活動レポート
  • ホーム
  • >活動
  • >同友会理念を生かして、新たな地域ビジネスモデルに挑戦 ㈱EVENTOS(広島中支部)
2021.03.29

同友会理念を生かして、新たな地域ビジネスモデルに挑戦 ㈱EVENTOS(広島中支部)

 広島から車で約1時間、浜田東ICから10キロ弱にある、ひなびた温泉街が江津市の有福温泉です。最盛期(昭和40年代)には30軒もの温泉宿があったこの地域は、今まさに、火が消えそうな状況です。
 そんな街を、同友会理念を生かしながら再生しようとしているのが、2020年に「地域未来牽引企業」に選定された㈱EVENTOS(川中英章社長)です。

■吉山ビアンコの教訓から

 同社が地域での活動に目を向けるきっかけになったのが当時の離職率の高さです。お客様の「ありがとう」が聞こえる誇りの持てる仕事にしたい、と農村活性化コーディネーターの資格を取って2011年に開店したのが吉山ビアンコ。スパゲティのみのメニューにも拘わらず、このコロナ下でも売り上げを伸ばしています。地元高校生が働く所が無い地域の中で、土日は地元の高校生がアルバイトをしています。お親御さんたちからは「挨拶をするようになった」「社会性が身に付き始めた」と好評で、地域の人づくりにも一役買っています。
 また、県北に目を向けると、その地域唯一の大きな会合のできるホテルでも、調理師の確保に苦しんでいる、そもそも採用できる人が少ない、という状況がありました。「これは自分たちの出番がある」と確信したのです。

■「人を生かす経営」「共に育つ」を片手に地域再生の売り込み

 「地域未来牽引企業」に選定されると、地方の自治体や企業などに自社の売込みを始めました。その時に力になったのが同友会で発行している冊子の「人を生かす経営」です。「この考え方で企業と地域を再生しよう」と呼びかけました。ポイントになったのは、企業としての健全性を確保すること、地域の人材を地域で守り育てる考え方です。有福温泉でも、親の旅館の跡を継ごうとした娘を、「将来性がないから」と引き留める親御さんもありました。
 自社の得意分野をアピールするとともに、ワクワク感を持つことができるように配慮しました。

■有福温泉再生計画

 長年、有福温泉は、主に広島方面からの慰安旅行の受け皿になっていました。ところが浜田道が完成、広島から近くなりすぎ、ビジネスモデルが壊れました。またバブル崩壊以降の景気低迷、水害や高齢化によって、家族経営さえも成り立たなくなってきました。今回のコロナ禍で最後の土産物店も閉店し、買い物も飲食も一切無しという状態になりました。
 そこで同社が最も手のかかる受付と夕食・朝食の部門(フロント業務とレストラン運営)を一手に引き受けます。浜田漁港の中卸企業との連携で産直市運営もお願いし、そこで購入した新鮮なお魚の提供も可能にします。
 ポイントは、ベテランシェフでなければできない仕事にしない事。広島の本社キッチンで半加工した食材の仕上げを現場で担当する仕組みを設計し、若い社員さんでも活躍し易い環境を作ろうとしています。それぞれの旅館は、湯治用、美容用、家族用…などの特徴を持った宿泊に特化し泊食分離の温泉町になります。お客様は、チェックイン時にキャッシュレスの手続きをして、すべての決済をこれで行います。
 IT化を進め、芸術家の定住体験・短期定住体験や、人材育成学校(仮称)の開設も行い、その後のUIターンへの足掛かりも作る予定です。
 こうした仕組みづくりを提案することで、温泉旅館の固定費を削減し、継続していけるビジネスにしようとしているのです。有福温泉は今年十月にリニューアルオープン予定です。

■新しい可能性も~同友会のネットワークを生かそう

 新しい仕事の芽も出てきました。浜田漁協との交流が進む中、同市の「お魚市場」の全面リニューアルに合わせて二階のフードコートを担当することになりました。関連付けて広島市内での新しいビジネスモデルも模索しています。  川中氏は、「アピールの際に、それぞれの地域で活躍する同友会会員の存在が、後押しになった」と語ります。全体のノウハウ形成には、山形同友会の取り組み事例が大いに参考になりました。
 めざすは労使見解の示す「やり甲斐があり、未来に希望が持てる地域づくり」。地域に寄り添う同友会とそのネットワークは、ビジネスにも大きな可能性を持っているようです。