経営課題アンケートに972人から回答 「コロナ禍の収束は見えず ~新たに原材料の高騰問題」
県政策委員会(宮崎基委員長)は、7月1日から20日にかけて、今年度第1回のアンケート調査を実施、過去最高の972名の皆さんから回答がありました。長期化するコロナ禍と原材料高騰の中で、環境変化に対応し挑戦する皆さんの様子を紹介します。
(※DI=傾向をみるための数値。DIが100に近づくほど良い(上昇)、-100に近づくほど悪い(下落)ことを意味する)
1)改善するも厳しい状況が続く
会員の皆さんの業況判断DIは-9で、半年前より11ポイント改善しているのですが、二年前のコロナ禍以前と比べれば30ポイント下がっており、悪い状況が続いています。業種別(表①)にDIをみると、製造業が-23で一番厳しく、卸・小売業-16、サービス業-4と続き、逆に建設業は+7を示しました。
さらに細かく業種を分けると、製造業の中では印刷が-50、輸送機器が-42と落ち込みが目立っています。建設は総合工事が+20で、職別工事-13、設備工事-22と続きました。卸小売りでは、繊維-67、機器-56、食品-19となりました。サービスでは、飲食・宿泊の落ち込みが-76と大きかったのですが、士業などの専門業は+37を示しました。また、情報産業は+34、不動産は+5となっており、同じ業種の中でも大きな差が出ていることが分かります。
コロナ禍の緊急施策が終わろうとしていますが、まだまだそういう状況にはありません。
2)原材料の高騰問題が新たに浮上
経営上の問題点は、民間需要の停滞が最も高く(29%)、従業員の不足(28%)、同業者間の価格競争の激化(23%)と続きました。経営課題(表②)でも、人材の問題(確保・育成・定着)がトップ(58%)になっています。コロナ禍での3回の調査で同じ傾向を示しており、中小企業の人材難は構造的な問題になっています。
経営課題の2番目にあげられたのは事業規模の維持・拡大(46%)で、3番目は新規事業の展開(42%)です。いずれもコロナ禍以前からじわりと上がっており、事業の深堀をはじめIT化への対応や新分野への挑戦、事業承継など、様々な課題への対応に迫られています。
また、原材料の高騰問題が新たに浮上しました。仕入れ(購入)価格が高くなっていると答えた会員は49%、過半数にのぼり、コメントでは「半導体の不足、ウッドショックなどによって仕事ができない」、「鉄鋼が納期通り入らない上に相当値上がりしている」、「マグロ、イセエビなど高級食材が中国などに競り負けて入る。今年のお節が心配」など、悲鳴のような声が多数寄せられました。
労働集約関連の会員からは、「働き方改革で労働時間が短くなる中、顧客への対応や売上維持が難しくなっており、また人の採用も難しいのにどう生産性を上げていけばいいのか」と苦悩の声もありました。
3)新しいことに三割近く挑戦中
コロナ禍の中、「新しい分野や業態、商品、市場などへの取り組み」(表③)を聞いたところ、取り組んでいる(28%)、現在、検討中(26%)で過半数を超え、今後検討する予定(17%)も含めれば、七割を超える会員が何らかの新しいことに取り組もうとしていることがわかりました。 新しいことへの挑戦のコメントは289件寄せられました。自社商品の開発に取り組む、オンラインでの受発注、Eコマースの活用など、ネットやIotを活用した新しいことへの試みが大きく広がっているようです。
4)支援策は6割以上が役に立ったと回答
コロナ禍の国の支援策では、2/3近い63%の会員が「利用して役に立った」(表④)と答えています。持続給付金をはじめ実質無利息・無担保融資制度、雇用調整助成金など、「助かった。コロナ禍がおさまるまで延長してもらいたい」などの声が寄せられました。
事業再構築補助金は今年4月から始まった施策です。第1回の公募に広島同友会の会員は27社が採択されました。一方で新規性のハードルが高く、様々な意見が寄せられています。「金額を下げてもいいから採用件数を増やしてほしい」、「本来の事業からの変更が必要で、挑戦したいがハードルが高い」、「そもそも事業は再構築の連続。だから、新規性を問わず、前向きに散り組んでいれば支援してほしい」、「1年で終わりでなく数年は続けてもらいたい」などです。
施策全般に対し、「書類などの手続きを簡素にしてほしい」という意見や「分かりやすくしてほしい」、「飲食業だけでなく、イベント関連事業者への支援も欲しい」、などが寄せられました。
また、いわゆるコロナ融資の返済が早い人は始まって(22%)います。運転資金に窮する事例も増えていくと考えられます。現行の制度の継続と同時に資本制ローンの拡充が求められます。
5)経営指針の成文化は当たり前
今回、10年ぶりに経営指針(理念・方針・計画)の成文化について聞きました。10年前と比べ、成文化している割合は、経営方針で5ポイント増えたものの経営理念、経営計画では横ばいでした。しかし、実数は相当増えています。「成文化を検討している」が10ポイント以上増え、「成文化を考えていない」のは10ポイント以上減っており、同友会では経営指針を成文化するのが当たりまえになりつつあります。なお、経営指針を成文化した企業はそうでない企業より業況が良いことがデータで示されました(表⑤)。例えば、「経営方針の成文化」は、成文化した人のDIは6で、成文化を考えていない人のDIは-22でした。
6)どんな政策を求めているか
企業の自助努力だけでは解決できない課題についての政策要望は一〇九件のコメントが寄せられました。いくつかご紹介します。
1.自治体の職員さんに企業を実際にみてもらって、施策に生かしてもらいたい。
2.大手と対等に交渉できるようサポートする条例や下請け保護法がほしい。
3.あらゆる問題を中小企業の立場で考え、政策立案してほしい。
4.広島県の働き方改革など独自の制度に、国の補助金申請の加点に加えてほしい。
5.地域の人材は地域の会社に。地域企業の持つ技術・技能を継承させるように。
6.親会社からの不当な価格ダウン要求が何とかならないか。最低賃金アップは賛成だが、中小企業の適正な売り上げの確保と同時に進めてもらいたい。
7.原材料が上がっている。仕入は上がるが元請からは下げる要求がある。政府が相場をコントロールできないか。
8.今は財政出動と消費税をゼロにして景気回復を急ぐべきと思う。社会保障費の減額。
9.学校教育で、中小企業のことを正しく教える授業をする。なるべく、地域で売っているところから買うようにすることが地域活性化につながることを教える。
10.被服縫製業。全く規制のない低価格商品の大量輸入仕入に対し、廃棄されるごみも大量に発生。国内中小の製造業を守ると同時にSDGsの観点からも政府の規制が欲しい。
11.地域の資源を確保したり、生かす活動への資金面でのさらなる援助策。観光資源、農業資源、水産資源など。
12.子育て支援をもっと充実してほしい。子どもが急病の時に面倒を見る施設など。
13.種々の手続きの簡素化。書式の統一と一本化。
14.生産性のみでは評価できない地域の存在価値が中小企業にはある。そのことへの理解は行政も含めた社会教育運動へと発展させなければ浸透しない。
15.地域課題を明らかにする取り組みを。防災の視点、人口分布予想、都市計画など、すぐに情報が出せるサイトづくりなど。
16.公的発注の地元優先。