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2022.03.16

「どうなる!?二〇二二年 ~新年の幕開けに情勢を学ぶ~」福山支部新春講演会

講師 ㈲第一コンサルティングオブビジネス  代表取締役  丸山 博 氏

 今年は中小企業にとって危機と転換の時代になりそうです。危機は脱却しなければ危機のままですが、脱却の手立てを取った人にとっては数十年に一度の転換のチャンスとなるかもしれません。まさに経営者の生き様が問われる年です。ただ、小手先の努力や工夫だけでは対応しきれなくなっていることには注意が必要です。
 今、半導体不足による製品の供給不足のほか、原油や鉄、アルミなど原材料の価格高騰に伴う製品の値上がりが起きています。しかし価格高騰の原因は原材料高だけではありません。投機もその要因です。値上がりを期待して投機が行われ、実需以上に価格が上昇しているのです。これはコロナで設備投資に行かなかったお金が行き場を失い、投機に回った結果です。経済対策として世に出たはずのお金が投機資金に回るという皮肉な結果となってしまいました。
 このように景気停滞と悪い物価高が同時に起こることをスタグフレーションと言います。これはコロナの後遺症の一つです。さらに今後は、V字回復と業績悪化の企業の二極化が進むK字経済の状態になると予想されています。格差拡大の更なる進行です。
 スタグフレーションや格差拡大は不安や不信の時代でもあります。「自分たちは頑張っているのに格差は拡大している」。今の社会にはこんな思いが蔓延しています。そんな不安不信の時代の中、人々が求めるのは安心・安全であり、心のつながりです。これはお客様も同様です。実はコロナ以前から安心安全・信用信頼のニーズは高まっていました。企業はその対策を真剣に考え、経営方針に反映する時です。

 ■新常態は始まっている!

 これからは「withコロナ」から「with感染症」へと変わっていきます。新常態(ニューノーマル)への移行は既に始まり、コロナによって加速された新しい取り組みやビジネスが生まれています。その代表例が「DX」と「GX」です。DXとはデジタルトランスフォーメーション)、GXとはグリーントランスフォーメーション(グリーン成長戦略)です。
 先日、トヨタ自動車が車載OS「アリーン」の開発を進めると発表しました。エンジンの開発競争からプラットホーム開発へのシフトです。これで運転しながら宅配サービスを頼んだり、家のエアコンを操作できたりする時代が近づいてきました。
 このシステムはコロナにより一気に開発が進みました。ウーバーイーツやウォルトなどのシェアビジネスも同様です。コロナ禍で配達料が本体価格より高くても商品をオーダーする人が増えました。
 いい機械や車を買っても入手した瞬間から価値が下がります。現代の消費者はこの減価償却型からアップデート型へと志向が変化しています。アップデート型とは本体(ハコ)が多少安くてもソフトウェアが毎回更新されて、最新の物がいつでも使える仕様です。現代の若者の多くは良い本体にあまり魅力を感じていません。新車購入よりもレンタルを選んでいるのがその代表例です。
 「まさか」と思っていたことが現実になる時代です。こういう環境に取り残されてはいけません。インフラの開発は大手に任せ、中小企業はそれを上手く活用していきましょう。
 一方のGXのポイントは排出権です。CO2の排出権を売買するマーケットが今後誕生します。おそらく数年後には私たちにもCO2排出の税金が課せられるでしょう。これを払いたくなければ、CO2を回収している所から排出権の購入が必要です。アメリカでは既にCO2を回収している大農場から排出権を買う動きが始まっています。DXとGXを使いこなすと、思いも寄らなかった新しいビジネスが生まれるかもしれません。

■お客様の本当のニーズ

 コロナで我慢が続いていますが、もうちょっとしたら何とか?…なりません!この状態が普通の状態になります。
 では、危機と転換の時代に私たちはどう立ち向かっていくのでしょうか。企業はまず原点(本質)に立ち返ってみましょう。自社が提供していた価値が世の中で認められなくなり、赤字になった企業は新たな価値を創造しなければいけません。コロナを経験した今はそのチャンスです。
 広島の皆さんもこれまで相当な努力をされてきたとは思いますが、これからは高収益企業を作る時代です。今のように経済が縮む時に差がつきます。差がつくと今度は集中が起き、「超」がつくほどの特色がある企業に仕事が集中します。今こそお客様のかゆいところに手が届き、シェアを伸ばしていきましょう。
 ここで問題です。あなたがホームセンターの店員だったら、お客様に「電動ドリルはありますか?」と聞かれたら、どう答えるでしょうか?
 ベストな回答は「はい、ございます。どんなことに使われますか」です。お客様は単に電動ドリルが欲しいのではなく、穴を空ける作業をしたいのです。中小企業はつい物に目が行きがちですが、お客様が求める本当の用途にフォーカスすることが大切です。あなたの会社ではお客様の本当のニーズを把握しているでしょうか。デジタルを活用し、お客様の本当のニーズを把握し、提案していく。対応力ではまだまだ中小企業も勝負が可能です。  

■今年は世界が動く年

 今年は韓国やフランス、フィリピンやブラジルの大統領選挙、中国共産党全国代表大会、アメリカ中間選挙と世界中で選挙が続きます。米中対立を軸とした冷戦は経済の対立だけでなく、デジタルを使った軍事開発競争にも及んでいます。
 インフレが進行しているアメリカではFRBが金利をアップする方針を出しています。この影響がどう出るかがまだ読めず、もしかしたら経済停滞や新興国に直撃するかもしれません。アメリカ国内の失業率の上昇、海外では新興国の通貨安につながる可能性が考えられています。
 米中対立から発生したデカップリング(分離)は、政治と経済の2つの対立と世界のブロック経済圏構築に向けた動きへとつながっています。歴史的に見てもこの動きで世界が良くなったことがなく、私たちの苦い教訓となっています。今後の動向には注視が必要です。
 日本も7月に参議院選挙を、5月には沖縄返還50周年を迎えます。また、岸田総理は、分配を中心とした新しい資本主義の方針を打ち立てました。この方針がどう国内外に影響し、参議院選挙にも影響するのかが今年のトピックの一つだと思います。  

■激動をよき友に

 ポスト・コロナは人材獲得競争の時代です。若い人には上司の自己流と言ったマンツーマンではなく、マニュアル等を使って徹底した「標準」での教育をしていきましょう。そこに同友会の「自主」「民主」「連帯」の精神を自社の運営方針として貫いていくのです。そして社員同士で優れているところ、良いところを認め合う風土を会社に作ることが必要です。出来ていないところを指摘することは簡単ですが、人は違いを認め合うからこそ連帯していけます。まず経営者が同友会で学び、自主・民主・連帯の風土を作っていきましょう。
 社員が辞めない会社にするには、会社の聴く力も必要です。コミュニケーションの量と質のアップは中小企業がすぐに取り組めることです。コミュニケーションは伝わってこそ意味があります。「伝わる」とは、社員がちゃんと言われたことをイメージ出来ると言うことです。今は危機とチャンスの時代です。経営者が考えている事を社員が納得できるくらいに伝えられるかどうかが本当に重要になってきます。伝えたつもり、が一番危険です。
 同友会では言葉だけでは伝わりにくいからこそ、数字や経営指針、マニュアルで伝えていこうと長年言い続けています。同友会ではコロナの変化に対応しながら指針を作り、コミュニケーションを取ってきた企業がたくさんあります。同友会の会員企業は他の企業に比べて、コロナの対応力が高かったと実感しています。コロナ時代だからこそ徹底的に考え抜き、経営指針を作り、社員と共有していきましょう。