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2019.10.04

消費税問題と中小企業経営への影響~広島西支部オープン例会

報告者 ㈱第一経営相談所 相談役  沼田 道孝 氏 (中同協 税制プロジェクト委員長・埼玉同友会)

  参議院選間近の7月19日、消費税増税について学ぼうと広島西支部オープン例会が開催されました。参加者からは「そんな影響があるとは知らなかった。来てよかった」等の声が聞かれました。報告のポイントをご紹介します。

■納税者の自覚ありますか?

 みなさん、昨年の所得税はいくらでしたか?今回テーマの消費税、自社の決算では納税額はいくらでした?そしてあなたはどのくらい消費税を払っていますか?答えられる方はとても少ないと思います。納税者としての自覚は弱い方がほとんどですよね。でも、それでいいのでしょうか。
 10月に増税される見込みの消費税は広く、薄く公平に負担する税と言われますが、本当にそうなのか、給与モデルを使って調べてみました。
 税金の金額では年収の多い人のほうが少ない人よりたくさん消費税を支払っています。しかし年収に占める負担割合では、年収の低い人ほど負担割合が多いのです。
 例えば、年収200万円以下の人は消費税8%だと負担割合は7.2%。年収900~1000万円の人の負担割合は2.8%です。消費税が10%になると、年収に占める支払い消費税の割合は前者が8.9%、後者が3.4%ですから、年収の低い人への増税後の負担感は相当なものだということがわかります。

■消費税増税の影響その➀  可処分所得が減り消費低迷 企業の負担も1.25倍

 先ほどお話したとおり、年収の低い人ほど消費税の負担割合が増えます。
 政府は経済対策として、車と住宅購入時の減税を打ち出しています。前回の増税では駆け込み需要がありました。今回はあるという話をなかなか聞きません。
 そもそも8%に増税後、消費支出が大きく減少し、その後も前年を超える消費ができていません。消費が低迷しているところへの増税なのです。
 ポイント還元制度も9カ月間のみで、決済業者との契約などの煩雑さから小規模小売店・飲食店ではあえて参加しない店もあるようです。施策が消費の先食いになるとオリンピック後の落ち込みが激しくなることも予想されます。
 また、消費税を納める企業にとってはただの2%増税ではなく、納税額で1.25倍の消費税を納めることになります。直前期の消費税の納税額によって納付回数が変わりますから、納税のための資金を計画的に準備しておかないとキャッシュフローが厳しくなります。

■影響その➁  軽減税率による負担増

 増税とあわせて導入される軽減税率制度も混乱が起こりそうです。
 コンビニで買ったおにぎりが持ち帰ると8%、イートインだと外食扱いの10%の消費税になります。
 これを店側はパートやバイトの人にも徹底する社員教育をしなければなりません。
 レジやソフトを入れ替え、社員教育をして…と費用負担は相当なものです。
 この軽減税率による税収減が1兆890億円と言われ、後で説明するインボイス制度導入後の増税分もこの穴埋めに回されます。それでも4000億円財源が不足する計算ですが、これに対して政府は何も示していません。

■影響その➂  インボイス制度の導入

 最も深刻な影響があると考えるのが、2023年10月から導入される適格請求書等保存方式(インボイス制度)。
 まず、2021年から全ての課税事業者は新たに適格請求書発行事業者として届け出をする必要があります。届け出ると発行される登録番号は、23年10月以降に発行する請求書に記載し請求書を交付する義務があります。登録されていない免税業者の請求書では、仕入れ税額控除ができません。つまり仕事を発注した企業では、免税業者の分の消費税を肩代わりして負担するか、折半するか、消費税分割り引いてもらうか交渉することが考えられます。
 もし売上1000万円以下の職人さんやフリーランスの人が「課税事業者として登録するか割り引いて」と言われたら、生活していけるでしょうか?登録事業者になっても税負担と煩雑な事務量の増加に対応していけるでしょうか?この制度で零細企業が排除されかねません。創業したての小さな企業にも逆風です。
 もう少し時間があるので、特にインボイス制度について署名を集めるなど声をあげてもいいのではないかと思います。皆さんもぜひ消費増税の影響を考えてみてください。