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2019.12.25

第4分科会 「人材の採用と育成 社員の幸せが自分の幸せ ~固定観念にとらわれない採用と育成」

(有)アドバンス 常務取締役  藤岡 秀行 氏 (福山支部青年部)

自社・自己紹介

 私どもは(有)アドバンスと(株)トータルウィンの2社を運営しています。創業は2003年12月に現社長である父が創業しました。府中市にあり、売上は合計で約5億円。社員数はパート含め118名です。
 事業内容は、アドバンスは高齢者介護施設を3拠点、トータルウィンは障害児通所施設を2拠点の他、介護の資格を取る講座、人材を企業に紹介する有料職業紹介事業を行っています。代表を私の父、専務を母親がつとめており、私は常務、現在35歳になります。
 大学は福祉介護分野ではありませんでしたが、父からの勧めもあり、全国チェーンの介護福祉関連の会社へ入社しました。とにかくがむしゃらに頑張り、この仕事に充実感ややりがいを感じるようになりました。
 やがて、父から帰って来てほしい雰囲気をヒシヒシと感じる事が多くなり退社して、府中市へ帰ってきました。そして、すぐにアドバンスを入社せず、地元医療法人へ入社し現場職を経験した後、2012年にアドバンスへ入社しました。
 アドバンスの経営理念は、「全従業員の物心両面の幸せを追求し地域社会に貢献する会社を目指します。私たちは、仕事を通じて世の中や社会の役に立ち、会社に関わるすべての人を、笑顔、幸せにしていきます。」です。社員の幸せをトップゴールに据えた理念です。

最初の仕事

 入社時に2拠点目の新規施設のオープンが決まっており、その立ち上げが最初の仕事になりました。1年後無事オープンし、私は施設長に就任しました。
 いきなり、部下が40数名いる責任ある立場です。休まず昼夜関係なくがむしゃらに働けば、施設長として認められると思っていました。今思と私がやってるからあなた達もやりなさいと思われていたかもしれません。
 社内面接もしましたが、結果として仕事ができないことへのレッテル貼りになり退職が続きました。結果、オープニングスタッフもほとんど残っていない状況となりました。
 社員が辞めても新たな採用はできていたので、あまり問題とは思わず、辞めるのは社員に原因があり、自分が悪いと思えていませんでした。

自分を変えてくれた社員

 それは、有料職業紹介事業で出会ったS君です。S君は職場を紹介しても長続きしません。何度紹介しても辞めてしまいました。今のままではダメだと熱く話すうちに大げんかになってしまいました。けんかから半年後、私の知りあいでもあったS君の彼女から電話がありました。 「また彼は会社を辞めてしまいました。内緒で相談に乗ってやってくれませんか?」との事でした。
 S君にすぐ電話するとバツの悪そうに「やっぱり僕ダメですね!」と話してくれました。話をする内に私はほっとけない気持ちになり、自社に入ってもらうことにしました。
 彼は今、我が社で大活躍をしています。今までは自分の利益の為に仕事をしていたのに相手の為に働ける介護の仕事が楽しいと言ってくれる程に成長し、我が社になくてはならない存在となりました。
 そして、彼は私を大きく変えてくれました。彼は身を以て「利他」(他者の利益を考えて行動する事が自分の喜びになるということ)を教えてくれたのです。
 私は今までは人のために仕事をしていると思いながらも、結局自分を中心に人のことを考えていました。単純に自分が関わったS君がよい変化する事がすごく嬉しい、自分一人で何かをなしえるよりも、関わった人が認められることがすごくうれしいと実感しました。これが人の幸せが自分の幸せと思えたきっかけです。
 経営理念が腹に落ちました。経営者にとって社員さんの幸せを実現することが私の心から喜びになると確信しました。

採用活動と人財育成

 採用活動の1つ目は就職困難者の採用推進です。引きこもりや発達障害、精神科にかかっている方などを積極的に採用しています。
 2つ目は子連れ出勤です。保育所に預かってもらえない子どもと社員のお母さんに一緒に出勤してもらい、みんなで面倒を見ています。子どもたちがお年寄をはじめ職員を元気にしてくれます。まるで職員のような役割も担ってくれています。
 人財育成の基本はフィロソフィーの共有です。直訳すると哲学という意味です、理念を達成するため、皆が幸せになるために大事にしていかないといけない考えを社長が32項目にまとめたものを冊子にしています。
 これに基づき社員さんも同じ考え方を共有するよう活用しています。全部署管理者、各部署単位など定期的にフィロソフィーの勉強会を開催。
 また毎日の朝礼で社員が発表する際にも活用しています。
 個人面談を丁寧に行っています。新人社員さんには入社1ヶ月間は毎日、その後も週1回面接を行っています。一般の社員さんも気になればその都度面接しています。
 また、体験発表会を行っています。社員さん自分が変われた体験、またこれからの夢を全社員、外部の方に体験発表していただくイベントです。
 単純に社員さんの生きざま・大変だった事・嬉しかった事を発表してくれて感動した事はもちろんですが、自己変革をする事の大切さ、今まで出来ていなかったけど考え方・行動が変わるきっかけを発表してくれた事がうれしかったです。
 また発表者だけではなく、聞いた社員さんも勇気をもらえ自分も変わるチャンスになると感じてます。

我が社の課題・私の夢

 単純に幸せを感じられる社員をもっと増やしていくことが基本です。そして「社員の幸せ=自分の幸せ」を幹部にも浸透させること。そのために私自身全力で考え行動していかないといけないと考えてます。
 また、給与水準をあげる事も課題です。業界給与また業界平均からしてもまだまだ給与水準が低いのが現状です。理念の「物心両面」の「物」、物質的豊かさを実現させていきたいです。
 そのためには、財務内容をよくする必要があります。10%程度の自己資本比率を三年に、30%のトータルウインは100%まで高めます。
 私の夢は、まず、社員が絶対幸せになれる会社にすること。次に、様々な人、多様な人が働ける会社にすること。
 また、他社がマネをしたい施設・サービス。そして、社員さんが誇り・喜びが持てる会社にしたいです。さらに、感動される新規事業を創造します。
 そして最後には、ホールディングス制です。簡単に言うと同じ経営者の仲間を社内でつくりだしたいです。そこには経営者としての責任も伴うかもしれません。それも含め経営者になりたい人が夢を叶えられる会社にしたいです。

同友会とともに

 今日の報告の中で、同友会で学び実勢したこと、そのことによる会社や自分自身の変化についてお話ししていません。それは、一昨年同友会青年部に入会したばかりで、積極的に関わっておらず、お話しすることができませんでした。
 けれども、今年度からは、会社をよくするために入っている同友会なら、自分にとって会社にとって意味のある活動をしようと、まず積極的に関わる、行動しようと決めました。そんな中、今回、経営フォーラムの発表の機会をいただきました。まさに今日の報告が同友会での学びと実践のスタートラインだと思っています。
 発表を受けた事で自分・自社の過去・現在・未来を整理、振り返る事が出来ました。そして当分科会の準備に当たって座長の橘高さんはじめ青年部のたくさんの方に関わって頂いてたくさんの本音のご意見を頂きました。この経験は私にとっての財産となりました。
 最後に改めて皆様へお伝えしたいと思います。「社員の幸せが自分の幸せと思えていますか?」