経営環境は厳しくなる!~経営課題アンケートに710人から回答が寄せられる
政策委員会(宮崎基委員長)は、7月1日から23日にかけて、今年度第1回のアンケート調査を実施しました。回答いただいた710名の皆さん、有難うございました。概要を紹介します。
(※DI=傾向をみるための数値。DIが100に近づくほど良い(上昇)、-100に近づくほど悪い(下落)ことを意味する)
1年後の見通し 製造業DIは水面下(-6)に
「現在の経営状況」は、DI値21を示し、前年同時期より4ポイント下がりました。しかし、同友会の全国調査の業況判断DIは-2を示しており、広島同友会の会員の経営状況判断は全国を上回りました。 業種別にみる「現在の経営状況」は、表①の通りです。建設業のDIは37で、製造業(15)や卸・小売業(1)と比べ、飛びぬけて高くなっています。
「一年後の経営見通し」は、前年(30)に比べ16ポイント下がりました。製造業と卸・小売業のDIがマイナスの落ち込み、特に製造業は-6を示しました。「中国景気の鈍化、国内需要の減少により、自動車部品の注文数が減っている」とのコメントにもあるように、米中間の貿易問題がいっそう先鋭化していることや中国の景気減速、自動車の不振などが背景にあると思われます。
サービス業(26)や建設業(25)の「一年後の経営見通し」のDIが高いのは、人手不足問題や災害特需、オリンピック特需などが理由だと思われます。しかし、10月に予定されている消費増税後の問題や金融機関の不動産融資のハードルが上がっていること、さらには首都圏ではマンションの成約率が下がり、公共工事も低価格で落札し始めているとの指摘もあり、今後については厳しくなると見ておきましょう。
働き方改革は業界全体で
経営上の問題点では「従業員の不足」(44%)がトップでした。求人難、人材難に寄せられるコメントは「職人希望者がいない」、「募集するも応募すらない」など、悲鳴に近い声が多数寄せられました。
人材不足の中で「働き方改革」という課題もありますが、建設業の会員からは「週40時間や有給休暇の取得等の労働条件の改善は、土曜・日曜も現場が動く建設業では困難である」との声があり、一社だけで解決できるのは難しく、業界全体で取り組まないと働き方改革は進まないとの指摘のように受け止めました。
「税・社会保険の負担増」を経営上の問題点とした会員は110社あり、10月の消費増税を前に、じわり広がっています。
また、経営課題のトップは「付加価値の増大」(57%)が六年連続トップにあげられました。「モノ売りからコト売りへの業態転換」が課題だとした事務機器販売の会員のコメントもありました。
事業承継税制の活用
事業承継問題は私たちの大きな問題であるともいえます。昨年、政府は事業承継にかかる株式の贈与税・相続税について、納税猶予となる特例をつくり、今年度は個人事業にもその特例を広げました。使いやすいものに近づいた税制で、その活用について聞きました。表②の通り、「知っており活用を検討している」は11%にとどまり、「知らないので勉強したい」が40%でした。
ところで、「納税猶予」では事業承継者に猶予不適当になった場合のリスクが大きく、一定の期間継続することを条件に、「納税免除」制度の導入を、同友会では国に働きかけています。すでに、農地の相続税猶予制度には、その土地で20年間農業を継続した場合は「免除」される制度があるようです。
BCPの策定やSDGsへの取り組み
BCP(事業継続計画)について、策定しているのは策定中と合わせても約8%の会員です。SDGs(国連サミットで採択された持続可能な17の開発目標)について経営指針に取り入れている会員は3%弱でした。
いずれも国が進めようとしているものですが、特にSDGsは同友会のいう「人を生かす経営」や循環型経済に関連しているものもあります。理念型の経営がさらに求められていると積極的に受け止め、時間をかけながら進めていきたいものです。