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2020.09.25

第四期ひろしま経営指針塾始まる ~今年はZoom開催! 「経営指針はなぜ必要か  ~コロナ禍だからこその理由~」

講師 第一コンサルティング・オブ・ビジネス 代表取締役・税理士 丸山博 氏(東京同友会)

 2020年で4期目を迎えた県の経営指針セミナー「ひろしま経営指針塾」。今期は新型コロナの影響を踏まえて、Zoomでの開催を決定。
 第1講は8月22日にマルちゃんこと丸山博氏を講師にお迎えし、20名の塾生、15名のサポーターが参加して開講されました。
 以下に講演の一部をご紹介します。  

■指針で差が出たコロナ初動

 今日の日経新聞の1面に新型コロナによる未曾有の売上減少が報じられていました。中小企業でも、観光業など売り上げがゼロになった会社もあると聞いています。
 にもかかわらず、この中でコロナ禍の初動に差が出ました。経営指針の必要性が明らかになったと思います。
 この6ヶ月で売上半減、激減した中小企業でも、経営指針を作る習慣のあった会社は、適切な対応をしているのも事実です。
 経営指針がある会社は、どんなに売上が落ち込んでも、「次にどうするか」を一生懸命考え、計画を立て、社員の皆さんと励ましあいながら、どうするかを決めて、着手・チャレンジしているのです。今回の新型コロナでも同じでした。なぜでしょうか。差が出た理由を三つにまとめてみました。  

■差が出た三つの理由

 一つ目は経営指針を立てる習慣のある経営者・会社は情勢に対応しようと考え、計画を立てる(アウトプットする)習慣があることです。今回も、どんなに危機に陥っても、アウトプットの習慣のある経営者は「よし、だったらこうしよう」とやるべきことをやるために立ち上がっています。
 二つ目は、ブレない軸を持っていること。広浜中同協会長がよくおっしゃる「経営者としての矜持」、言い換えれば自負です。このコロナ禍でも「こういう外部環境の変化は経営をしていればよくあることですよ」とさらっと言われた塾長さんはすごいですが(笑)、『中小企業における労使関係の見解(以降、労使見解)』にあるとおり、経営者には「いかに環境が厳しくとも、時代の変化に対応して経営を維持し発展させる責任がある」のでしたね。
 三つ目は経営指針を作り発表して社員とのコミュニケーションを取る習慣を身につけていることです。
 相談を受けたある飲食業の会員経営者は、売上半減。しかし、四月の時点で全社員を集め「会社は潰さない。店舗は休むかもしれないが、雇用は必ず守る、だからこういう方向で頑張って欲しい」と緊急対策方針を伝えていました。その後、テイクアウトなどに着手し、7月には赤字を食い止めるところまで来ています。
 休業期間中にじっと耐え忍んでいた会社と比べると、初動の速さ・対応の速さがおわかりいただけると思います。
 今のような情勢では、特に社員とのコミュニケーションの習慣と仕組みが大切です。前出の会社でも、社長が会社の方針を立て、社員に伝えたからこそ、売上は減ったものの、テイクアウトなどで利益を確保することができました。  

■withコロナ時代に どう戦うか

 すでにwithコロナの時代が始まっています。1年前には戻れない。新しい時代に対応した新しい経営指針を作らなければいけません。今は「withコロナ時代にどう戦うか」がテーマです。  大きな外部環境の変化への対応は、阪神淡路大震災でも、リーマンショックでも、東日本大震災でも同じでした。
 どんな危機が起こっても、それでも「生活」は復活します。より豊かな生活を求める人類のDNAはすごいです。これから始まる「新生活スタイル」に適合した新しいビジネススタイルを創り出せばいいのです。
 捨てるべきは捨てる。一方で、わが社の「真の強みは何か」を見出し、新生活スタイルに適応していくのです。  

■何のために働く? ~働くことの本質~

 コロナ禍の中で、経営指針と合わせて同友会だからこそ重要視してほしいことがあります。それは「働くことの本質」です。
 休業せざるを得なくなり、その間雇用調整助成金を申請した会員外の会社のお話です。緊急事態宣言の解除後に、社長が「よし、再開するぞ」と社員さんに声をかけた。すると多くの社員さんから、「お金が出るのなら休みましょう」と言われたそうです。同友会の会員企業なら「よし、ようやくお客さんのために働ける。やるぞ!」と社員の皆さんがはりきってくれるのではないでしょうか。
 実は、働くことの本質は小中学校でも教えていません。では、「あなたは何のために働きますか?」と聞かれたら、どう答えますか?
 以前、ある新入社員研修で同じ質問をしたところ、「私は自分自身と愛する者の幸せのために働きたい」と女性の新入社員さんが答えました。
 そして、自分と愛する者が幸せになるには、お客様を幸せにしないといけないことがおわかりいただけると思います。  

■働くことで 脳が発達した人類

 働くことの本質を人類の歴史から考えてみましょう。原始時代は自分たちのために自分たちで作る自給自足でした。
 人類の歴史は生産性アップの歴史だと言われます。自分たちが食べきれない分を略奪、物々交換の時代を経て、交換のために貨幣が生まれました。そこから現代は、売るために作る「商品生産社会」に移行しました。この社会は一生懸命作るだけではダメで、販売の過程で価値を交換しないと価値が実現しない社会です。
 今回のコロナ禍で、移動が制限されて価値交換を実現するマーケットが消滅。どれだけ大変なことが起こったか、おわかりいただけますよね。
 人類の歴史は生産性アップの歴史だというのは、人類は「もっと良くなりたい」という欲が強く、その欲が発展の原動力です。もっと良くなるには、創意工夫が必要です。それが人間の脳を発達させました。つまり働くことが今の人間を作ったのです。  

■同友会で経営指針作りに 取り組む理由~会の歴史から

 『労使見解』は、労働組合運動が激化した時代に、同友会の先輩経営者が2年間かけて議論を重ねてまとめたものです。
 当時は中小零細企業といえども、労使紛争の時代です。そんな中でも、真っ先に経営者の責任、「経営者がきちんと方針を立てていないからこうなるのだ」とまとめているのです。
 つまり、当時の同友会の経営者は、目先の組合運動の問題ではなく、労使の真のあるべき姿、話し合い理解しあうことが理想と描き出しています。まさに「本質」を考えていたのです。
 ベースは、1章と2章です。経営者の責任を真っ先に指摘し、次に立場は違うが、労使の関係は対等であることを説いています。
 企業を維持発展させる責任は経営者にある、どんなに環境が厳しくとも言い訳するな、時代の変化に対応していくんだ、と自分たちに向かって言ったのです。
 その責任を果たすために、「英知を結集して経営の明確なる指針を作る」必要があると書かれています。この文章から経営指針づくりの運動が始まっています。『労使見解』は何度も読み込んでいただきたい文章です。  

■労使の対等性とやりがい

 労使の関係についても「雇用関係(契約関係)」と「社会的関係」であると言っています。契約は双方対等の立場で取り交わされることから、労使は相互に独立した人格と権利を持った対等な関係にあるといえます。と同時に、憲法や労働三法などによって労働者個人としても、労働組合としても、基本的権利が定められています。
 先輩経営者は、本質を議論した結果、憲法にある「基本的人権」を尊重し、その精神を踏まえ、対等な労使関係であり社会的関係であることを理解した上で、責任を明らかにし、対等性を明らかにしたら、話し合い理解しあうことが大事だとまとめたのです。
 また、5章の「新しい問題」は、25年前の新しい問題、つまり今の問題です。働く社員社員一人ひとりの「やりがい」や「誇り」の問題です。
 これは、経営理念の中の「わが社の世の中に対するお役立ち」のところから来ます。
 社員がそれを理解し、誰にどう役立っているか、どうがんばればどういう幸せが実現できるのかがわかれば、社員のやりがいにつながるのではないでしょうか。  

■今こそ経営指針

 今はコロナ時代に合わせたビジネスモデルを作り出さなければいけません。一生懸命考え抜いて、試行錯誤すれば作れなくはないですよね?まだ間に合います。
 最後に、『3密は避けて、社員とのコミュニケーションは密にとる』という言葉を皆さんへ送りたいと思います。
 何のために経営指針を作るのか。新しい時代に対応した方針を作りながら、社員とのコミュニケーションをもっと密にとる道具を作ると考えていただければと思います。