活動レポート
  • ホーム
  • >活動
  • >「中小企業を取り巻く情勢と経営課題」~第47回定時総会  第2分科会
2019.06.28

「中小企業を取り巻く情勢と経営課題」~第47回定時総会  第2分科会

【問題提起者】広島信用金庫 専務理事  川上 武 氏

■令和を迎え、新しい時代へ

 日本資本(合本)主義の父とされる渋沢栄一は二宮尊徳の思想を受け継いだ財界人の第一人者です。  「経済なき道徳は寝言であり、道徳なき経済は罪悪である」。今、この思想に立ち返ろうとするムーブメントが起きつつあります。
 道徳と経済は車の両輪で、中小企業の発展と、信用金庫の存続条件と言えます。

■戦後最大の景気拡大?

 日本経済は、いざなぎ景気(昭和40年11月から昭和45年7月。実質11.5%)では成長を謳歌しました。  戦後最長の現在の景気拡大は、実質1.2%の成長です。企業収益は過去最高ですが、一部の大企業の業績といえるかもしれません。足元では海外経済の不確実性の高まりが気になります。
 いざなぎ景気とは違い、実感なき景気拡大と言えそうです。

■進む少子高齢化・人口減少

 21世紀は、社会構造として、高齢者と生産年齢人口の比率が、ほぼ1対1になりました。若い人が減り、その次の世代はさらに減ることが分かっています。その先に何が起こるか。地方の消滅です。
 人口は東京への一極集中が進み、地方でも同じことが起きています。大空き家時代と廃業の加速度的増加が予測されています。
 企業は生産性向上が求められますが、人手不足・採用難の解消という課題とセットで考える必要があります。
 何でもスマホで事前に検索する時代です。採用手段が急激に変わっています。最近の採用専用のホームページの特徴は、各企業は経営理念を前面に押し出していることです。
 課題解決への改善策を考える過程は、①独学でやる、②セミナー(塾)に参加する、③専門家(家庭教師)を雇う、となり、受験勉強に似ています。専門家として、ひろしま産業振興機構・よろず支援拠点・広島市産業振興センターがあります。これらの活用は課題解決への近道です。同友会には企業変革支援プログラムがあります。

■事業承継、待ったなし

 取引先への調査で、67%が後継者なし。廃業する企業の53%が黒字ということが分かりました。
 中小企業の経営者年齢分布をみると、20年間で経営者の年齢の山は47歳から66歳へ移動しました。つまり、承継が進んでいません。
 タナベ経営創業者の田邉氏の言葉で「業績良くて50点、承継良くて100点」があります。承継は、親族、従業員、第三者、どれを選択するにも経営力強化が不可欠です。
 地域社会にとって企業が無くなることは大きな損失です。当金庫は早い段階の事業承継計画策定を提言しています。

■地域金融機関としての当金庫課題

 平成28年、日銀がマイナス金利政策を導入しました。信用コストで決まる金利に差がつけられなくなりました。
 平成29年度は、全国の地方銀行106行の内、54行が本業赤字でした。日銀は10年後には、地銀の約6割が最終赤字と試算しています。
 当金庫が生き残るポイントは、銀行との「原点」の違いです。信用金庫は「相互扶助」の精神のもとに成り立つ非営利法人です。最終目的は利益最大化ではありません。
 信用金庫の特徴は、地域限定・中小企業専門性・協同組織性です。
 この上で、当金庫の経営理念は、地域と共に豊かな未来を創る(存在意義)、健全経営と特性発揮で信頼に応える(経営姿勢)、ヒューマンで活力ある信用金庫を実現する(行動規範)です。地域社会が持続的に成り立っていくための、人づくり、事業づくり、モノづくりといったことが経営の目的であり、地域と運命共同体という思いです。
 同友会とは平成27年に、当金庫の創立70周年を迎えるにあたり「広島を元気にする協定」を締結しました。地域活性化に取り組む思いが同じだからです。
 「信用金庫は市民が自分たちの力で獲得した、日本で唯一の金融機関なんです」という森静朗日本大学教授の言葉があります。また、つい先日、日経オピニオン(4月25日付)でも信用金庫は中間法人に近い存在。利益追求ではなく「理念経営」する組織だという内容の記事がありました。
 時代の求めに応えねばという思いです。