経営環境アンケート調査 経営状況の改善傾向は、11年ぶりに下がる
政策委員会(宮崎基委員長)は、1月10日から31日にかけて、今年度第2回のアンケート調査を実施しました。回答いただいた633名の皆さん、有難うございました。概要を紹介します。
(※DI=傾向をみるための数値。DIが100に近づくほど良い(上昇)、△100に近づくほど悪い(下落)ことを意味する)
1年後の見通しは、製造業で大きく下がる
「現在の経営状況」は、リーマンショック後の09年にDI値△53ポイントを示したのを底に、改善を続けてきましたが、半年前の前回調査より6ポイント下がりました。下がったのは11年ぶりのことです。
「1年後の経営見通し」は現在の経営状況に比べ、製造業が14ポイント、建設業が11ポイント下がりました(表①)。人手不足問題に加え、米中問題の行方や消費税増税後の問題など、厳しい経営見通しを持っていることが見て取れます。
表① 業種別の経営状況と1年後の見通し
製造 | 建設 | 卸・小売 | サービス | その他 | ||||||
選択肢 |
現在 | 1年後 | 現在 | 1年後 | 現在 | 1年後 | 現在 | 1年後 | 現在 | 1年後 |
1.とても良い | 8.0% | 3.7% | 7.9% | 6.5% | 2.7% | 1.8% | 2.4% | 7.7% | 2.0% | 2.0% |
2.少し良い | 34.8% | 27.2% | 49.2% | 25.0% | 28.2% | 23.6% | 36.1% | 33.8% | 37.3% | 32.0% |
3.どちらとも言えない | 29.7% | 46.3% | 27.8% | 56.5% | 35.5% | 53.6% | 40.9% | 49.3% | 45.1% | 50.0% |
4.少し悪い | 21.7% | 19.1% | 11.9% | 12.1% | 26.4% | 20.0% | 18.8% | 8.7% | 13.7% | 16.0% |
5.かなり悪い | 5.8% | 3.7% | 3.2% | 0.0% | 7.3% | 0.9% | 1.9% | 0.5% | 2.0% | 0.0% |
合計 DI値 | 22.1 | 8.1 | 30.8 | 19.4 | 7.5 | 4.5 | 26.5 | 32.3 | 17.7 | 18 |
経営上の問題点では「従業員の不足」(45%)が五年連続トップにあげられました。コメントに「仕事の引き合いはあっても、人がいないので受けられない。『働き方改革』にも取り組んでいるので、人材の確保・定着・育成が最大の課題」とあるように、人の問題が最大の経営課題になっています。
消費税増税を3割が懸念
今年10月に2%アップが予定されている消費税。「影響はない」と答えた企業が22%あったものの、「購買意欲減少」(32%)、「売り上げの減少」(31%)、「利益の減少」(27%)と続き、少なくとも3分の1近くが経営悪化を懸念しています。
また、増税を契機に対応・検討していることとして、顧客との関係強化など(30%)価格転嫁対策をあげ、会計システムなどの更新(25%)、生産性の向上(22%)、製品の高付加価値化(20%)をあげています。消費税は最終的には消費者が負担するので事業活動には影響しないと言われていますが、現実には様々な工夫を凝らさないと乗り切れないと経営者は見ています。 「軽減税率だけはやめてほしい」、「未だに人手不足にかかわらず低賃金の地方の中小企業にとって、消費増税は死活問題化するのではないか」、「建設業は、元請から税込み価格を求められている。できないよう取り組んでほしい」などのコメントが寄せられました。
BCP(事業継続計画)の策定はこれからの課題
昨年、広島県を襲った豪雨災害の影響もあり、リスク(危機)対策への関心が高まっています。リスクを想定した経営について、2割弱が行っていると答え、4割強が検討中としています。
表②リスク発生時に重視している対応
選択肢 | 回答率 |
1.従業員や店舗等にいる顧客の安全を守る | 68% |
2.供給責任を果たし、顧客からの信用を守る | 44% |
3.自社・グループ内の経営を維持する | 35% |
4.取引先との関係性を維持する | 34% |
5.取引先等を支援する | 22% |
6.従業員の雇用を守る | 57% |
7.地域経済の活力を守る | 16% |
8.地域の復旧・復興に貢献する | 32% |
9.その他 | 6% |
しかし、BCPとなると策定済みと答えたのは3%で、策定中(6%)もふくめ一割に届かず、これからの課題と言えます。 また、重視しているリスク対応(表②)は、社員や顧客の安全を守る(68%)、従業員の雇用を守る(57%)、顧客の信用を守る(44%)となりました。
経営者保証に関するガイドラインの活用を 融資の際、一定の条件(法人と個人の分離など)を満たせば、金融機関は経営保証を求めないというガイドラインが公表されて五年が経ちました。活用している会員はまだ少なく、免除してもらったと答えたのは10%強です。
金融庁によれば、17年度、民間金融機関の新規融資に占める経営者保証に依存しない割合は16%、政府系金融機関では34%です。
個人保証の問題は、経営者本人だけにとどまらず家族にかかわる可能性があります。金融機関に相談し、どうすれば個人保証を外すことができるのか、検討したいものです。