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2021.02.25

「withコロナ時代、どうなる!?2021年~明るい未来に向けて、いま、私たちは何をなすべきか~」福山支部・広島中支部新春講演会

講師 ㈲第一コンサルティングオブビジネス 代表取締役  丸山 博 氏(東京)

 新型コロナウィルス感染症の発生から、もうすぐ1年です。以前と同じ状況には戻らないことがはっきりしている今、企業は利益の出る体質に変えていく必要があります。一番よくないのは、コロナ禍を嘆いて何もしないことです。
 コロナ危機の本質は、ヒトとモノの動きを止めたことです。資本主義、自由主義経済では、ヒトとモノの移動こそが原動力でしたが、この動きを止めたことで経済も止まってしまいました。人の生命を守るために経済を止めたことが、企業・報酬・生活の保障にまで影響が及び、最終的に人の生命を脅かすというパラドックスが生まれています。
 その一方で、今、起こっている問題は以前から存在していて、今回のコロナ危機で顕在化しただけとも言えます。企業で言えば、コロナの前から存在していた弱点が、コロナによって表面化し促進していると考えてみてください。コロナのせいにするのではなく、いち早く対応することが企業の明るい未来につながっていきます。

■どうなる!?2021年

 米中問題を見るとバイデン次期アメリカ大統領の誕生と中国の独裁体制の加速がはっきりとしています。昨年から続いた経営破綻も続くでしょう。また、今年は企業だけでなく、地方銀行の合併が進んでいく可能性があります。
 産業構造もすでに変化しています。GAFAは得た利益の内、次の設備投資につぎ込む資金は、日本の自動車メーカーに比べ20分の1と言われています。つまりいくらGAFAが高い利益を上げても、私たち中小企業が受ける恩恵はとても低いのです。
 現在の国内外の株価も実体経済を反映したものではありません。その理由は、中央銀行の金融緩和策です。緩和策は企業の設備投資や雇用の増加による景気の上向きをねらっていますが、残念ながらそうなっていません。本来なら企業へ回るお金がファンドなどの投資に流れていき、結果として株価だけが異常に高くなっているのです。今は景気や所得の上昇を伴わない、いわば金融バブルであることを冷静に判断しておいて下さい。
 菅政権の大きな政策の一つが「デジタルトランスフォーメーション(以下DX)」です。DXは、「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念です。具体的に言うと5GやIoT、Web通販、VRやAR、ドローン等の活用です。今後、デジタル化を進める中小企業向けの助成金が出ることが濃厚です。企業はどのような内容でも申請できるよう、今から準備しておきましょう。業種をはじめとした固定観念は捨ててください。自己否定から新たなものが生まれることもあるのです。
 1年前には「こうなるかもしれない」と思っていた世界が、コロナ禍の今では当たり前になりました。これがニューノーマル(新状態)です。私たち中小企業家は、いち早くこの状態に気づき、自社とどう結びつけるのか考え、取り組むことが求められています。経営者の皆さんは、『社会契約論』、『国富論』、『資本論』、『雇用・利子及び貨幣の一般理論』の四冊を読んでみて下さい。ぜひ、読後に今後の経済がどうなるのか考える年にして頂きたいと思います。  

■私たちはどう立ち向かうのか

 人類の労働は自給自足や物々交換の時代を経て、貨幣の誕生へとつながりました。そして近代になると自分のための生産から、売るための商品生産に変化しました。仕事の原点は、わが社がどのように世の中に役に立ち、社会的使命を果たしていくのかです。本気でこれを語りつくし、社員と語れる企業こそが勝ち残っていけます。
 経営指針書の中に、わが社の社会的存在意義やお役立ちを書いている企業は今、それを再構築してみて下さい。現代はコロナのような感染症と共存していく時代です。コロナが終息しても、次の感染症が発生したら同じように我慢をしないといけません。これからの10年は感染症と共存し、どんな時代でも自社の社会的使命を果たし続けるのかを明確にしておきましょう。
 では、時代の変化を味方にするためには、どうしたらいのでしょうか。
 一つ目のキーワードはレッドオーシャンです。伸びると思われたマーケットは、必ずレッドオーシャン(競合過多)になります。一見、伸びそうなマーケットほど多くの企業が集中するため、中小企業にとっては危険です。反対に、自社の事業で衰退期と思っているものほど、宝の山だったりします。衰退ビジネスに新しい方法をプラスすることで、ビジネスモデルを革新する可能性があります。ぜひ自社の掘り起こしをしてみて下さい。
 もう1つは3つの「2」です。最初の「2」は、デュアル経営です。感染症が来る前と同じ方法で仕事を進めていると、せっかくのチャンスを逃してしまいます。企業は、平時と感染症が流行している緊急時に対応した2つの方法を持っておきましょう。
 2つ目は、2つのターゲットを持つダブル・コアです。作業着販売のワークマンは、もともとかっこいい作業着をめざしていたところ、女性がその作業着を部屋着として使っているのに着目し、女性用の作業着の販売を始めました。同じ技術とノウハウを使って、二つのターゲットにアプローチするのが、このダブル・コアです。
 3つ目が「two way」、2つの販路です。これからはアナログとデジタルなど、2つのスタイルを持っておきましょう。対面販売とWeb通販、対面サービスとオンラインサービスなどが代表例です。
 特に製造業・小売業は、「個客」とつながることを意識してみてください。集客できているから安心できる時代ではなくなりました。これからは「個」のお客様を大切にアプローチすることが重要です。スーパーマーケットを例にあげると、かつての酒屋さんのような「御用聞き」を先述のDXを使って行うのです。昭和のやり方を令和の技術を使ってできないか、自社で考えてみて下さい。  

■市場開拓と「AISAS」

 同友会の会員はコロナから立ち上がりが比較的早く、その中でも経営指針を成文化し、実践している企業の動きはもっと早かったです。経営指針を実践している企業は普段から情報をインプットし、考える習慣がついているからです。
 ここで全国の仲間の取り組みを紹介します。今、全国の貸おしぼり業者は、飲食店の休業等で大きな影響を受けています。コンビニで買い物をすると無料でもらえるおしぼりは単価が非常に安く、大手と勝負をしても勝てません。
 そこである会員企業は、コンビニの10倍の値段で売れる方法はないか、同友会の仲間に聞きました。その結果、ゴルフ場で抗菌効果があるおしぼりを、高級自動車の展示場で高級感を出した商品でそれぞれ販売が決まりました。いずれも需要にあわせて商品開発をしたものです。中小企業はよく商品開発を先に行ってしまいますが、今回成功したポイントは市場開拓後に商品開発をしたことです。
 また、中小企業は発信力が弱いと言われています。これからの時代は、自社でできることをやり抜いた上で、上手に発信していく事が必要です。
 消費者の購買行動のプロセスを表した「AISAS(アイサス)の法則」は、それぞれ注意・注目、興味・関心、検索、行動、共有・シェアを表す英単語の頭文字を取ったものです。企業はこのサイクルに合わせて、SNSを上手に使い分けていくのです。  

■コミュニケーションは密に

 社員に不安を与えず、勇気と誇りを持ってもらうためには、もう一度、経営指針を見直し、今の「新状態」にふさわしい経営指針にリニューアルしてみましょう。そしてLINEやZoomなどのツールを使って、コミュニケーションを密にしていきましょう。
 経営指針発表会をZoomで行った企業では、8割の社員から大好評を得ました。自宅からの参加にも関わらず、社長や幹部の話をマンツーマンのように聞けたことが理由です。今回のことで、経営指針発表会の意義を問い直されました。社員のためならZoomでも十分伝わることがわかったのです。『密を避けつつコミュニケーションは密にする』ことがこれからの企業にとって重要なのです。