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2019.05.29

財政危機の本当の処方箋を考える ~消費税引き上げと日本経済~

講師 京都大学大学院工学研究科教授  藤井 聡 氏

 県政策委員会(宮﨑基委員長)は4月19日、財政問題と消費増税の緊急学習会を行いました。講師は、昨年12月まで5年間、安倍政権の内閣官房参与に就いていた京都大学の藤井氏です。その要点をご紹介します。

 「消費税10%増税は避けられない」という「空気」が世の中に流れています。しかしその「空気」は本当に正しいのか、講演を通して考える機会になればと思います。

■消費増税は経済を破壊する

 経済成長とは、GDP(国内で得られた所得の合計値)が拡大していくことを言います。そして所得とは、人がお金を使う(消費する)ことで得られます。
 日本のGDPは約500兆円。その内訳は、政府25%、消費60%、民間投資15%となり、日本経済がほぼ消費で構成されていることがわかります。つまり経済成長とは、消費が増えることを言います。
 また、15%の民間投資も消費の増加によっておこるものです。消費が最も重要なのです。
 1994年から今日までの25年間の消費の推移を見てみると、240兆円から300兆円になっています。その中で、大きく消費が低迷したことが4回あります。リーマンショック、東日本大震災、そして二度の消費増税です。消費増税はリーマンショック級に経済成長を妨げるのです。
 他にも、経済成長率の伸び率、賃金動向、家計の平均消費、中小企業DI値などがいずれも消費増税を契機として悪化しています。  

■戦後最長の好景気の正体

 いずれの数字も悪くなっている中、「戦後最長の好景気」と言われているのは、ひとえに世界経済が好調で、大企業が外需を獲得しているからです。事実、2014年の増税後から輸出額は15兆円増えています。  輸出による恩恵はごく一部、対して消費増税による負担は国民全員にのしかかります。日本企業のほとんどを占める中小企業とそこで働く人々にとっては、内需は冷え込んでいるにも関わらず消費増税で生活は苦しくなっているのです。  

■国も悪化させる消費増税

 消費増税は経済が悪くなるだけでは終わりません。次は政府が悪くなります。政府の税収は所得税・法人税・消費税などです。消費増税で少し税収が増えても、増税により賃金が下がり、企業が潰れれば、所得税と法人税が減るのです。  
 GDPは1997年の増税から伸びなくなりました。その時から現在までに、1人当たり130万円の所得を失いました。日本は増税することで消費が減り、消費が減れば所得が減り、所得が減れば消費が減るというデフレの様相を呈しています。
 それと同時に政府も総税収が減少していきました。財政の基盤が破壊されたのです。結果、増税後に赤字国債を大量に発行。2018年度の発行額は27兆円になりました。
 そこに今後は世界経済も冷え込むことが予想されます。そんな中で10%増税を行えばどうなるでしょうか。  

■増税は即刻凍結を

 取るべき手段は、法人税の増税です。消費税は八九年から合計282兆円を国民から吸い上げています。その期間に法人税は255兆円減税されています。法人税が低すぎて、消費税が高い状況になっているのです。日本は直間比率が世界でも大きい国です。これを是正することが必要になります。
 一番にやるべきは消費減税、法人増税ですが、現状では難しいので、消費増税の凍結、そしてインフラの整備、研究開発費への投資、賃金を上げた企業の賃金分を政府が肩代わりするなどの財政政策を提唱します。  この現状を打開するために、自分たちに何ができるのか、皆がそれぞれ考えていきましょう。