すると本人も達成感が味わえるようになり、同時に周囲も彼に感謝を伝えるようになりました。
私自身、障害者雇用を経験して「障害者雇用」という考えにとらわれるのではなく、働くみんなが役に立てている、成長できていると実感できる会社を作っていきたいと思うようになりました。
■日鐵鋼業㈱ 代表取締役 能登伸一氏
現在、福山北特別支援学校から新卒で入社した5年目のK君が働いています。採用のきっかけになったのは、特別支援学校の先生を対象にした企業訪問バスツアーです。当社は大きな鉄を切ったり運んだりする危険な仕事なので、採用はできないと思っていました。ところがバスツアー後に職場実習を受入れることになり、高等部の生徒がやって来ました。K君が入社する前に働いていたH君です。彼が真夏の工場で一生懸命に作業をする様子を見て、私も社員も考え方が変わり採用を決めました。ところが彼は集中力が持続しない傾向があり、試行錯誤をしながら仕事づくりをしたものの、残念ながら1年で退社となってしまいました。
現在働いているK君は、実習の最終日に「僕はこの会社で頑張れますか?」と私に聞きました。そのまっすぐな言葉に心を打たれ、彼の採用を決めました。H君の退社後でしたが、社員も誰も反対しませんでした。それは一人目のH君の入社で私たちの考えが変わり、営業と製造の見えない壁がなくなるなど会社の変化があったからかもしれません。二人の素直で純粋な姿勢が社内に温かい風を吹かせてくれました。大変だったこともありますが、彼らの採用を通じ会社に一体感が生まれたと実感しています。
■㈲大下木型製作所 代表取締役 大下真司氏
福山北特別支援学校を卒業した社員1名が働いています。自社は木材や発泡スチロールで鋳物の型を作っているのですが、M君は木型をヤスリで磨いたり、ニスを塗ったりする仕上げ作業から始め、入社六年目となる今では、簡単な製品であれば自分で作れるようになりました。 元々、M君はプラモデルを作るのが好きで、自社を就職先に選んだのも「物づくりがしたい」という理由からでした。もう立派な木型職人の道を歩んでくれています。M君があまりにも優秀なので、他の社員は彼が特別支援学校卒業であることを忘れ、仕事のお願いが集中してしまうこともあります。 実はM君の前にも同じ支援学校から採用した社員が働いていました。明確な理由がわからないまま退社してしまいましたが、彼がコツコツと仕事に打ち込む様子を見て、私たちが持っていた「障害者」のイメージが変わりました。この経験がM君の採用につながっています。
採用にあたり、社内の理解や準備が整ってからとよく言われますが、まずは挑戦してみることが大切だと思います。