第5分科会 働く環境づくり 「おがくずだらけの工場からの脱却 ~経営指針と働く環境づくり~」
報告者 ㈲寿木工 代表取締役 住岡 和美 氏
会社概要
当社は大手の内装建具(内装ドア枠、引戸枠、間仕切枠、収納枠、造作材)を製作し、また、木製加工品を販売しています。
社員数は44名(うち正社員35名、人材派遣8名、実習生1名)です。男女比は男子40名、女子4名。平均年齢39.7才で平均勤続年数は9.1年になります。
今期、48期目を迎えます。経営理念は「世に必要とされる企業を目指し人に必要とされる人間を目指す」、今期のスローガンは「きわめる」です。
経営指針作成までの歩み
私は1993年、27歳の時に大阪の就職先を退職し、当社に入社しました。当時は家族経営で社員数八名でした。365日24時間、がむしゃらに仕事をこなしていました。
仕事はすこぶる順調に推移しており利益も出ていました。5000万円を金融機関から借り、工場を増設しました。
新工場を竣工した2000年の冬に私が管理をしていた仕事で大クレームを発生させてしまいました。製品の寸法を間違えたまま、2週間作り続けてしまったという内容でした。それを挽回すべく社員総出で年末年始夜を徹しての対応に当たりました。
なんとか急場を凌ぐことは出来ましたが、その後は自分自身、何をやっていたのだろうと自責の念を抱きつつ悶々とした時期を過ごしていました。
同友会へは1997年に入会し、例会などで経営指針発表などを聴いており、意識はしておりました。2003三年に私が所属する芸南地区会で初めて経営体験発表を行いました。そこで、参加者から「指針書はあるの」という問いかけで、やってみようかと意識しました。
その後、2004年に同友会から経営指針策定セミナーの案内が来て、「社長が変わらねば」との思いで参加し、翌年には経営指針発表会を開催しました。
社員と共に経営指針を作成
最初の作成から3年間は私1人で作っていたのですが、4年目からは課長以上の経営幹部と作るようになりました。1人の考え方だけでなく、幹部と力を合わせて、この会社をどうしていきたいかを検討するためです。
現在では、現場の班長を含め社内の多くの人と協力して作っています。
その結果、2017年と2018年の比較で有給消化率は1.6%ほど上昇し、平均残業時間は30%減りました。平均年収も0.8%増加できました。
また、2016六年には、第1次中期経営計画を作成し、発表出来るまでになりました。
当社は大手建材メーカーとの取引が主体なので、そのお客様に対して安定した製品提供義務があります。10年先もお客様から信頼される事業を継続する使命があると同時にお客様への安心を担保できる様にする必要があります。
経営計画を社員と一緒に考える社風が出来つつあると言う事は当社の将来について共有できていることだと思います。
同友会の仲間や先輩はめんどうくさい!
私自身が経営指針や中期経営計画そして、新卒採用や社員教育活動に取り組めたのは同友会の仲間がいたからだと思います。
新卒採用で高校生を採用したとき、同友会の新入社員研修へ参加させました。他社の社員に対して、同友会の経営者はこんなに熱く語り、教育するんだとびっくりしました。経営指針の発表会などでも先輩会員にゲストとして、来て頂き、「社長の思い」を代弁して社員に語って下さった方もおられます。まるで自分ごとのように関わってくれます。
このような仲間に恵まれ、経営指針や採用と社員教育を続けて来られたと思います。
当社の長く取り組んでいる試みのご紹介
経営指針書と並行して、当社では5つのことを長く取り組んでいます。
まずは5S活動。こちらは1998年から。経営方針の大きな柱の1つとして始めました。5Sとは「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」活動です。
2つ目が111面接。1年に1回、1対1で社員の自己申告書をもとに私と面接するものです。1997年から行っています。
3つ目が改善提案制度です。社内の改善点を社員に提案してもらう制度です。2001年からになります。
4つ目が経営計画発表会です。2004年スタートです。そのうち、経営計画検討会は12年目になります。
人事評価制度は2007二〇〇七年に導入しました。
5Sの取り組みの紹介
5Sの肝は、必要なものと不必要なものをはっきり分け、不必要なものを捨て、必要なものを誰でもすぐに取り出せるようにする活動です。
常に掃除をし、きれいに磨き上げ、「整理・整頓・清掃」の3Sを維持することで悪い習慣を良い習慣に変えます。
当社では3S改善活動として、担当者を各工場決めて改善シートの目標件数を決め進めています。1998年から改善済みの活動の累計は1万6612件にもなります。今期も1650件を目標に3S活動に取り組んでいきます。
5Sの目的は人づくり(躾)にあります。
5Sの活動を始めた当時は基準も目標もなく社内は人の問題を抱えており、まずは私自身の価値観を変えようという思いがあり始めました。
20年経過した現在は、当時と比べて安全・品質・生産性が大きく向上し、特に生産性は毎年、必ずレベルアップ出来る様になったのも「5S」活動により目標と現状の差異を問題として顕在化させることが出来るようになったことだと思います。
働く環境づくりへの社内対応についての課題
専門的な社員教育は自社で行うことを基本に5SやISO9001の取り組み、ものづくり塾・QC検定を仕事の一環としておりますが、現在、社内で課題が出ております。 働き方改革のアンケートとヒアリングを社内で行いました。すると、「労働時間が長く自分の時間が持てない」「上司へのあこがれが無い」「生産性は向上しているが、受注量の増加」「新商品の対応で生産性の向上が追い付かない」「働き甲斐はあるが、管理職へのあこがれはない」といったマイナスの意見が多く出ました。
そこで今年の8月に管理職とキャリアコンサルタントを挟んでの面談を行いました。 わかったことは、課長・班長の精神的ストレスが過多になっていることです。働き盛りでもある年齢と家庭の問題から板挟みになっていることが判明しました。
働き方改革を受け、月の総労働の壁や課題も出ています。
当社の課題としても、やりがいや働きがいの創出をどうするかが大きな課題となっています。
近年、中小企業にとって採用難が問題となっていますが、現在の社員の職場環境を一層向上させることも必要と考えております。
最後に
私の思いとして、社員が「好き」な会社にしたいという思いがあります。そして、社員や地域の子供に「寿木工で働きたい」と言われる会社にしたいです。
そのためには三位一体の経営が必要です。これは経営指針と共同求人と社員教育の3つを相互に連携させた活動です。
経営指針の浸透過程こそが社員教育だと思います。
先月、東京で開催された共同求人社員教育委員会の報告で加藤明彦・中同協副会長がお話された言葉を引用します。「今ある仕事は必ずなくなる。今いる社員も必ずいなくなる」と言われました。
この言葉を肝に銘じて会社を経営しなければなりません。