広島県の中小企業施策への提案(第3回)
広島県の中小企業施策への提案(第3回)
平成29年10月に施行された「広島県中小企業・小規模企業振興条例」(以下「条例」)は、中小企業・小規模企業を「地域経済を支えるために欠くことのできない存在」として位置付け、多くの関係者が連携及び協力し、その「持続及び成長に向けた取組を支援していく」必要性を訴えています。私たちは、中小企業の自主性に依拠する「条例」の理念の共有と利活用に大きな期待を寄せています。
弊会が会員企業を対象に行った直近の「アンケート」調査(注①)では、現在の経営状況DIは前年同時期と比べ4ポイント下がり(+21)、一年後の経営見通しでは、前年に比べ15ポイント下がると(+14)見込んでいます。その理由として、外部環境問題としては、消費税増税など消費不況やオリンピック特需の減退、米中間の貿易紛争などが影響すると考え、経営課題としては、従業員の不足(44%)、人件費の増大(31%)、同業者間の価格競争の激化(27%)などをあげています。特に、人材不足の問題は中小企業にとってここ数年来の大きな課題となっており、これは社会的問題でもあり、中長期で考える必要があると思います。
そこで、若い人たちが広島県内で就業し、暮らせる環境づくりを柱に、いくつか提案させていただきますので、ご検討をお願いいたします。
記
1)今年度から、7月20日が「中小企業の日」に制定されました。中小企業・小規模事業者の存在意義や魅力等に関する正しい理解を広く醸成する機会を国民運動として提供していくことを目的としています。その趣旨に沿って、県民への広報や子どもたちへの教育など、特段の取り組みを行っていただくよう提案します。
2)若者が生き生きと夢を持って働く環境をつくることが大切です。学校教育で広島県のビジョンや地域の将来構想など、広島の魅力を子どもたちに伝え、広島で学び、育ち、働く意識付けを進めていただくよう提案します。
3)県内就業者の70%が中小企業で働いていると言われています。健全な労働観や地域社会観を育成する機会の一つとして、中小企業での職場体験・インターンシップを小学校・中学校・高等学校・大学の授業の一環に組み込むよう、いっそう働きかけていただくよう提案します。
また、一部の企業ではインターンシップの参加で一次試験免除としているものや「ワンデーインターンシップ」のように会社見学や企業説明会の要素が強くなっているものもあります。本来のインターシップの精神に則り、学生が働く意味や生き方を学ぶ機会となるような教育理念の下で行うよう指導していただくよう提案します。
4)弊会は障害者問題委員会で、障害のある方々の中小企業への就労等に微力ながら取り組んでおりますが、中小企業での障害者の雇用は高いと推察されます。そこで、中小企業の就労実態を正確につかんでいただくために、法定雇用率適用外の45人以下の中小企業における、障害者の雇用の状況を調査し、公表していただくよう提案します。
5)一昨年、弊会が提案した「中小企業等奨学金返済支援制度導入補助金」について、会員企業に広げていくには時間がかかるものとして取り組んでいますが、制度をつくった(あるいは検討している)企業から要望が出ています。それは、支給年数制限を拡大し、あるいは支援金にかかる税や社会保険料の免除などです。国に働きかけていただくよう、提案します。
6)事業承継を円滑にするために平成30年度に改正された事業承継税制は、中小企業・小規模企業事業者にとって、使いやすいものに近づきました。しかし、それはあくまで「納税猶予」であり、事業承継者に猶予不適当となった場合のリスクが大きく、一定の期間継続することを条件に、「納税免除」制度の導入を国に働きかけていただくことを提案します。ちなみに、すでに農地の相続税猶予制度には、その土地で20年間農業を継続した場合は「免除される」制度があります。
7)社員が育児をしながら働き続けられる環境(職住接近した保育所の充実など)づくりは、会員企業から強い要望が出ています。国にさらに働きかけ、県の裁量でできることはすすめていただくよう提案します。特に、保育所が整っていないことで望まぬ育休延長を余儀なくされるのは、働く意思を持った社員の意欲がそがれるだけでなく、復職の体制を整えた企業にとっても条件整備にかけたコスト等、大きな損失となるからです。
8)県は、多くの中小企業施策を展開されていますが、何を、どのように、どんな時に活用できるのか分からないという声を聞きます。何でも相談できる窓口(担当者)を身近な場所においていただくよう提案します。
9)県が発注する建築・土木工事で随意契約としているのは250万円以下の小規模工事ですが、500万円程度への引き上げを提案します。趣旨は、①入札参加のために必要なたくさんの見積書作成を減らし、②地域の中小企業に随意発注して地域の仕事を増やし、③ひいては地域の中小企業を育成し、災害復旧に対応しやすい地域づくりをすすめることにつながるからです。
10)「アンケート」によれば、会員企業のSDGsへの取り組みは(意識して取り組んでいる企業は2.7%)まだ弱いといえます。しかし、弊会の掲げる人を生かす経営の実践とSDGsの取り組みは共有できるものが多く、さらに環境・エネルギー分野のSDGsの周知と普及をはかることは、地消地産にも新しい仕事づくり(※注②)にもつながります。周知と普及の努力をさらに強めていただくよう提案します。
11)「アンケート」によれば、BCP(事業継続計画)を策定している会員企業は策定中を含め一割(8.4%)に届いていません。本来のBCPは経営理念の具現化を目指すものであり、その重要性が理解されていないものと考えられます。引き続き、啓もう活動への支援を提案します。
12)「条例」が県内の市・町にそれぞれで制定され、県・市町が一体となって中小企業・小規模企業の振興がはかれるよう、「条例」の制定を市・町に働きかけていただくよう提案します。
※注① 「アンケート」
弊会が、7/1~23に行った「会員企業の経営課題と政策要望のアンケート」調査で、710人の会員から回答がありました。
※注②「バイオマスエネルギー利用はSDGsの取り組み」
廿日市市は、産業振興条例を制定し、あわせて産業振興ビジョンを作成しています。その戦略の中で市内の木材利用を推進する活動やバイオマスエネルギーの利用に取り組むと謳っています。
地域のエネルギーを地域で使うことはSDGsの12番「持続可能な生産消費形態を確保する」に該当します。廿日市市のある温泉施設は、重油ボイラーから木材チップのボイラーに買い換えることになりました。年間の燃料代が域外に出るのではなく、地元に還元されることになるのです。同友会の会員有志で視察に行ったオーストリアのボイラーメーカーの大型ボイラーが、行政のバックアップもあり、採用されることになり、今年度には完成予定です。
以上