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2019.11.01

いざ激変する経済の大海原へ ~経営指針があれば、荒波も怖くない~ 広島安佐支部例会

報告者:㈱デイ・ディライト 代表取締役  藤原 克明 氏 (広島西支部)

●経営者が学ぶ姿勢に感銘

 私は大学の建築学部卒業後、住宅メーカーに就職しました。しかし、大学のゼミで習ったプログラミングがどうしてもやりたいと思い、3年後にソフトハウスに転職しました。さらに、当時の得意先と一緒にソフト開発の新会社を設立することになり、資本も出資して役員として参加することになりました。
 数年後、当時の経営陣に会社の方向性で噛みつき、退社することになりました。学生時代からお世話になっていたある先輩が同友会の会員だったことがご縁で、例会に参加したことがありました。経営者が真剣に学ぶ姿に感銘を受け、「経営者になりたい」とこの時決意しました。
 そして、2012年1月、ユーザーに「日々の生活に喜び」を与えられる会社になりたいと「デイ・ディライト」としていう社名で創業しました。

●目に見えない不安

 我が社は、設立当初からスマホに特化したアプリケーションの開発を行っています。
 当時、これに特化していたのは、広島では我が社のみ。これが現在まで存続できた大きな理由となります。  設立当初、8ヶ月かけて開発したアプリが予想よりも売れず、厳しい船出となりました。売上の柱を作るため、受託開発に方向転換したところ、売上が伸び、かつリピート顧客を得ることができました。以降、3期目は、あるアプリのヒットや東京からの受託業務も好調で、2名だった社員は7名に増えました。
 4期目は転機の年でした。受託業務の8割を占める会社からM&Aの提案がありました。悩んだ結果、断ることにしました。当然、ここからの仕事の発注はなくなります。そこで、1期目から開発中だったアプリに追加投資、時間や人をかなり投入しました。それでも売れず、大きな赤字を出したのです。
 開発中は社員一丸となって取り組んでいた感覚でした。しかし、受託開発で黒字に回復しても会社に活気がなく、目に見えない不安に襲われました。この時、支部の経営労働委員長を受けていて、藁にもすがる思いで参加したのが、「ひろしま経営指針塾」でした。これを境に、経営に本気で取り組もうと思いました。

 ●「怖い・辛い・しんどい」

 何のために経営しているのかを自分自身に問うた時、心に浮かんだのは、経営は「怖い・辛い・しんどい」ということでした。最初は見栄もあり、会社の規模拡大を優先してきました。結局、私自身の度量がついていけてなかったのです。それでも経営を続けたいのかと問いました。本当にやりたいことは何か。人の役に立ちたい、認めてもらいたい、期待に応えたい、ということでした。

●経営指針は「ツール」

 現在の我が社は「社員共有期」です。1年目に発表した時は、全く反応がありませんでした。2年目は、「理想ばかり書くな」と痛烈な批判を受けました。3年目は、ことあるごとに、理念やビジョンについて社員にしつこいくらいに語りました。そうしてやっと一部の社員が賛同し、付いてきてくれるようになりました。
 今までは、不満さえ言わなかった社員が、発言の機会が増え、その会話の中で、社内改善のヒントを得ることができるようになったのです。経営指針はツールなのだと気づきました。私はようやく今、この指針が自分の腹に落ちた感覚です。
 今回、理念を見つめ直し、社員から夢をヒヤリングして10年ビジョンを絵にしたポスターを作りました。形の見えない夢を社員みなで共有できる素晴らしいものになったと思っています。現在受けている仕事、今から受けようとする仕事が、このビジョンに沿っているかどうか、社内で共有できるのは大きいと感じています。  課題は尽きませんが、それでも輝かしい未来に向けて社員と歩んでいきたいと思います。