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2020.12.24

経営フォーラム2020 第2分科会 「人生最悪の事態を救ったこの2冊!~ 企業変革支援プログラムの実力とは?~」

報告者 ㈱ロアール 代表取締役社長  園尾英樹 氏(福山支部)

■後継者が解雇?!

 ㈱ロアールは福山市や東京で美容室やネイルサロンを展開しています。創業から52年、設立から48年を迎えます。店舗数は全部で6店舗あり、社員数は現在、45名です。
 当社は父親が創業し、私は2代目です。当初、兄が後継する予定でしたが、父親と衝突し、会社を出てしまいました。別の仕事に就くつもりだった私は、後継者としてロアールに入社することになりました。ところが約10年後、その兄が会社に戻ってきたのです。父親は兄に継がせたいと、私に自主退職を勧めました。反発した私と父がぶつかり、最終的に私は解雇されることになりました。
 それから3カ月間は失業保険をもらいながらの生活です。「いつか見返してやりたい」。そんな思いでいっぱいでした。私は勝負をするなら同じ美容の世界でと、美容室を始めることにしました。しかし、経営の知識はほとんどありません。法務局に行き、会社設立の方法を教えてもらいました。
 会社設立の次は資金の準備です。銀行に出向き、融資のお願いをしましたが、そう簡単には貸してくれません。融資には事業計画書と顧客リストが必要と言われ、私はインターネットで計画書の作り方を調べて完成させました。
 ところが顧客リストがありません。悩んでいると、たまたま出会った美容室のオーナーが店を買い取ってほしいと言うのです。私はその店を買い取り、オーナーを社員として雇用することにしました。そして、そのお店の顧客リストを持って借入のお願いに行くと、無事に融資が下りました。美容師の採用も決まり、念願かなって、美容室をオープンすることができました。

■再びロアールに…

 自分で会社を設立した私ですが、2013年にロアールの社長に就任することになります。実はオープンからしばらく経った頃に父親に呼ばれ、「ロアールが倒産する」と告げられました。同時に私が2億2千万円の連帯保証人になっていて、逃げられないと言うのです。当時の会社は年間1千万円の赤字で、このままでは倒産です。父親からは倒産するか、自分が継いで会社を立て直すかの選択を迫られ、私は後者を選びました。
 実際にロアールに戻ると、私がいた頃の社員は私が会社から逃げたと思っていました。誰も解雇されたとは知らなかったのです。会議をしても誰もこちらを見てくれず、税理士からは3カ月で倒産すると言われました。
 そこで私は自分の給料を15万円にし、社員について来てほしいと頭を下げました。当時は敵地に赴いたかのような環境でしたが、いつも社員に「ありがとう」の言葉を繰り返し伝えていました。「ありがとう」の数では、他の経営者に負けないと自負しています。私は何か大きなことをするのではなく、1つひとつのこと一生懸命に積み上げていきました。すると社員も協力してくれるようになり、次第に売上も増えていきました。

■企業変革支援プログラムの実力

 後継から1~2年が経ち、ようやく光が見えてきた頃、企業変革支援プログラム(以下、支援PGに出会いました。支援PGは自社の現状を極限まで把握し、今まで目を背けていたことを真正面から受け止めることで自社の欠点がわかります。また成功体験を学び、自社の次の一手を可視化できます。そして、可視化出来たものを指針書に反映していきます。完成した指針書を発表すると社員との一体感が生まれ、自社を発展に導けます。私は支援PGとは、会社の一体感を作るためのものだと考えています。
 支援PGは全部取り組まないといけないと思われている方が多いのですが、目次を開いて、今の自社に1番必要なことを可視化するだけで変わっていきます。最初は私も自社で出来ていないこと、必要なことを選び、1つひとつ実践してきました。
 支援PGのSTEP1では、まず自社の現状把握をし、立ち位置を確認します。これはぜひ社員と一緒に回答してみてください。その結果を照らし合わせると、経営者が自分の「勘違い」を発見できます。また、重要なのは支援PGを毎年回答し、その変化を見ることです。項目によっては前回から下がるものもありますが、それを知ることで次に何をすべきかがわかります。これがSTEP1です。
 次に支援PGのSTEP2です。これはstep1で出た課題に対し、具体的に何が出来て、何が出来ていないのかチェックします。そして、出来ていない項目に対し、何をしたらいいのかがわかるものです。もしかしたら、何も出来ていない結果になるかもしれません。でも、それがいいんです。STEP2では、レベルアップするために何をしたらいいか具体的に書いてあります。その内容を確認したら、次に「自社におけるレベルアップのための具体的方策」を書いていきます。そうすると、自社で何をしたらいいのかがわかる仕組みになっています。
 難しそうに見えますが、私もやってみるとあっと言う間に終わりました。大切なのは、わからないことをわからないままにせず、調べて積み重ねることです。これが経営者の仕事だと思います。自社でもSTEP2で書いた方針に沿って社員に思いを伝えると、より分かってくれるようになりました。
 支援PGを使った2015年からは会社の業績も飛躍しました。そして、2017年には2億円の借金を完済することができました。支援PGの取り組みと実践のサイクルを繰り返し、当たり前になるまで積み重ねることが大切なのです。

■一発逆転はない!

 自社では支援PGで出た課題ややりたいことを経営指針書に反映しています。項目をすべて数値化し、方針として出し、年間計画を立てます。これに経営理念を加えると、経営指針書が完成します。自社では社員全員に経営指針書を配布し、発表しています。その後、店舗別・個人別の目標を立てています。その目標に対して、どう実現していくかをグループ討論で考え、食事会で討論発表をしています。これも同友会の活動を参考にしました。
 また、社内では働き方改革にも挑戦しました。雇用形態を変え、給料も上げたほか、社会保険にも加入し、完全週休2日制の導入もしました。労働時間や売上が下がることにはなりましたが、私は未来への投資だと思っています。
 ある異業種交流会に社員と一緒に参加した時のことです。社員はそこにいた経営者に「今の会社がつぶれても、社長について行くか」と聞かれ、「ついて行きません」と即答しました。しかし彼女は「まず、この会社をつぶさせません」と続けたのです。この言葉に私の手は震えました。経営は一つひとつの積み重ねが重要で、一発逆転はないと学んだ瞬間です。

■コロナ禍の中で

 私はコロナの前からいろんな経験してきたので、今回のコロナ禍でも早めの対策と行動を取ってきました。人は危機を感じた時に初めて本気になります。そういった意味で、コロナはピンチをチャンスに変える時だと思います。
 そうは言っても当社も当然コロナの影響を受け、数店舗は休業しました。特に東京の店舗は都の休業要請を受け、1~2カ月休業せざるを得なくなりました。しかし、事前に休業期間中にすべきことを計画しておいたので、慌てることはありませんでした。休業中はZoomなどのITを使い、社員全員でミーティングをしたり、東京の社員から技術を教わったりしました。研修内容は私だけでなく、社員も提案してくれました。また、コロナが起こってから求人への応募が増え、人手不足が解消されました。まさに「ピンチはチャンス」です。

■最後に

 この10年で気づいたことが三つあります。1つは、積み重ねが大切だということ。2つ目が組織を動かすには一体感が必要なこと。最後は支援PGの言葉を使うと、「会社の経営をよりよいものにしていくには、必ず経営者の指針書が必要です。何のための仕事か、将来に向けてどのように進むのか、きちんと指針書をもとに示してかなければ、社員には伝わらない」です。
 しかし、ここに経営者の心の経営がないと上手くいきません。支援PGをもとに指針書を作り、定着率を上げ、自社の次の可能性に挑戦できるのではと思います。この10年を振り返ってみると、本当に大変な時期もありましたが、楽しかったと思います。