「コロナ禍でいかに中小企業は生き残るべきか」広島安佐支部2月オープン例会
講師 経済評論家 三橋 貴明 氏
京都大学大学院教授 藤井 聡 氏
2月18日(金)、広島安佐支部2月オープン例会が、経済評論家 三橋貴明氏と京都大学大学院教授 藤井 聡氏を講師に開催されました。以下にその要旨をご紹介します。
■消極的な財政・金融政策
新型コロナウイルスに端を発した経済活動の停止により、日本経済は再び不況に陥っています。未曽有の経済的危機を迎えた日本政府は、新型コロナウイルス蔓延防止のため飲食店や宿泊業などの停止、やむなく休業をした企業には給付金の交付などいくつかの対策を講じてきました。しかし、いずれも充分な対応ではない中途半端なものになっています。休業補償は経営を持続させるほど充分なものではなく、また経済活動の停止は部分的なものであるため、感染者数を抑えることもままならない状況です。
こうした不況時には積極的な財政政策によって景気回復を図るのが経済政策のセオリーですが、現在では給付金をはじめとした政府支出は抑制されています。
このように財政政策が消極的にしか行われなかった背景には財政危機論があります。政府は巨額の借金を抱えており、これ以上赤字を重ねることは財政破綻に繋がる。したがって、政府支出を抑制し、増税などで財政赤字の抑制に努めなければいけないという考えです。しかし、この考えには大きな誤解があります。
■日本人の九割が誤解?!
私は日本人の9割が貨幣についての大きな誤解を二つ持っていると思います。一つ目は、貨幣が有限であるという誤解です。民間の銀行は個人や法人から預けられたお金を運用していると多くの人が考えていますが、そうではなく貨幣は信用創造により生み出されています。銀行預金は単に銀行が貸し出すことで創出されています。この仕組みを踏まえると、国債(国庫債券)はそもそも日本国民が背負っている借金ではありませんし、債務不履行になることも理論上ありえません。 二つ目の誤解は、国債を発行すると金利が急騰するという誤解です。しかし、これも誤りで1970年当時の日本政府の国債債務残高が約7兆円だったのに対し、2020年では約1200兆円を超えました。それにも関わらず、国債金利はゼロ%。国債を日本銀行が買い取っている以上、金利急騰などありえません。
■中小企業はどう生き残る
今後ますます厳しくなっていく外部環境の中で中小企業はどう生き残っていくべきなのか。その答えの一つは「中小企業が一致団結して声をあげていくこと」にあると思います。近年では、「生産性が低い中小企業を再編し、生産性を向上させるべきだ」という言説を耳にするようになりました。しかし、政府はそもそも中小企業の生産性に関しての根本的な問題に目を向けなければいけません。それは中小企業の生産性の低さは投資不足に依拠しているという点です。十分な設備投資なしに、生産性の向上はありえないという認識を持っていなければ、中小企業の再編を行ってもこれ以上の生産性の向上は見込めないでしょう。
そして中小企業経営者の皆様にはこうした現状の政策に対して集団となって声をあげて異を唱えていかなければいけません。
【講師紹介】
三橋 貴明氏…東京都立大学経済学部卒業。外資系IT企業、NEC、日本IBMなどを経て、2008年に中小企業診断士として独立。三橋貴明診断士事務所を設立。
藤井 聡氏…京都大学卒業後、同大学助教授、スウェーデンイエテボリ大学心理学科客員研究員、東京工業大学教授等を経て現職。