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2020.10.20

「経営指針でコロナに勝つ」広島西支部佐伯・廿日市地区会合同9月例会

報告者 ㈱キャピタルコーポレーション 代表取締役  村井 由香 氏(広島中支部)

 広島市内の中心部に「炭焼雷」という焼き鳥店を3店舗経営しています。今年で創業43年、会社設立は37年を迎えます。  

経営者としての覚悟

 創業者の父は、典型的なワンマンカリスマタイプでしたが、店づくりやコンセプトを含めた軸はぶれない人でした。経営理念も、父が考えていたことをそのまま使っています。
 その父が病気で入院することになり、1996年に入社しました。当時は専業主婦でしたが、最初はパート感覚で手伝うような軽い気持ちでした。社長になったのは2005年。父の指示に従い、社員とも関わろうとせず、ビクビクしていたと思います。
 そんな私に、経営者としての責任や覚悟を問われるような出来事が起こります。2009年10月、中心部にあった店と事務所が火事により全焼してしまったのです。私含めて社員全員が呆然としていました。そして、社員たちが不安そうな目で私を見ているのが痛いほど分かりました。「1年後、店は絶対に再開するから、一緒に頑張ろう」と言いました。今思えば、この時に、経営者としての覚悟ができたのだと思います。  

同友会で十年の学びと実践

 約束通りに店を再開でき、経営って何?と考えるようになった頃に出会ったのが同友会でした。入会して10年間、様々な学びを自社風にアレンジして落とし込んでいく日々でした。整理すると3つのことに力点を置いてきました。①顧客、②業務プロセス、③人財と変革です。経営指針の成文化と実践で、売上も利益も伸びました。ただし、2019年までのこと。  

コロナとの闘い、始まる

 これからが本題です。コロナの影響で街中に出かける人が大きく減りました。強みだった立地が一気に弱みに変わった瞬間でした。3月26日、店舗隣りのビルの飲食店でクラスターが発生。以降、街に人が減り、お客様も減っていきます。この時はまだ二五%のダウン。しかし、4月は87%ダウン、5月も87%ダウン。笑うしかありませんでした。4月6日、1店舗目が休業。9日に経営計画会議で「生き残る7ヶ条」を社員と作りました。
 今後どうすべきか、悩んだ私が真っ先に相談に行ったのは事務局でした。政策金融公庫やセーフティーネットを使った銀行の利用を勧めてもらいました。
 4月14日、2店舗目が休業。会員の社会保険労務士に雇用調整助成金の依頼をしました。4月21日は三店舗目を休業、社員は休職となりました。この頃は精神的に追い込まれた時期で少し鬱気味でした。「今ならきれいに辞められる」。心配してかけてくれた友人の電話にも出たくない気分でした。
 前向きになれたのは、社員のおかげです。休業していた彼らは、改めて自分たちの仕事の意義を感じたようです。ランチ営業を始めましょう、お客様に向けて「お店で待っています」を伝える動画を作ろうと提案してきたのです。お店を開けないほうがキャッシュアウトは少ないです。ただ、社員のモチベーションのほうがこの時は大事だと思いました。
 以降は持続化給付金や融資も実行され、キャッシュフローは目途がつきました。6~7月は、30%ダウンまで戻ってきました。でも感染拡大の懸念のあった8月はまた大きく落ち込みました。そして9月、一進一退です。  

経営を維持・発展させる責任

 同友会では「どんな困難があっても経営者には会社を維持・発展させる責任がある」と言っています。維持の視点で取り組んだことは、資金手当て、BCP(事業継続計画)の策定、社員との面談、オフサイトミーティング、です。発展の視点で取り組んだことは、ITを導入した生産性向上、隣接異業種への挑戦、地域内での連携、です。
 火事のあったあの日。全員で円陣を組んで再起を誓い合った時。あの時の社員の温もり、決して忘れたくありません。社員がいるから、そして、同友会の仲間がいるから戦い続けられるのだと思います。
 同友会での10年の学びがなければ、コロナに立ち向かうことはできなかったでしょう。