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2019.12.25

第3分科会 付加価値を高める「 経営者の姿勢と覚悟 ~社員教育と経営指針書で付加価値を高める経営~」

報告者 ダイヤ工業㈱ 代表取締役会長  松尾 正男 氏 (岡山同友会)

会社の沿革・現状

 当社がある岡山はイ草の産地でした。設立当初はイ草スリッパを製造し、ハワイ(ダイヤモンドヘッドが社名の由来になる)へ輸出していました。その後、革のスリッパ、財布や定期入れの小間物に商品が移ります。
 私は昭和55年に入社しますが、その当時は下請けで袋物の生産もしていました。小さいながらも会社の創成期、成長期、成熟期を経験して来ていました。

付加価値の源泉は社員の成長

 その後、現在の事業につながるコルセット、サポーターから全骨格筋をサポートする製品開発を行っています。現在は筋肉スーツ、人工筋肉のサポーターまで商品開発しています。
 「付加価値とは、お客様が我社の製品やサービスを選ぶ理由」と考えています。
 これまで付加価値を高めるために、売り先を変える、売る場所を変える、売るモノを変える、ブランド力を高める、顧客満足度を高める、価値や品質を見える化する、という事を行ってきています。
 最も大事な点は、意欲のある社員を育てることです。社員の成長と共に会社が成長してきている、という事が結論です。

ターニングポイント
 「変革」は経営者しか出来ない!

 先ほどもお話ししましたが、設立時は年商1300万円、その後8700万円まで届き小さな山を迎えます。その後、下降線をたどり、下請けで袋物を製造していました。その昭和55年の厳しい時に、入社したわけです。
 実は、昭和56年に売上の6割を占める取引先が倒産します。連鎖倒産してもおかしくない状況でしたが、厳しい時ほど家族が一体となりました。そして、第2創業となるコルセット開発をします。
 きっかけは、腰痛を患う伯母でした。病院から提供されるコルセットは硬くて使い勝手が悪い。先代が知恵を絞り、私がミシンの技術で商品を作り、大変喜ばれました。
 当時あったものは、危機感・やる気・ミシンの技術でした。なかったものは、金・人脈・知識です。そして、新たに作ったのはコルセットでした。
 コルセット開発は、社員の心に火を灯しました。病気の方に感謝される喜び(生きがい)、医療・健康市場へのお役立ち(働きがい)が生まれました。
 ここで先代社長が経営を袋物下請加工会社から、メーカーへの転換の方針を出します。
 経営者が駄目だと思ったら倒産です。また逆境やハンディの中からの「変革」は経営者しか出来ません。

苦肉の策、接骨院市場参入

 次の課題は、作った商品をどこに売るか、という事です。
 まずは、病院ルートは敷居が高く相手にしてもらえませんでした。次に薬局ルートでした。新商品でしたから仕入れてはもらえましたが、返品慣習がありました。中小企業には不向きな市場でした。
 こういった制約条件下で可能性を追求し、柔整ルートを模索します。当時の柔整市場は、薬局問屋さんが片手間で訪問していました。ですから納期も遅いという状態でした。
 私は、何とか代理店を開拓しようとしていましたが上手くいきません。先代は、はがきにイラストを入れてダイレクトメールを送りました。
 柔整市場は、様々な課題を抱えていましたので、徐々にニーズが増えていきました。ちょうど宅急便が成長していたのもチャンスでした。面白いもので、田舎の接骨院さんから火が付き、お客が増えていきます。問屋さんを介さないルートですので、当時、業界の異端児扱いです。それでも患者様の満足の為に、接骨院の先生とパートナーになり、BtoBの通販市場が確立していきました。苦肉の策が、ビジネスモデルになり、追従業者も出始めました。
 経営者の「情熱」こそが新たな発想や市場を生み出しました。

同友会入会 出会いは運命

 異端児扱いだった通信販売も軌道に乗り、年商1億円足らずの会社が4億5千万円になっていました。
 岡山同友会へは先代の勧めで平成6年に入会しました。付き合いで入会しましたので、参加はしていませんでした。
 当時の私は、売上げ増は簡単。通信販売は、どこよりも安く、どれだけ多くの人に知らしめるかがカギだと考え、絶えず価格競争をしていました。現場も専務である私が1人で切り盛りし、トップダウンで指示を出し、社員は手足のような存在でした。しかしいくら売上を上げても利益は残らない。貧乏暇なしです。あの婿さんは、よく働くなあ~と見られ、それに満足していました。
 平成8年に先代がなくなり、社長就任の翌年に減収減益です。一人になり、このまま駄目になるのか、と何とも言えない危機を感じていました。
 ちょうど、岡山同友会の新春講演会で、同じ業態の、やずや 矢頭宣夫氏が来られました。この出会いが運命(救いの神)となります。
 やずやさんの経営計画書を拝見すると、第22期、売上目標32億円。経常利益3億2千万円とありました。企業理念の中には、顧客と心が通じ合う「通心販売」「人財の育成」「従業員の幸せ追求」と書かれてありました。
 我社に足りなかったのはこれだ!と感じました。
 経営理念を明確にし、方針を立てて実践するのが組織経営です。経営者はいかに環境が厳しくとも、会社を維持し発展させる責任がある、と話されました。
 こんな会社になりたい、と同友会で学び始めます。

「経営者としての姿勢と覚悟」が次代を切り拓く

 会社の目指す方向が明確になれば、実践あるのみです。
 よい会社・よい経営者・よい経営環境を目指したい、と経営指針・共同求人・社員教育・障害者雇用を総合的に実践する「人を生かす経営」の取り組みを始めました。
 平成10年より新卒求人をスタート。就業規則や会社案内もない状態でした。共同求人に取り組むと、社員の意識が変わりました。新卒採用は社員の将来を預かる、経営者の覚悟が必要です。(20年間で134名採用。95名在籍)
 また新入社員を迎える準備をしようと、幹部社員大学に社員4名が参加します。
 平成12年には経営指針(僅か25ページでした)を成文化し、IT経営、物流アウトソーシングと社内大改革に取り組みました。家業が企業に変革するスタートとなりました。

社員と共に、夢を追う経営に邁進する

 平成25年~平成30年、第3次経営革新計画承認で「新社屋、物流センターを建設し、社内外、国内外に情報発信」に取り組み、現在に至ります。
 改めて、今日あるのは価値観を共有する多くの良き人に恵まれたお陰だと感じています。経営者と社員の信頼関係こそが次代を切り拓く、と確信し、これからも学んで実践を続けます。