コロナの中で頑張っています「 無ければつくる!今こそ中小企業の真骨頂の魅せ所」
㈲広島ピーエス 代表取締役 宮原和樹 氏(東広島支部)
新型コロナウイルスの問題で、全国的にマスクが不足し、特に病院等の医療現場では深刻でした。自動車機器メーカーへの部品および工場内の運搬機器を生産する㈲広島ピーエスは、社会医療法人祥和会脳神経センター大田記念病院(福山市)が企画、共同で開発した医療用のSMS不織布を使った型抜きマスクの製造を始めました。始められた経緯、今後の経営上の力点など伺いました。
■医療崩壊を防ぐために
SMSとは、手術室などで使われている衛生的な不織布で、極細繊維でできていることから空気中の小さなゴミや花粉を通さない特徴があります。完全密着タイプの医療用マスクには劣るものの、一般的にドラックストアなどで販売されている白地のマスク程度の感染予防および飛沫感染防止効果があります。
2月から3月にかけてマスク不足が叫ばれていました。様々なところでマスクも製造されているニュースもありましたが、なかなか流通しませんでした。このままでは、マスクが必要不可欠な現場には届きません。今まで通り防げていた当たり前が、資材不足・人員不足・病院のキャパオーバーによって一気に医療崩壊につながる可能性があるということでした。
それならばと、とにかくできる限り製造して、広島県内の医療関係者の方々に行き渡らせ、感染を防止することを重視しました。私たちが生産・供給するマスクで、せめて医療用マスクを本当に必要な現場に回し、それ以外の場面でも衛生的なマスクを身に着けてもらうようにして、感染を五月以降に遅らせることができるかどうか。これがカギを握っていると考えたのです。3月からすでに100万枚を製造。ある程度充足したことから、私どもの本拠地、東広島市では学校への無償配布を行うとともに、青年部会員企業の活躍により、市内のさまざまな企業に購入いただきました。
■時代が変われば指針も変わる
実は、動き始めるにも躊躇がありました。背中を押してくれたのは、岡山同友会の山辺代表理事の言葉。「大地に足をつけろ」。この一言でやるべきことが見え、マスク製造に本腰を入れて取り組むことができました。
新型コロナウイルスで時代が変わったのであれば、経営指針も変えなければならない。これまでの経営指針書をベースにコロナ版BCP(事業継続計画)にシフトしました。
第1段階はマスク不足の医療関係者へSMSマスクを届ける。マスク不足が落ち着けば第2段階として高機能マスクは医療関係者へ行き渡るようにし、一般の方へはSMSマスクを広め、新たな感染者が出ないようにする。こうすることが医療崩壊を防ぐ=コロナ版BCPであると考えました。
マスク不足は一山越えました。私たちにできることはまだある、と。今は医療用ガウン等の製造を始めています。
■コロナと共に・・・
資金繰り対策ですが、金融機関は分散して、いろんなところと取り引きすることを重視しています。借入計画は、3つの悪いパターンを想定し、こういう場合はこうするということを明確に説明して、金額交渉しました。根拠が明確で、得より損を知り説明すれば、金融機関も納得してくれます。
社内体制ですが、感染拡大防止も考え、2つの作業グループを作り、交互に勤務する体制を計画しています。このことで、社員にも新しい能力を身につけてもらえるチャンスであることも分かりました。
一方で、長引く需要の冷え込みが、地域の経済を支えている製造業にもたらす影響も計り知れません。地域が早く回復して欲しい。でなければ、地域に根を張る我々中小企業が存続できなくなるからです。
「ウィズコロナ」と捉えれば、探せば仕事はまだまだあるのではないでしょうか。アンテナを張ることも大事ですが、これも普段から同友会活動を通じて、どれだけ人脈を磨いてきたかが問われていると思います。